会津駒ヶ岳――残雪の頂から会越の山々を望む

2004年5月2日〜3日
3人パーティー





会津駒の山頂部(5月2日)

 福島県の出身の私ですが、会津駒ヶ岳(会津駒ケ岳)は、まだ登っていませんで した。吾妻連峰や、尾瀬の山などからこの山を眺めたびに、早い機会に登りたいと 思ってきました。
 12月末、福島市の土湯峠から夕映えにシルエットで浮かぶ会津駒を眺めたこと がありました。どっしりと大きな山体でした。
 去年(2003年)のGWは、燧ヶ岳から会津駒を眺めました。穏やかで大きな山体 を膨大な雪で覆い、これまた貫禄のある姿でした。



前の年(2003年の同じ日、5月2日)に、燧ヶ岳から見た会津駒

 会津駒に登るには、この郷里の名山に敬意を表して、できれば雪がたっぷりとあ る季節に、テントに泊まって稜線の一夜を過ごしたいと思ってきました。長男(大学3 年)にボッカ役を頼み、3人パーティーでの登山となりました。

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5月2日

都内・西多摩の自宅(2時57分)車→青梅インターから圏央道、関越道経由、途中 2時間仮眠・朝食→小出インター(6時37分)→六十里越え・只見町経由→桧枝 岐・登山口(9時45分着)
登山口(10時07分発)→林道・近道経由、途中食事→登山道基点の階段(10時 49分)→山頂まで4・1キロ道標(11時19分、残雪が増える)→アイゼン装着 →駒ノ小屋(14時07分、同11分発)→会津駒山頂(11時22分着、同37分 発)→駒ノ小屋(14時50分)→大津岐峠方面へ稜線をすすみ下降して天場へ (15時25分)幕営

5月3日

幕営地(5時40分発)→駒ノ小屋→会津駒山頂(6時25分着、同45分発)→幕営 地(7時15分着、撤収、7時45分発)→駒ノ小屋(8時15分)→桧枝岐・登山 口(10時24分着)
登山口(10時40分発)車→駒の湯で汗を流し、途中、只見、入広瀬村などで山菜撮 影。湯ノ谷村の道の駅でも時間つぶし→小出インター→関越道渋滞、圏央道経由→西多 摩・自宅(19時45分着)

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5月2日

 桧枝岐村の会津駒登山口は、国道の左手にスキー場を見て、すぐ先の橋のたもとにあります。
 「登山口」の道標のそばには登山届の提出ポストがあり、車は7台ほどしか止められません。林 道の日陰には50センチほどの残雪があり、この時期はチェーンで通行止め。
 車は、100メートルほど国道をもどったテニスコートの前の、登山者用の駐車場に 停めました。
 10時07分、林道のチェーンをまたいで出発しました。
 300メートルほど、林道を下ノ沢沿いに進みます。雪解けの増水で轟々と激しく沢 水が流れています。今年のように雪解けが早い場合は、この沢を使ってスキーで下降するのは、難 しそう。かなり上部で尾根に逃れなければ、進退が極まります。

 林道右手の「会津駒へ近道」の標識を目印に踏み跡へ入り、ひと登りで、迂回してきた林道にまた出合い ました。ここから林道の大きなカーブを回り込んで、登山道の基点となる階段に出ました。
 この一帯も、夏には20台ほど車が停められます。
 階段からの登山道は、尾根をほぼ忠実にたどる急登になりました。
 このあたり、タラの芽が時期を迎え、ちょうど食べごろ。トチの木の芽も開 きだしたところです。
 尾根の両側の谷は残雪が斜面を埋め始めましたが、登る尾根は日当たりがよいため、すでに地面が出てい て、しばらく夏道をたどります。この傾斜だと、ラッセルの時期はつらいでしょう。
 今日はすばらしい晴天です。汗をかかないように、薄着になったのですが、それでも暑いと、長 男はTシャツ姿になりました。

 唐松や雑木の林に、ブナが混じりだしたあたりが、標高1200メートル。残雪にときどき のる道が、ついに雪に覆われ始めました。さらに登って、急な雪面をキックステップで越えてか ら、もう土の上にのることはないと判断して、アイゼンを装着しました。



