樹氷の森をぬけて、縞枯山スキー

2001年3月10日
野原森夫、遥子





 今年は3月に入っても、寒気団がふんばっています。
 久しぶりに妻が山スキーに行くというので、北八ツの縞枯山 に登ってきました。午前中は天気がもつという予報と、朝ゆっくり出ても一気に稜 線まで上がることができるという条件(^^; を、当てにしてのものです。
 縞枯山はこの時期は2度めですが、今年は雪が多いと予想して、 スキーでもルートどりがうまくできるのではと、期待して行きまし た。XCのパノラマコースと、麦草峠の下から国道299号の滑走 を、楽しみにしていったのですが…。
 天気にも、雪の状態にも、甘い予想は裏切られて、なんだか障害 物競走のようなスキー行になってしまいました。
 GPSは見通しの利かない樹氷の森の中で、しっかりサポートを してくれました。



縞枯山頂で、風を避けて、山頂下の樹林で休む

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自宅(東京・西多摩、6時25分発)車→蓼科ピラタススキー場 (9時48分着、10時32分発)ロープウェー→山頂駅(10時 39分着、11時00分発)→縞枯山荘(11時10分通過)→雨 池峠と縞枯山の稜線に出る(11時25分)→縞枯山(12時31 分着、48分発)→茶臼山との鞍部の分岐点(13時24分)→五 辻(XCパノラマコースに出会う、14時02分着、16分発)→ 山頂駅手前でカモシカコースに出会う(14時45分着、15時0 7分発)→ピラタススキー場(15時24分着、48分発)車→自 宅(18時29分着)

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 中央道の双葉サービスエリアで朝食をとって、須玉、長坂の登り にかかったのは、午前8時すぎ。ラジオでは、新潟と長野北部は降 雪中という。甲斐駒の雪雲がとれはじめた。八ヶ岳の雪雲も薄くな り、小淵沢からは蓼科山がきれいに見える。午後から崩れるという 天気予報なのに、低気圧の接近で逆に、今のうちは、北八ツ方面も いい天気になりそう。遅く出てきて失敗したかな、と思った。
 蓼科ピラタススキー場(標高1770メートル)に車を置いて、 ロープウェーで一気に標高2240メートルまで上がる。「屋外は 零下15度」(?!)とアナウンスがあった。気温よりも、風が強いのに、 気おされる。



GPSトラック・ログをもとにした、ルート図。
赤いラインが、登高・滑走した軌跡。位置の測定間隔は1分ごと。
パノラマルートでは一部、データがとれず、補正した。
トラック・ログのまま。
カシミール3D(DAN杉本 作)で描画。国土地理院数値地図50メートルメッシュ標高、
および同25000分の一地形図を使用。


 11時ちょうどに山頂駅を出発。
 二人とも山スキーで、妻のは長さ155センチ、私のは170セ ンチ。締め具は、ジルベレッタの♯404と♯400。ともに15 年前後の年期があるもので、いま流行の締め具にくらべると重い。 けれど、基本部分にスチールを使っているので、最近のプラスチッ クを多用したものよりは、長持ちし、安心感があると私は思ってい る。登山靴でもスキー靴でも、なんでもフィットしてしまうのも、 便利。シールは駐車場で装着してきた。

 前に来たときは、夏道から縞枯山をめざした。山スキーでは傾斜 がきつく、とても苦労させられた。今回は雪が多いことを期待し て、途中で適当に樹林に分け入ってルートをつくり、山頂をめざそ うと思ってきた。とはいっても、まずルートと積雪の様子を見るこ とが必要と、縞枯山荘をへて雨池峠方面への夏道のトレースをたど る。山荘への道は、つぼ足でもぜんぜん沈まないほど、よく踏まれ ている。

