タラの芽採りの、マナーについて

2000・4・8  





》ところで、タラの芽の摘み方を教えていただけませんか。すっぽ
》んぽんのタラの木に、初めて芽生えた若芽を摘み取ってしまうの
》は、いつも心が痛んでいるものですから。

 摘み方、ルールというよりも、個人的な体験の一つとして、お伝 えしますね。
 私は、きのこにしろ、山菜・野草にしろ、それぞれの生態、繁殖のし かた、生育場所などをできるだけ知るということを基本にすれば、 どんな山菜でも、その相手にあった採りかた、食べ方があると思っ ています。

 タラの芽は、人の手が入った条件に広がっていきます。山道沿 い、林道の道端、伐採跡、そして杉林の中の ちょっと日が当る空間などですね。タラの芽が異常に繁殖している ところは、元の自然にかなりの人の手が加えられたところだと思い ます。ですから、人工の手がどれだけ入ったか、その程度を示す「指標植物」という言い 方もできると思います。
 そして、人が採ろうが採るまいが、タラの芽の林は5、6年もすれ ば、ほかの、より背丈がある、生長力のある樹木によって、とって 変わられていきます。日陰には生きられないタラの木の宿命です。 同じ伐採地に数年、通いつづけると、こういう変遷 を実感します。
 私がいま、秘密のフィールドにしている道志のある エリアは、いまだに私たち以外の人は入っておらず、いつも何割も 採ることができないまま、シーズンが終わってしまうほど広い場所です。広大 な伐採地です。そして、すでにそこも、より背丈のある他の樹木が タラの木を枯らしはじめています。

 ですから、もし、そのタラの木の、新芽を摘み取るのが、初め てだとしたら、問題はないと思います。摘む場所も、これは当たり前の ことですが、人家の近くや、畑のそばなどでなく、山の中の自然の タラの芽であればOKと思います。

 

 それから、同じタラの木を何年も観察していると、わかるのこと があります。
 人の採取・狩猟(採集)圧にあわないタラの木は、ほ とんどまっすぐ、高さ3メートル、4メートルを超えても枝を出さ ずにすくっと伸びていきます。木が密に生えている場所など、とく にそうです。
 ところが、狩猟圧がかかるところでは、林道沿いの目立つ場所や農家の庭先のものなどは 典型的ですが、何回も枝分かれして大きな木に育っていきます。春には その枝の先にそれぞれ一個ずつ、合計すると6、7個以上もの芽をつけます。狩 猟圧にたいして、幹の途中からも「側芽」を幾つも出して、生産・ 繁殖力をあげて対抗するわけです。
 ほどよい摘まれ方だと、タラの木はこういう対抗をして、子孫(花と種子)をふやそうと します。でも、、登山道沿いなどで、同じシーズンに繰り返し、生えでた 芽を摘み取られると、ついに狩猟(採集)圧が生命力を圧倒してしまいます。 タラの木は、新しい芽を伸ばせないまま、立ち枯れしてし まいます。

 ここらへんが、摘むかどうかの判断のしどころです。
 「2番芽を摘むな」という教えも、理にかなっていると思います。
 そのエリアのタラの芽を何年にもわたって楽しみたいときにも、必要な配慮に なりますね。
 ですから、タラの芽と長く付き合いたいと思ったら、自分だけのこういう フィールドを見つけ、数年がかりで通い続けることを、おすすめします。
 私のHPの道志や奥多摩のフィールド・レポートに、長期の探訪と推移の 記録があります。



私が使っているフック。詳しくはこちら
フックは、ジュラルミン製、直径10〜12ミリのものを曲げて作製。長さ1メートル 弱。これに180センチほどの柄を付けたものも携行し、背丈のある木には 2本を使って、柔らかくたわませます。
 手には、作業用の皮手袋を使っています。トゲだらけの枝先を気にせず、摘み取る ことができます。



 こういう問題とともに大事だと思っているのは、道具です。
 タラの木は、人に摘まれる場所では2メートル内外の高さが普通です。 でも、人が入らない一帯では、高さ4〜6メートル、幹の太さも5センチ以上 に生長します。  そこまでいかずとも、タラの芽は、高いところにありますから、道具のない条件でタラの芽に 挑むと、意図的かどうかは別にして、結果的に枝を折ってしまう場 合が多いのです。タラの芽に出くわして、素手で挑んだりすると、 タラの木はたまりません。無残に折られた幹をよく見かけるのは、こういう 問題もあると思います。
 タラの木をいたわり、自分も、来年またそこへ来る人も、長く楽しもうと 思ったら、細いロープでも、手製のフックをつけた棒でも、なんでもいいのですが、ダメー ジを少なくする道具が必要です。
 釣竿をたわませるように、柔らかいカーブをつけて、幹を曲げてやるのです。 そのために、長短2種類のフックを使って、2箇所の力点で曲げるのが「やさしい 摘み方」。2人がかりで、1本ずつのフックを持ち、慎重に曲げてあげる と、より確実です。
 幹が折れる直前には、いやな音がし始めたり、反発力が急に落ちます から、それにも気を配ります。
 それから、皮製の手袋(古いスキー手袋か、鉄骨作業 などで使う皮手袋)、なければ綿手袋の2枚重ねで、手を守ると、トゲだらけの 幹を手でやさしく持てます。これも木をいたわるには良い方法です。
 手袋なしで挑むと、芽のすぐ下(枝の先端部分)には特にいっぱいのトゲが 出ていますから、これを避けて、芽の先端だけ、もぎとってしまう失敗をしたり、あるいは枝 先のトゲのすぐ下で、枝ごと折ったりしてしまいがちです。
 登山をする人は、何も用意がないところで出会うこともありますから、 そのときは細引きやシュリンゲを使い、それを幹の高い位置にかけて、幹をたわませると、 やさしい採集ができます。
 用意がなく手が届かないときは、残念ですが見るだけにしてください(笑い)。
 ハリギリも同じです。
 コシアブラは、幹がとくに柔らかいので、高さ3メートル ぐらいまでは、道具なしで対応できます。トゲもないので。

》(入山禁止は)地元の人だけでなく、よそから来た人にも同じ扱いだった
》と思います。

 そういう「山菜採り・きのこ狩り禁止」「入山禁止」の場所は、当然、避 けた方がいいですね。とくに新潟県などでは、生業としても位置付 けられているので、ほとんどの山に立て札があります。
 山菜は、そういう場所を避けても、どんな地域でも自分のフィールド を探すことができます。

     2000・4・7

 タラの芽(たらの芽・タラノ芽)、コシアブラ、ハリギリなど山菜についてのフィールド体験レポート は、下記のHPをごらんください。
 フィールドレポートのほか、次のようなコンテンツがあります。
 ◆タラの芽採集と、摘みごろの予測
 ◆峰の集落、桜とタラの芽の旬
 ◆タラの芽ご飯
 ◆タラの芽採りの、ロングフック
 ◆タラの芽の採り頃 予想式と桜前線
 ◆タラの芽の旬(摘みごろ)の予測法

    



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野原 森夫
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