 右手の谷の対岸に、会津駒から落ち込む尾根が高い位置に見えてきました。残雪がたっぷり 残っています。左手には、キリンテから登る長く緩やかな尾根も、見え始めました。
 私たちが登る尾根は、ブナとシラビソなどの林に変わり、急な雪面をひと登りすると緩斜面が 出て、また急な登りになるという具合に高度を上げていきます。このあたりは、重い雪の中か ら半身を起こし出したコシアブラの木が、目立ちます。



標高1600メートル付近で、芽をふくらませ始めたコシアブラ

 ブナ林に針葉樹が混じる割合が増えました。豊富な積雪量のため、樹木がまばらになりだし、 みるみる視界が開けだします。
 左手の尾根越に、帝釈山、日光の山々が見えます。さらに高度を上げ、右手に会津駒の山頂部が とらえられるところまで上がってくると、左手には燧ヶ岳も姿を現しました。
 のぼるほどにさらに視界は広がり、森を抜け出て、ついに一面の雪原に到達しました。会津駒の山頂ま で、ずっと雪の斜面がつながっています。東面だけに、下ノ沢の 源頭のスロープは、長大な残雪が厚く谷を埋めています。22ミリまでの画角が得られるワイド コンバーター・レンズをデジカメに装着して覗きこんでみましたが、「馬の背」型の会津駒の山 頂部はあまりに図体が大きくて、とても全体がとられられない。



駒ノ小屋



 やや急な雪の斜面を2度、登り越したところに、駒ノ小屋がありました。14時07分。ゆっくり 登ってきたので、登山口からちょうど4時間かかりました。
 越後側の山々が姿を現します。会津駒の山頂までは、ずっと雪のスロープが続いています。15 分あれば、行けるでしょう。ザックをデポして、早足で登りだしました。

 山頂下の急な斜面に足がもつれますが、振り返るたびに高度感をます景観に励まされ、えっさ、 ほいさと足を前に上げて、14時22分、会津駒ヶ岳の丸い頂に上がりつきました。

 会津駒の山頂は、周囲、みな雪山が連なっていました。
 太陽が南西に位置し、遠望はモヤにさえぎられてはいますが、まずまずの展望です。



5月2日、会津駒山頂からの燧ヶ岳と、
右に雲に包まれた至仏山。
左端は日光白根山




 那須連山は霞が濃く、帝釈山からは姿がはっきりしています。女峰山、大真名子山、太郎山、男体山は さらにはっきり見えます。尾根の途中では層状の細い雲から頭を出していた日光白根山、錫ヶ岳 は、この高さからは山頂部が完全に雲から抜け出ていました。四郎岳がその右に見え、赤城山付近 は雲に隠れて一部が見えています。

 燧ヶ岳は、双耳のピークが美しい角度で眺められます。左手の富士山の方向は、モヤしか見 えません。右手に雲の中からピークの一角を現すのは、至仏山。その右手前の景鶴山のトンガリ姿 は、いい目印になります。景鶴山から、平ヶ岳までの間には、 谷川連峰、そして前山として白毛門から朝日岳の稜線が展開するはずです。今日は、どちらも、 雲の間に少し見えているだけ。その背後の苗場山や佐武流山の方角も、 モヤです。ずっと彼方の北アも、今日はもちろんモヤの中です。



平ガ岳(5月3日撮影)



越後駒と中ノ岳(同)

 

手前、中門岳への稜線の向こうに、未丈ヶ岳(同)



中門岳の尾根の向こうに、丸山とその右背後に、
黒い山頂をわずかにのぞかせる会津朝日岳(5月2日撮影)


 西の方角では、平ガ岳が大きい。この山は、周囲が山だらけ。
 奥利根の源頭の大水上山、丹後山の稜線がぐいともちあがると、ひときわ大きな中ノ岳、越後 駒ヶ岳。越後駒のやや左手前に重なるように、荒沢岳が見えました。荒沢岳も平ガ岳と同じで、 もっと近くに見えると思ったのに、意外に距離感があります。それだけ一つ一つの山が、大き いということでしょう。