 縞枯山荘は10分後に通過。
 ここから、夏道を離れ、縞枯山の北斜面を、右斜めに登ってい く。15分ほどで、雨池峠から上がってくる夏道に合流した。
 期待に反して、道の両側は樹林がみな雪面の上に出ていて、しか もびっしり梢をひしめきあって、密生している。幹の間隔は、体が 通りぬけられないほど、狭い。少し上に登れば木のまばらなところ に出るかもしれないと進んだが、スキーで電光形にルートを選んで 行けるようなところは、やはり見つからない。積雪はスキーポールが完 全に手首まで埋もれるほどある。この場所では、積雪よりも、とに かく樹林の密生の方がまさっているようだ。もともと八ヶ岳は、雪 が少なめの山だから、植生が上信越の山とは違う。

 困ったな、と思っているうちに、登りの傾斜がきつくなりだし て、シールでも板が後ろに滑るようになってきた。
 休憩して、スキーをはずし、ザックにくくりつける。GPSで は、山頂まで、あと70メートルほどの高度差だった。魔法瓶の甘 酒で元気をつけて、ツボ足登高を始める。こういう事態も予想し て、ツアーではふだん使わないロングスパッツを装着してきたの で、ズボッと足を踏み込んでも心配なし。2,3日前のものか、新 雪がかぶっている。今朝方にも先行のパーティーがあったらしく、 道はしっかり踏まれていて、歩きやすい。

 妻はサブザックで来たため、私に2組のスキーを背負わせて、 とっとと登って行く。スキーの先端が頭上の樹木の雪にぶつかる たびに、私の頭には粉雪が滝のように降りかかる。
 前方、木の梢越しにスカイラインとおぼしき様子が見えるように なると、縞枯山の山頂だった(12時31分着)。八ヶ岳の南部方 面のピークがおぼろげに見える。西側は枯れた幹が立ち並んでい て、晴天なら遠望も利くようだが、今日はまったくだめ。細長い山 頂の南の端には、樹木がまばらな展望地点もあった。
 西風がビューっと吹きつけて、地吹雪のようになり、こんな場所 ではとても休むことはできない。もどって、山頂下の樹林の中で休 憩する。

 山頂から見渡した様子からは、木はまだ密生状態だった。この先 も、樹林が疎にはなりそうになく、ルートをとれる様子はない。幸 い、南側の下降は傾斜が緩いので、しばらくは、スキーをはいて、 夏道を下ろうと思う。茶臼山との鞍部まで行けば、右下を並行する パノラマルートに下る分岐がある。
 出発しようとしたら、3人の女性のパーティー(50代前後)が ツボ足で登ってきた。今日は、麦草峠まで縦走するのだという。 リーダーは、経験をつんでいる方のようで、縞枯山からの下降でト レースがか細くなるなかを、ぐんぐんひっぱっていく。風が強く、 頬が凍傷になるかというくらい痛い。でも、道はすぐに背丈の低い 樹林の中に入る。
 シールを貼ったスキーは、この下降では斜度が適当だったため に、具合がよかった。やはり、例年より積雪が多いと、スキーは楽 になる。いつもの年なら、スキーは使えず歩いた方がいいようなと ころだ。途中、縞枯山の少し下には、岩の展望所らしきものもあっ た。

 道が踏まれていないために、3人パーティーの一人は、和製の丸 いワカンをとりだした。私たちは、滑るところは滑り、ときには樹 氷や斜めに倒れた木に行く手を通せんぼされたり、段差のある斜面 を迂回したり、障害物くぐりぬけのようなことを繰り返しながら、 先行して下降して行った。
 丸い稜線で不明瞭なために、ときどきはGPSで現在地を確認す る。前方の茶臼山が、意外に大きく、どっしりしている。縦走は、 あの山にまた登り返すことになる。たいへんそうだ。でも、冬の麦 草ヒュッテは暖かく迎えてくれるのだろう。

 傾斜が少し緩やかになってくると、茶臼山との鞍部は近い。まだ 鞍部にまで行きつかないあたりに、ほとんど雪に埋まった道標があ り、そこが右方向、パノラマコースの五辻の地点へ向かうT字路 だった。

