吾妻・高山山麓のヨブスマソウと
     安達太良山の雪形


   2002年4月28、29日 





ヨブスマソウ。土湯温泉で。2002年4月29日

 GWの前半に福島に帰省して、もうすぐ80歳になる母と幕川温 泉というところに行ってきました。幕川温泉は、吾妻連峰の高山の 南側の山腹、標高1200メートルほどの、谷が入り組んだ場所に あります。湯量豊富でブナ林に囲まれて入る「展望露天風呂」をは じめ、6つの風呂が楽しめます。



幕川温泉・水戸屋の、展望露天風呂。
トチ?などの巨木の幹を使って木組みして
ひょうたん型の湯船を形作っています。


 吾妻連峰の福島市側は、会津側にくらべて雪が少ないのですが、 この谷は、稜線を越えて降った雪がたくさん残るところです。今春 は、吾妻小富士の「種まきウサギ」が3週間余り早く現れ、4月下 旬には雪解けがすすんですっかり姿を消してしまいました。けれど も、幕川の谷の一帯の日陰には、まだたくさんの残雪がネマガリダ ケや灌木の藪を圧していました。

 母親と2人きりで、この日ぐらいは親孝行第一なので、今回は周 囲の山行きはあきらめました。装備はしっかり車に積んで帰省した のですが。  それで、山菜探索に徹することにしました。



安達太良連峰の眺め。全景。福島市の南福島駅付近から

 28日、往路では、幕川温泉のすぐ手前まで、一気に車を走ら せ、標高を上げました。いい天気です。福島市内から走ってくる途 中、次第に近づく吾妻連峰と安達太良連峰をずっと眺めてきまし た。安達太良連峰の東斜面の残雪は、例年よりも少なく、その特別 の条件で、一つ、発見がありました。躍動的な「キツネ」の雪形で す。安達太良山の本峰と船明神の2つのピークの間に現れて いました。



写真中央、安達太良本峰の右の稜線下に、キツネの雪形が見えますか?
尾は右上、頭は左を向いています

 箕輪山の残雪も例年より少なく、「キングギドラ」の雪形は形が たどれなくなっています。替わりに、今回は、怪しげで巨大なコウ モリの雪形が現れています。今度の山菜探索行のお目当ての筆頭は 「ヨブスマソウ」で、これは葉の形が「ヨブスマ」(コウモリ)に 似ているところから名付けられたもの。そのヨブスマが雪形になっ て歓迎してくれるなんて、幸先がいいではないか。それとも、これ もまた考えすぎの、雪形の読みすぎか。



箕輪山の山頂下に、コウモリの雪形

 斜面の真下を走る車道から見上げると、この箕輪山東面の雪面は 直上して登れそうなルートがあります。もし、斜度がありすぎれ ば、程よいところで引き返しても楽しそう。今度、挑戦してみよ う。

 途中、土湯峠の手前、野地温泉まであと少しのあたりで、双眼鏡 を使ってコシアブラの芽を捜し求めました。けれど、あちこち雪が 残る状態で、芽吹いた樹種も少なく、このあたりはまだ早すぎる様 子。

 土湯峠の手前から、山腹の林道を温泉に向かう途中、枝沢を横断 する場所があります。周囲はブナの林で、沢沿いには5月10日ご ろならコゴミがいっせいに芽吹くところ。でも、雪は融けはじめた ところで、フキノトウやイタドリの芽が顔をのぞかせたばかりでし た。
 この沢からさらに細い林道を車で登ります。道端にショウジョウ バカマが咲き始めています。雪が融けると咲くこの花は、北アの稜 線付近では8月半ばでも咲き始めたのを見ることができます。



 温泉に着いて、さあ、周辺の探索です。今度は残雪を踏んで本流 の幕川へ下りました。踏み跡を外れて、急な泥壁の下部をたどって いきます。お目当てはヨブスマソウの群落です。でも、芽吹きには 早すぎたか。