 会津駒から北に伸びる稜線の先に中門岳の高みがあります。この尾根は、少なくとも数メート ルの積雪が残っている様子で、発達した雪庇が崩壊してブロック状の大きな雪の塊が数個、沢の 源頭に転がっていました。中門岳の奥には、未丈ヶ岳が、西の関越道から眺めたときと同じ形 で、真っ白な三角形の山容で見えます。一帯は田子倉ダム(只見湖)の周囲の山々が並びます。 右に毛猛岳、薄っすらと浅草岳、同じく荒々しい山容なのに丸山があり、丸山の背後には会津朝 日岳の山頂部が確認できました。
 飯豊連峰は、かなりかすんでいました。

 北東側には、会津駒から稜線続きの三岩岳が大きく見え、その右ずっと遠景にも、吾妻山、安 達太良山方面にうっすらと山なみが見えました。

 湿気が多く気温が高めの条件ながら、北関東と、会越の山々がそろって眺められたのは幸運で した。

 山頂から駒ノ小屋までもどって、今度は、南へ大津岐峠方面への稜線をすすみました。適当な 樹林を西側斜面に見つけ、下降して、今日の泊まり場としました。
 そこは、傾斜が15度ほどある斜面ながら、テントの周囲をシラビソの樹木に囲まれる静かな 空間です。斜面は風上側のため、いまの時期にすでに積雪が1メートルを切っています。スノー スコップで周囲の雪を切り出し、踏みしめ、ちょうどテントサイト分の大きさの水平な雪のテラ スを作り、そこにテントを張りました。
 水は残雪を融かすて使うため無尽蔵です。トイレの大は、この日と翌日に小屋の脇の村営トイ レを使用して済ませました。雪を動かした以外はほぼ原状保存で、積雪期ならではの幕営をさせ ていただきました。



 樹林の中のため風が弱く、快適。夜は星空となり、ほどほどに冷え込みました。



5月3日

 外が明るくなり、テントの入り口から顔を出すと、越後駒が昨日よりもくっきりと見えていま す。尾根筋まで登って見ると、燧ヶ岳にも朝の赤みが指しています。
 急いで朝食をすませ、再び会津駒の山頂に登りました。雲が西から押し寄せているものの、昨 日よりも光線の角度が良い分、とくに越後の山々は美しい姿を見せています。



 5月3日、少し空気は湿っていたものの、晴天に恵まれました。



大津岐峠から燧ヶ岳へとのびる稜線





朝の雪はよく締まり、シリセードに最適でした。
左は燧ヶ岳、右端は平ヶ岳。


 撮影後は、シリセードをまじえて、天場へ戻りました。
 7時45分、下山開始。
いい斜面を見つけるたびにシリセードを楽しみ、木の芽の撮影をしながら、あっという間に桧枝 岐に登山口に降り立ちました(10時24分着)。



桧枝岐のハリギリ

 駒の湯で汗を流し、丸屋で「裁ち蕎麦」と「はっとう」(蕎麦と米のもち)を味わい、帰りの峠 道もさんざん寄り道や探索を楽しんで、関越道へ向かいました。



 (東京から会津駒に向かう車のアプローチでは、 東北道の西那須野・塩原から会津田島を 経て、桧枝岐に入るのが一般的でしょう。しかし、GWの東北道は相当に混むうえ、都内 の西多摩地方にある自宅からは、浦和に出る首都高が、また混雑がひどく一苦労です。
 そこで今回は、関越道で新潟県側の小出インターに行き、そこから六十里越え(国道 252号線)で県境を越え、福島県側に入り、只見から50キロ余り南下して桧枝岐に入 るルートをとりました。
 このルート、小出から桧枝岐まで、山間の美しい村々、ダムや雪山を眺めつつ走ること ができて、車も少なくすばらしい道程でした。遥かな山の気分を盛り上げてくれるに十分 でした。)





山の便り、大地の恵み (野原森夫)
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