 深い雪のなかを下降開始。楽しみにしてきたエリアにようやく入 りこんできた。最初はせばまった樹木のあいだをくぐりぬけなが ら、わかりにくい道を下降していく。
 道とはいっても、トレースは もちろん、道標や目印もまったくない。なんとなく樹木の間が開い て、見通せるようなところを選んで、下降していく。不意にあたり が開けて、気持ちのよい滑走コースのようになるところもあれば、 両脇から森がせりだしてきて通せんぼされるようなところもあっ た。斜度はシールをつけて、ほどよく滑ってくれる程度で、私たち のスキーの腕には、このくらいがちょうどだった。
 途中、GPSで確認して、「西にあと300メートル余りでXC のパノラマルートに出る」と話し合う。背丈が低い樹氷の森のなか で、GPSはしっかりサポートしてくれた。



稜線から五辻への下降

 前方、樹氷の間に、赤い標識旗が見える。そこがパノラマコース で、五辻の地点だった。
 なんとも明瞭なXCルートだ。このあたりでは、幅5、6メート ルかそれ以上に、樹木が帯状に開かれていて、左(南)は国道29 9号の岩小場の地点へ、なだらかな滑走ルートが続いている。右 (北)は、縞枯山の中腹を等高線にほぼ沿いながら緩やかに登る形 で、ロープウェーの山頂駅へとしっかりしたルートが伸びている。 途中には広い雪原もある。



五辻からパノラマ・コースを見る。右前方は、縞枯山

 私はひそかに、ここから国道299号へ出て、冬だけ滑走が許さ れる道をメルヘン広場まで下降する案を考えていた。メルヘン広場からは 標高1750メートルほどの等高線沿いに目印をたどるXCのトラバース道(不明瞭)があり、 ピラタス・スキー場へもどることができる。
 でも、時間的には、それでは夕方になってしまうし、空は完全な曇り空で、雪も降 りだし、天気は崩れ出している。
 五辻への道々、妻にこの案を話したら、一蹴された。(^^;

 で、五辻からは、パノラマ・コースを北へ向かい、山頂駅にもどるこ とにした。こんどの楽しみは、カモシカ・コースの4キロの滑走だ。
40分もいけば、カモシカ・コースへ下りる地点に着けるはず。

 国道方面からXCスキーの男女がやってきて、山頂駅方面に先行 していった。XCスキーは軽快で、楽しそうだ。
 私たちも出発。途中、山頂駅方面からXCスキーの年配の男性 が、元気に滑り降りてきた。前傾姿勢でビューっと滑って行く。あ れなら10分もあれば国道へ出てしまうだろう。男性の3人パー ティー(一人はスノーシュー)とすれ違ったと思ったら、次は2人 パーティーがまたすれ違う。冬はネイチャースキーのメインルート のようになるコースだった。

 緩い緩い登りがつづく道で、シール登高がXCにまさり、途中で 先行した男女のパーティーを抜いてすすむ。道が樹林の中の細い道 になると、山頂駅は近い。この樹林は背丈もあり、密で、GPSの トラックログが切れ切れとなった。

 前方が開けると、コンクリートの山頂駅が200メートルほど先 に見える場所に出た。カモシカ・コースを捜すと、左下に滑走して 行くスキーヤーが見える。ルートを外れて、コースに向かう。
 完全な吹雪になった。私たちは2人とも雪だるまのよう。ザック も背中側に雪が凍っていっぱい着いている。稜線と五辻への下降で 障害物競走のような樹氷のくぐりぬけを繰り返したため、フードの 上からたくさんの雪をかぶったせいだった。
 樹氷の陰で風をよけ、シールを外し、腹ごしらえ。妻はスキー靴 にロングスパッツで来たが、7年ほど前の靴だったので底のプラス チックのすべり止めが粉々に砕けて、ボルトだけが残り、靴底が薄 くなってしまった。締め具が緩んで、危なそう。七つ道具のドライ バーでジルベレッタを調整し直す。プラスチックの靴は、何かと怖 い。

 15時07分、滑走開始。15時24分に、車をデポしたロープ ウェー駅にたどりついた。



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野原 森夫