アマドコロの根の天ぷら

2000年4月28日


 弓なりにそった細い茎から、小さな鈴のような白い花をいくつもぶら下げた 様子が、なかなかかわいらしい野草だ。細長の小さな花は、先端が淡い緑 色。名前のアマドコロ(甘野老)は、トコロという植物に根が似ていて、甘い からだというが、トコロとはどんなものなのだろうか。

 アマドコロは、ときどき出かける丹沢の北山麓の日当たりがいい斜面の草 原に、毎年、生え出してくる。今年はなかなか太めのおいしそうな芽が出てき たので、試食してみた。
 似た野草に、これも食べられるナルコユリ(同じ鈴のような花を鳴子のよう にたくさんぶら下げている)がある。それと、ホウチャクソウ(宝鐸草)という毒 草もある。
 これらにくらべて、アマドコロの一番、はっきりした特徴は、茎が角張ってい ること。四角とも六角とも感じられる、めずらしい特徴がある茎が目印にな る。後にのべるように、根も独特だ。
 ナルコユリとホウチャクソウの二つは、茎はともに丸いが、ナルコユリは、 芽の地下を掘り出すと、根は球をいくつも連結したようにごつごつしていて、 しっかりしている。葉の中央に白いすじがあるのも、目印になる。ホウチャク ソウは、ひげ根だし、茎は生長すると茎が枝分かれする。花の数も、一枝に 1〜3個ほどとずっと少ない。



アマドコロのバター炒め

 とりあえず、アマドコロの新芽を5本ほど採ってきて(4月25日)、フライパン でバター炒めにしてみた。緑色が鮮やかな、野草の炒め物ができた。口に入 れてかむと、甘味がある。けれど、わずかに、苦みも感じられる。食べられる が、とてもおいしいというほどのものではない。茎の部分は甘味があって、アス パラガスに似た歯ごたえだった。

 ざっとゆでて、水にさらした方が、いいのかもしれない。それと、アマドコロの 名前の由来になった、甘味のある根も、食べてみたい。天ぷらがいいという話 だ。どんな味になるだろう。



掘り出した根。自然薯を細くして、横に這わせたよう

 次の機会に丹沢山麓を訪れたときに、これも試してみた。
 地面の上に伸びた若い芽を選んで摘むのは簡単だが、根を掘り出すのは、 なかなかむずかしく、楽しい時間だった。アマドコロの根は、長いもを細くして 横に這わせたように、ついている。太さはせいぜい2センチ。長さは、確認で きた一番長いもので80センチ以上。養分を貯めこんだこの地下茎から、地 表に芽を伸ばしている。根は、無理に力をかけると、すぐ折れる。まっすぐで なくて、屈曲しているので、スコップなどを気安く使うと、根を切断してしまう。折 らずに、なるべく長く掘り出すのが、楽しい競争になった。



洗った根

 根は、ひげをむしって、タワシでよく洗い、10センチ内外の長さに切って、天 ぷらにした。芽は、さっとゆでで、おひたしに。根から芽を切り離すときに、包丁 をあてると、根の粘り気で指がぬるぬるし、包丁がすべってしまうものもあっ た。
 さて、天ぷらは。「けっこう歯ごたえがあるね。素朴な味だ。ほんのりと甘味 がある」「ぬめりもあるね。ビールに合うよ」。珍しさも手伝って、好評だった。
 ひたしの方は、やはり炒めるよりも苦味が抜ける。甘味のなかに独特の苦 味が残って、これがアマドコロの個性なんだろう。

 根を掘るのは、ほんとうは養分を貯めこんだ秋がいいそうだ。
 今度は、初冬のころに、この根を味わってみたい。米が日本列島になかった 時代、縄文以前の人々は、こうした食べ物から、季節ごとにでんぷんを摂っ ていたのだろうか。





山菜・野草 表紙へ
HomePage TOP へ


http://trace.kinokoyama.net  
野原 森夫
記事、写真の無断転載を禁じます
Copyright (c) Nohara Morio.
since Nov.2000