五日市のおやき―おばあちゃん

2001年2月11日



 11日の日曜日は、ちょっとおいしいコーヒーを飲もうと、五日 市の荷田子バス停そばにある「茶房 むべ」へ出かけてきました。 同じあきる野市ですが、五日市はその西半分にあり、荷田子はその また西端にあります。我が家から、車で15分。
 道々、花粉をたっぷり貯めた杉の樹林の色が、恐ろしげでした。



むべの入り口。FYAMAPのHさんが撮影。

 「むべ」には、いろいろなコーヒーカップを置いていて、好きな カップを選んで、コーヒーを入れてもらうことができます。若い二 人が経営しています。
 その家のお爺さん(とても若い)は、たわわな髭にやさしい目が 光る方。店に飾ってある絵と文章の文字が、どこかで見たことがあ たなと思ったら、JR駅などにある、あきる野の観光案内のポス ターや、五日市の老舗の看板などが、この人(高橋さん)の手にな るものであることに気がつきました。お孫さんを抱いた高橋さんに 会って、ごあいさつ。

 「むべ」の向かいには、このあいだは閉まっていて買えなかった 「おやき屋」さん(乙訓さんというお名前のお家)があります。
 のぞくと、開いていました。
 店は、母屋の脇に木造で二間四方くらいの大きさ。引戸を開ける と、土間のスペースがあり、ここで注文して待ちます。焼いているのは、ほっぺがツ ルツル、背筋もピンと伸びた、おばあちゃんです。

 八王子市から買いきたという女性の先客が2人いて、おばあちゃ んは、父親がやくざで、気前が良すぎて、土地が全部、人手にわ たったことだの、気が向いたときだけおやきを焼くので、この店が 開いているときにこれた人は、運がいいだのと、話しています。



 そのあいだも、手は粉をこねて、あんを包み、熱い鉄板にのせ て、焼いていく作業を続けています。
 私も、聞いてみました。
 「年を聞いちゃって、悪いけれど、おいくつです?」
 「八十八になったよ。はははっ」
 「その、あんこが、おいしそうですね。自分のところで作ってい るんでしょ?」
 「毎晩、ひと鍋、煮るんだよ。これがなくなったら、終わりさ」
 「じゃあ、朝から夜まで、動きっぱなし?」
 「いやあ、気が向いたときだけ、
作るのさ。この人たちなんか、 昼から待たされてる。はははっ」  「五日市では、昔から、おやきがあったんですか?」
 「私ら、子どものときは、桧原との境で、おばあちゃんが通りに 店を向けて、おやきを焼いていたよ。ほうろく、といって、わかる かなあ…、厚い鉄の板で、焼いてな。それがうまくて、よく子ども のころ、赤ん坊をおぶって買いに行かされたもんだよ」

 そうこうしているうちに、前のお客さんの分10枚が焼けまし た。次のお客さんも入ってきて、狭い土間はいっぱい。後から来た お客さんは、地元の人らしく「ほらよ!おばちゃん」とリポビタン の瓶を2本、みやげに持ってきました。

 1枚100円で、私たちは、5枚。あとのお客さんは「うちは3 0枚!」。後から、若い2人連れも並んで、おやきーおばあちゃん の店はなかなか繁盛していました。
 小麦粉とあんだけで作った、香ばしい、おやきでした。


 それから何度か、おやきおばーちゃんのお店に通いました。
 おばあちゃんは、体調を崩し、店におられないことが多くなり ました。

 

(五日市駅から徒歩50分。バスを使うと、荷田子のバス停から5 分。市道三山の登山口で、大岳山の登り口も近い。)




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