 果して、現場に到達すると、見つかりました。茎や葉が灰色を帯 びた若い芽が混じります。ずり落ちそうな斜面の土にしがみつき、 踏ん張るようにして10センチほどに背丈を伸ばしています。写真 にとりたい、いい株は、危なくて近づけないので、手頃な株を撮影 しました。
 周囲をさらに探すと、雪が消えたばかりの別の斜面にも、フキと いっしょに群生しているのが見つかりました。味見用にとも思いま したが、まだ芽吹いたばかりなので、置いておくことにしました。 そばの斜面には、フキノトウがいっせいに顔を出し初めていて、淡 い黄色が鮮やかでした。


雪融けしたばかりの地面に芽吹くフキノトウは、鮮やかなレモンイエローです

 ここも周囲はブナ林ですが、沢沿いにコシアブラの「巨木」があ ります。場所を温泉で聞いてきたので、なんとかわかりました。幹 の直径は20センチを超し、高さは20メートルあるかも。一昨 年、秋山郷から苗場山に登ったときも、3合目の登山口、入って1 0メートルほどのところに、こんな大木が2本並んでいました。
 枝ははるか上空で、芽吹いていても、とても手が出ない相手です が、枝先の芽はまだ固く、小さい。食べごろの芽を出すのは5月半 ばごろでしょうか。

 宿にもどって、夜に話を聞くと、最近はコシアブラ目当ての入山 者が増え、幹を切ってしまう人も目立つとのこと。「でも、コシア ブラは切り株からまた新しい枝を伸ばす」と話していました。宿の ご飯には、定番の山菜の天ぷらのほかに、シドケ(モミジガサ)の ごく若い芽のひたし、ウドの味噌汁などが出ました。
 シドケは、この日、走ってくる途中、ずっと標高が低い土湯温泉 の上の車道沿いに、立派な芽を伸ばしているのがありました。この 山菜は、生でかじると絶対食いたくない嫌な味、香りがしますが、 茹でてひたしにしたものは、フキやヨブスマソウにやや似た独特の アクといい香りがしました。

 4月29日、今日は福島市街までもどって、午後には東北道を帰 京しなければなりません。車道をゆっくり走り、よさそうな場所を 探索しました。
 3カ所、いい場所がありました。

 1つは、野地温泉の少し下、鬼面山からの小沢を渡るあたりで す。車道からはるか100メートルほど下に、湿地と沢、やわらか そうな草の色の場所が見えます。
 下りていくと、ユキザサがあり、フキノトウがあり、沢のほとり にミズバショウが咲く美しい場所がありました。アクの強いハンゴ ンソウも撮影しました。



小さな桃源郷



ハンゴンソウの芽

 2ヵ所めは、道の駅から土湯温泉へ向かう車道(新道)を離れ て、旧道に入ったところでした。花が終わったばかりのカタクリが そこここに群生している場所がありました。林の中には、もうすぐ もうすぐ花をひらく、丸い、重たそうな蕾をつけたアヅマイチゲ、 黒いガクのエンレイソウ、山菜として親しまれているシラヤマギク の若芽などが、あちこちに群生していました。とくにカタクリは数 が多く、すでに実が太り始めていて、もう2週間早かったら、と残 念でした。ここは穴場ですね。



シラヤマギクの若い株

 3ヵ所めは、土湯温泉から登る車道脇の湿った斜面。こ こにはヨブスマソウの仲間の群生地があり ました。道のすぐ脇なのに、誰も手を出していません。標高を提げ たので、すでに25センチほどに背丈が伸びていて、食べごろ。数 百本は生えており、15本ほど、収穫しました。



土湯のヨブスマソウの仲間

 コシアブラは空振りだったけれど、雪形が楽しめ、吾妻・安達太 良の素晴らしい展望が楽しめ、アリバイ的に孝行らしいこともでき て、楽しめた帰省でした。

 地名でローカルな名前が多く、わかりにくい報告だったかもしれ ません。すみません。





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野原 森夫
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