中央線通勤電車の車窓から、山菜を眺める
1999・4・4


 春霞もたけなわになると、通勤電車の車窓からの山の展望はとっても むずかしくなってきます。そこで、この時期の楽しみは、沿線の桜、 桃、こぶし、モクレンなどのお花見ですね。
 そして、もう一つ、私の密かな楽しみは、車窓からの山菜・野草の {瞬望}です。

 五日市線、青梅線、中央線と乗り継ぐ電車通勤では、線路際の草むら や土手にいろいろな野草、山菜が目につきます。いまだと、カンゾウの 若芽が目立ちますね。イタドリもこれからです。そんななかでも意外に 多いのが、コゴミ(クサソテツ)です。
 コゴミは東北地方で人気のある山菜で、シダの仲間です。ソテツのミ ニチュア版のような株から、緑色の新芽が、内側に茎を丸めた状態で生 え出してきます。ごま和えや、ひたしが、ぬめりがあっておいしくて、 スーパーでは茎が10センチほどに伸びたものを、10本で300円余 りで売っています。

 その「高級山菜」のコゴミの群生が、なんと、中央線・青梅線の意外 な場所で、車窓から何ヶ所か見つかるのです。

 一つは、青梅線の電車が拝島駅を過ぎて、八高線の陸橋をくぐり抜け た線路左側の草むら。柵の線路側(JR用地)に十数株が、ちょうど今、 茎を伸ばしています。柵のすぐ外には、住宅が軒を並べていますが、 きっと、この山菜に気づいていないのでしょうね。毎年、茎が25、3 0センチまで伸びて堅くなっても、そのままにされていて、JRが草刈り をしたときに切り取られてしまいます。

 2ヶ所めは、中央線の電車が立川駅を過ぎて、スピードアップし、左 手に国立市のスーパー,オリンピックが近くに見える踏切にさしかかる 直前の、引込み線跡の土手の上。電車からは、30メートルも離れてい るので{遠望}になりますが、このコゴミの群落は背丈が4、50セン チにも成長したものなので、遠目にもわかります。(残念ながら、数ヶ 月前に駐車場がつくられて、この春は姿が見えません。)

 3ヶ所めは、国立駅のホームを抜けてすぐの、線路(土手)左手下の 法面。ここも、柵のすぐ外は住宅です。

 4ヶ所めは、国分寺駅の手前で、やはり進行左手。中央線が西武国分 寺線と接する200メートルほど手前に、線路際が土地の低い住宅地に なって、線路が土手の上を走るところがあります。その、土手の法面の 柵際に、細長い群落が見られます。

 こういう場所で見つかるということは、観葉植物として植えられたコ ゴミが株からランナーを伸ばして広がったのでしょうか。それとも、遠 い山の群生地から、胞子が飛んできて、生息場所を拡大したものなので しょうか。丹沢の北山麓に住む私の知人の庭にも、コゴミが突然、大量 に生え出して、今では直径10メートルほどの群落をつくっています。

 コゴミは、道志や丹沢などでもありますが、民家の近くにあっても、 この地域では土地の人も意外に手をださないんですね。年配の人に,食 べられる山菜ですよ、と話して、「へぇ、そう」と、驚かれたこともあ ります。相模湖岸の日連(ひづれ)というところでは、コゴミの群落の 真上に丸太を置いて貯木場にしてしまい、群落の半分が失われてしまい ました。道志の安寺沢という集落を歩いたときに、タラの芽は大事に育 てられ、摘まれているものの、沢のほとりのコゴミの群生地は、まった く手付かずでそのままにされていて、あまりの量の多さに眺めるだけで おなかがいっぱいになる気分になったことがありました。(ちゃんと、 食べる分は摘みましたが)
 長野県でも、和田峠や、白樺湖周辺で、道端に大きな群落が、まった く採集された形跡がないまま、残されていて、驚いたことがあります。 新穂高温泉周辺(槍平や鏡平へのルート)など、岐阜県でも、同じです ね。
 秋川(あきる野市)のとなりの日の出町でも、国道(滝山街道)の道 脇に、コゴミが群生して、誰も見向きもしないところがあります。

 私の田舎の福島では、庭先でコゴミを大事に育てているお年寄り(う ちの母もそう)もいます。東北人や、越後の人は、春の恵みにそれだけ 執着してきたということでしょうか。それとも、キノコの好みの差と同 じで、地域的,慣習的なちがいなんでしょうか。

 
                 99/4/4 野原森夫




FYAMAPでのコメント返信から

 ・……これもまた、コゴミに会いたい、山菜を見たいという心が可能にする 心眼かも・・・。貧すれば、するほど、わずかの自然にでも、敏感にな るんです。
 実際には、場所の多くは駅の前後で電車のスピードが遅いうえに、一 度もしやと思ってから2,3回は再確認して、見極めています。
 コゴミはシダの仲間では鮮やかな緑色の色彩と茎の伸び方に特徴があ り、成長した株(4,5年以上かかる)では、葉茎の丈が4、50セン チを超すので、判別しやすいということもあります。線路際のJR用地 や土手は、都内では自然がよく生きづいている場所だと感じます。この あいだは、うちの「社員食堂」でウルイ(ギボウシ、オオバギボウシ) のてんぷらが、おかずに添えられました。山菜と、こんなふうにして シーズン初対面するなんて、ちょっと寂しいです。この山菜(高山植 物)も、山では無尽蔵ですが、スーパーにならんでいます。

   朝の電車では、展望がいい時期には、電車の中で丹沢・奥多摩・富士 が見える南側に立ちますが、いまの時期だと中央線は北側の窓の方が花 や野草がにぎやかです。
 東京は、ようやく3日に桜が満開になり、国立駅の桜は4日から満開 を迎えました。うちの小さな庭のタラの芽も、もう摘みどきを過ぎはじ めています。ウコギもミツバも摘みごろです。
 今朝は、五日市線が多摩川を渡る鉄橋から、桜が満開の土手の向こう に厚く残雪をかぶった富士山が眺められました。

         99/04/05 野原森夫







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