セリ摘み、喜正の酒、ああ早春

2005年2月11日



 2月も中旬、そろそろフキノトウやセリを味わいたいと、近所の散策に出かけました。
 フキノトウは、早い年なら今頃から、私が耕作している畑の空き地に顔をのぞかせます。
 今日は、西風がやや強い、寒い日。防風のヤッケを着て探してみたけれど、まだ1つ も姿を現していませんでした。暖冬だといわれたものの、1月半ばからは例年並みに寒い 日がつづき、地面は毎日のように霜が降りたり、凍ったりしたために、足踏みをしている のかもしれません。
 日の出町から五日市へと車を走らせ、探索をしてみましたが、私の畑の日当たりのいい 場所でまだなのですから、さらに奥多摩よりのこの一帯でも、見当たりませんでした。

 

 カミさんと2人、昼ごはんは、五日市の寿美屋に入りました。
 釜揚げうどんとともに、天ぷらを一盛り注文したら、フキノトウ、タラの芽、サツマイモ がどっさりと運ばれてきました。このフキノトウは、よほど日当たりのいい場所のものか、 少し暖かい地域からとりよせたものでしょうか。塩をちょちょいとつけて口に放り込むと、 懐かしい香りと苦味が口の中にひろがりました。うまい。
 「蕗のトウの 舌を逃げゆく にがさかな」(虚子)

 ときどきのんびりとした時間を過ごしにくる五日市です。今日は、これから、どうしよ うか。この五日市あたりは、セリ摘みが、ちょうどはしりの時期です。
 その前に、一度、立ち寄りたかった造り酒屋を訪ねることにしました。「喜正」という 銘柄の酒をつくっている「野崎酒造」です。
 東京の西多摩地方には、いろいろな地酒の酒蔵があります。そのなかでも喜正は、少量生 産を旨としているために、地元のあきる野市あたりでさえ、なかなか入手しにくいお酒です。 「あきる野産業祭り」で地元の出品としてテントの店を出していたのに出会い、そこで購入 した1本の味が忘れられず、それからときどき入手するようになりました。酒屋さんでも切れ ていることが多く、そのたびに注文して数日待ちでやっと買い求めることがしばしばです。ぐ い呑みで2、3杯でもう十分な程度の、酒が強くない私には、このペースが合っているようで す。



 秋川と盆堀川の合流点近くにある野崎酒造をたずねると、休日なのに訪問客は他にはいません でした。門を入って、出来立てを販売してくれる売店に行くと、その希少な! お酒がずらり と並んでいます。見本が全部で10種類ほど。初めて見る瓶が半分ほどもあります。
 女性の方が出てきて、「飲んでみますか?」と声をかけてきました。味見用のお酒は、そばの 冷蔵庫に収められています。
 「私は車の運転があるので」と遠慮して、今日もとめていくお酒の吟味にかかりました。(い ずれも720ミリリットル瓶を購入。)

 地元の酒屋で切れていた、冬の時期だけの「しぼりたて(本醸造生原酒)」を1本。これは、 やさしくすっきりした香りがすばらしい生酒で、カミさんが好きなお酒です。
 次いで、「純米生酒」を1本。これは、初めて目にする生酒で、やはり季節・数量限定品。私 の代わりにカミさんが味見をして、「おいしい!」と声を上げています。米のうまみは、「しぼり たて」とどちらがのっているのでしょうか。

 このほかに、喜正には、「吟醸生酒しろやまざくら」という辛口の生酒があります。こちらは、 地元の店なら手に入れやすい種類で、「しぼりたて」「純米生酒」ほどの希少さはありませんが、 昨年の「産業祭り」いらい、我が家では何度か入手しています。

 もう1本は、生酒ではなく、普通に保存できるタイプで、初めて目にするものを求めました。 「手造り純米 吟醸酒」という種類です。

 そうこうしているうちに、4種類の味見をしたカミさんは、頬を染めて「いい気持ち」「おいし かった」などと話しています。私も早く家に帰って、味見をしなくては。

 選びながらお話を伺ったところでは、野崎酒造は、明治10年代の創業で、越後の杜氏が移り 住んで始めたものだそうです。山沿いのこの地は水がよいので選ばれたとのこと。最近では、岩手 の杜氏も入って製造を続けており、その味わいには変化もあるそうでした。
 「しろやまざくら」の名前の由来になった「城山」は? と聞くと、門の目の前にある山を指差 して教えてくれました。大きな山桜の木が1本あり、春にはとても目立つとのこと。城は、八王子 のお城の出城の一つとのことでした。
 私たちのお相手していただいたこの女性は、この造り酒屋の娘さんか、若奥さんだったのかもしれ ません。何を聞いても、的確に教えてくださいました。

 喜正のお酒は、私の母の葬儀の際、香典返しに使わせていただいたものでもありました。「原酒」 という、きりっとした味わいの1本です。そんなことも思いながら、春の桜の時期の再訪を思った ものでした。

 3本のお酒を大事に車に積んで、今度は五日市のセリ摘みのフィールドへ。
 野鳥の撮影にきている人が、三脚・カメラ・望遠レンズで熱心にシャッターを切っています。
 フキノトウはここにも見当たりませんでしたが、セリはありました。湧き水の流路になる狭い場所 を選んで、帯状に若芽が伸びだしています。地下から湧き出す流水で、ここだけは朝晩も、冷え込みが 穏やかなのでしょう。日当たりもよい場所です。
 もう少し、時期がすすめば、古い田んぼ跡の一帯にも水がたまり、あたりはセリだらけになることで しょう。
 鴨がうるさく鳴き声を上げています。



湧き水がおだやかに流れる湿地に、セリの若芽がびっしり生えだしていました

 冷たさをあまり感じない水の中に指を入れて、セリの若芽を大事に摘み取りました。
 ヨモギはもちろん、春が早いカンゾウの芽も、まだまだでした。結局、今年の春は例年並みになるので はないでしょうか。





 家に帰って、セリの下ごしらえ。
 流水できれいに洗い、わずかの塩をいれて、20秒ほどゆでました。
 出汁醤油でおひたしです。香り、歯ごたえは、まさに初物です。
 新しい春を迎える時期が、またやってきて、今年はまた少し、ものの味わいが楽しめるよう になったのかもしれないなと思いました。






 今日(2月27日)、やっと畑の空き地からフキノトウが顔を出しているのを見つけました。
 霜や地面の凍結がまだ続いているため、時期が遅れたうえに、2個だけ見つけたフキノトウは、表皮が霜やけ状態でした。

 でも、初物なので、摘んできて、いま蕗味噌に仕上げたところです。
 豆腐を温めて、この蕗味噌をのせて、これから味わいます。





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野原 森夫