小雨のなか、富士山超遠望の山・日山へ

         1999年5月3日   家族4人




日山の山頂



 本当に久しぶりで、故郷の山に登った。富士山が遠望できる、日本で 一番北に位置する山、日山。

 連休も2日までは快晴の天気だっ たのに、その2日夕まで仕事が入ったため、夜9時過ぎに東京発。 日中の数十キロの大渋滞がうそのようなスカスカの東北道を走って、郷 里の福島市に3日午前1時すぎに帰り、朝、家族4人と母の5人で日山 の登山口をめざした。

 福島市から国道114号を走り、川俣町で349号へ乗り換えて、岩 代町で国道(県道?)459号に入った。町立の旭中学校を左手に 見送るとすぐに、右手の橋のたもとに「日山キャンプ場入り口」の道標 が立っている。右折して口太川を渡り、舗装された道を上がる。途中、 百目木からの道を合わせて、さらに上がると、標高650 メートル付近にキャンプ場の施設があらわれ、「日山 富士山が見える 日本でもっとも北にある山」という趣旨の道標が立てられていた。

 ここからは牧場の中の舗装された車道をすすんで、トイレのある駐車 場を右手に見送り、畜産農家(農業団地?)の大きな施設があるところ で、登山口の標識にいきあたった。標高715メートル あたり。路側に車8〜9台が入る駐車場があり、すでに満杯。ここ まで、福島市内から75分。身づくろいをして、午前10時53分に登 り始めた。母は足を痛めているので、周辺で散策。

 「頂上まで1・4キロ」という案内が登山口にある。ずいぶ ん、近い。牧場の中の切り分け道をぐんぐんと高度を上げていく。 ギボウシ、ナルコユリが芽吹いて葉を広げだしている。牧場を抜けき るあたり(標高810メートル)では、木の芽がまだほころびだしたと ころで、樹林の中でも見とおしがきく。頂上から南へ伸びてぐるり と西へ湾曲する大きな尾根が登山道の右手に眺められ、その西尾根の北 面に大きな木が密生している。登山道からの距離は700〜800 メートルくらい。遠目に見ると、どうもその枝ぶりが、ブナの、しかも 古くて大きな木のよう。それが尾根の北側の斜面を埋めていますから、 なかなかの規模だ。阿武隈山地では何ヶ所かブナ林の存在が紹介され てきたが、日山にブナの大木の林があるのを知り、びっくりし、う れしくなった。

 900メートルまで上がると、登山道の東側にも、白い幹の樹木がナ ラの木のなかに混じり出す。やはりブナの樹林だが、向こうの 西尾根のものに比べると規模が小さく、若い木が大半だ。こちらは尾 根上で季節風を受ける場所なので、ブナに限らず、樹木は大きく育てな い様子。5月初めだというのに、木の芽はまだ堅いつぼみの状態で、さ すが東北の1000メートル級の山だ。イワウチワの光沢のある葉が あり、トリアシショウマも小さな陽だまりを選んで顔を出している。 あと半月もすれば、淡い緑につつまれた、色彩豊かな尾根筋になるので はないだろうか。

 先行した子どもたちが、歓声を上げている。私と妻もピッチを上げ て、ひょっこりと小広い草地に飛び出した。日山の山頂だ。11 時26分、なんと、33分で登ってきてしまった。

 5、6パーティーが、草地の思い思いの場所でお弁当を広げている。 山頂にはうわさの通り、3つの社と鳥居がある。一角に草地 よりも一段高い場所があり、社の一つはここに建てられている。その 高みが、1057メートルのピークだった。草地には、3階建てくらい の高さの展望やぐら(木造)が組んである。階段をあがってこの展 望やぐらに立つと、パノラマ展望図と写真 が掲示されていた。富士山が見えるはずの位置は、移ヶ岳の真上に指示 してあった。無料で操作することのできる大型の固定双眼鏡も、やぐら に据え付けてある。

 途中、雨がぱらつくような天気だったから、展望はまず無理と思って きたものの、至近の安達太良、吾妻連峰がもやの彼方だったのは、やは り残念だ。壁に貼られたパノラマ写真によると、どちらも堂々たる 山並み。阿武隈山地の主峰の大滝根山、そして蔵王、那須連山も撮 影されていて、日山が展望の山としても一級クラスであることを知るこ とができた。



コゴミがいっぱい生え出していた

 下山は、同じコースで。子どもたちは、走るように下っていった。若 芽の芽吹きなどにカメラを向けながら、ゆっくり歩いて、26分 で登山口に下り立った。途中、小さな子どもをまじえたハイカー に、何組もすれ違った。日山からの展望が、だんだんと知れわたっ てきているのだろうか。そういう自分も、つい2ヶ月ほど前に、この山 のことをFYAMAPで知ったばかりだが…・。阿武隈山地の山の てっぺんに立ったのも、霊山に続いて、この山がまだ2つめだった。

 帰路は、キャンプ場の下で、コゴミやタラの芽を見つけた。大き な延齢草で、花が淡い桃色で、たいへん美しいタイプのものも見つか り、撮影は大忙し。あんな印象的な姿、色彩のものに出会ったの は初めてだった。ヤブの中に数株しかなかったが、群落を広げて ほしいものだ。

 車道の登り口周辺の農家や段段畑、裏山のたたずまいは、小川の音、 鳥の鳴き声、耕運機を動かす発動機の音などもあいまって、心が和むも のだった。山里そのものの風景といったらいいだろうか。芽吹きの色 の山を背に、大きな鯉のぼりがたなびき、畑で遊ぶ子どもたちも、元気 いっぱいだった。川俣町からずっとそういうのどかな景色が続く。 途中の道々も、なかなか楽しめる日山だった。





山の便り、大地の恵み (野原森夫)
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