栗林のアサツキ





 秋留台公園のそばにある畑の入り口には、80坪ほどの栗林がある。夏 になると下草がいっぱい生え出してきて、毎年、初夏から秋にかけて、3度、 4度と草刈りの鎌をふるうことになってきた。

 鎌は、長さ180センチ、刃は三日月型で30センチほどあり、厚みがあって ずっしり重い。これを両手でもって体を大きく回して旋回させ、地面の際を薙 いでいくと、おもしろいように草が刈り払われる。栗林の全体の草を刈り払う のには1時間ほどもあれば充分。もちろん、これは休憩抜きの正味の作業 時間で、夏は汗みどろのうえに草の汁をカブリ、蚊の襲来をうけ、鎌の柄に 体をもたれかけて何度も荒い息をはきはき休むことになる。そのうえ、この 作業をした翌日からは、ひじ、背中、そしてとくに左のわき腹がひどい筋肉 痛になってしまう。

 去年(1999年)からは、畑のあぜの除草もかねて、たまらずエンジン刈り 払い機を購入した。その威力はすばらしく、栗林だけだったら30分もあれ ば、きれいに刈り払うことができた。休みも入らない。しかし、筋肉痛の方は、 今度はひじに集中的にきた。慣れないせいもあって、刃先を動かすのに、腕 だけを酷使してしまうのかもしれない。

 この栗林には、ウドとアサツキが生え出してくる。それから、初夏には白花 イチゴもいっぱい実をつける。雑草の中では、初夏にはハルジョオン、秋には ヒメジョオン。それからドクダミとかツタ類とか名前のわからない赤く太い幹の 背丈が3メートルほどになる植物(肥料に入ってきた外来種)などがある。ツ タも何度、根元から切断しても、あっという間に栗の木に這い上がる。夏は、 2週間も放っておくと、ジャングルのようになり、蚊もわんわん飛来してくる。

 真夏の、雑草生い茂る栗の木の下の刈り払いでは、背丈のあるウドはなん とか残すことができるものの、アサツキはそうはいかない。もろもろの下草と ともに、刈り払ってしまうことになる。これが2度、3度と繰り返される。

 

それでも、アサツキは強い。晩冬の栗林は、枯れた落ち葉と雑草とでおおわ れている。その冬枯れの色のなかに、春を告げるアサツキのとがった葉が、 姿を見せている。3月になると、背丈は10センチ、4月には25センチほどに 伸びてくる。周囲には、アサツキの株のほかに、ノビルもこちらはずっと細い 葉を伸ばし、あちこちに固まって生えている。

 この栗林のアサツキは、近所の畑に育てられていたものから種が飛散して きたのだろうか。数カ所のかたまりをつくっている。

 春、3月の終わりに、まだ背丈が20センチほどのアサツキを、ひとかたま りのまま、ごっそりと引き抜いた。根元の鱗茎はらっきょう型で、ノビルのよう に丸くはない。葉は、これもノビルと同じくストロー型だが、ひとまわり太くて、 先端はノビルほど細くとがってはいない。



酢味噌和え。右はカンゾウ。

 さっとゆでで、酢味噌に。生でもかじってみた。さわやかな味、甘味とネギ 風の香りも楽しめた。

 アサツキには、シロウマアサツキというのがある。北アルプスの白馬岳に は、このシロウマアサツキが生え出る大雪渓上部の沢の中洲に、「葱平」 (ねぶかっぴら)と名前がついた場所もある。
 私は、白馬岳に登ったのは8月下旬で、そのときはこのアサツキを見る ことができなかった。二男を担いでいたので、花を存分に楽しむ余裕もな かった。
 その後、子どもが荷物を担ぐようになってから、同じ北アルプスの朝日 岳、雪倉岳を縦走したときに、雪倉岳の雪渓のそばでシロウマアサツキ の紫色の花に出会った。

 

 いつか、山の雪渓か冷たい沢水のほとりで、アサツキのまだ芽が白い ものを見つけてかじってみたい。そんな願いをもたせてくれる山菜だ。





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野原 森夫
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