奥大日岳 ゆったり花見旅 

2006年8月6日〜8日


 北アルプスの立山・剣御前から北西側に張り出した稜線上にある大日 岳は、訪れてみたいとずっと思ってきたところだった。
残雪が豊富な今年(2006年)、雷鳥平幕営場をベースに、
◇奥大日岳への登山と、
◇立山三山の山裾の沢筋をトラバースする静かな山道をたどるプランで、
のんびりと花見の山旅に出かけてきた。
 好天にも恵まれ、展望と花々を満喫する登山になった。



3日め、一ノ越へのトラバース道の上部から、大日岳連峰を望む。
右の高まりが奥大日岳、左端が大日岳。


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8月6日

東京・自宅(8時55分発)車 → 中央道・長野道経由 → 豊科インター  → 国道148号 → 糸魚川インター → 北陸道 → 立山インター  → ケーブルカー立山駅(15時06分着、15時50分発)ケーブルカー → 美女平 バス→ 室堂(16時40分着、16時58分発)
→ 雷鳥平幕営場(17時35分着) 幕営

8月7日

雷鳥平(6時35分発) → 新室堂乗越(7時04分) → 奥大日 岳(8時25分着、9時05分発) → 新室堂乗越 → 雷鳥平(12時 03分着)
午後、幕営場そばの温泉に入った後、大走谷、小走谷下流(浄土川東岸) の花畑を散策。 幕営

8月8日

雷鳥平(6時27分発) → 立山三山の山裾を浄土川東岸から一ノ越へ登 るトラバース道をたどる → 一ノ越(8時25分着、8時37分発) →  龍王岳T字路・富山大学立山研究室のある高台(9時05分着、9時18分 発) → 浄土山(9時31分着、9時33分発) → 室堂山・浄土山の分 岐 → 室堂(10時25分着、10時40分発)
バス → 美女平 ケーブルカー → 立山駅(11時55分着、12時35 分発)車 → 有峰林道・飛越トンネル経由 → 神岡町・打保地区 → 平 湯 → 松本インター → 長野道・中央道 → 八王子インター →自宅 (18時24分着)

車の走行 往路380キロ、帰路330キロ。
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 8月6日

 今回、ベースキャンプ地に選んだのは雷鳥平幕営場(雷鳥沢キャンプ場)。 この泊まり場は、いつもは通過するだけだったが、カミさんの足が万全でない ため、ゆったりした計画にするため、ここを天場に選んだ。



雷鳥平幕営場。我が家のテントは、「ノースフェイス タッドポール23 コ ンバーチブル」で、今回が初使用。1971年以来、大小あわせて6張りめとなる。
2人用。


 6日の夕方に到着して、管理棟のおやじさんに申し込みに行くと、何泊して も1人500円だという。天場は1辺100メートルほどと広く、浄土川の河 岸よりや雪田脇など、思い思いの設営場所を選んで、静かな条件で泊まることがで きる。
 水は流水が水道で引いてあり、生で飲むより煮沸が奨励されているが、これ も条件がいい。そして、管理棟にあるトイレは、常時、水が流れる水洗で、匂 いで卒倒することもない。
 おまけに、雪田を越えて徒歩6分で、2軒のロッジがあり、なんと温泉に 500円で入浴もできる。
 さらに、天場の周囲は、どちらに歩いても、奥行きが深いお花畑が展開して いる。
 風当たりも、比較的穏やか。設営用の手ごろな重さの石は、そこらじゅうに ある。
 そしてともかく景色がいい。立山をこんなにじっくり眺め続けたことは、な かった。三方から屏風のような残雪の山々に囲まれて、こんな好条件のキャン プができる、真にすばらしい天場だった。

 夕暮れの西の空。赤みに照らし出された立山西面のカールや残雪たっぷりの 谷を眺めながら、初日の夕飯はマーボナス、きゅうりの塩もみ、野菜と豆煮も の、ご飯、コーヒー、幸水梨などだった。

 8月7日

 快晴の朝。
 剣岳へ向かうグループは、テントをデポして軽装で続々と出発していく。室 堂に今朝方、到着したパーティーも、天場の一角を通り抜けて、浄土川の仮設 の橋を渡り、雷鳥坂の急登に向かう。
 テントからときどき顔を出して、そんな様子を遠目に見送りながら、私たち は朝ごはんの時間を楽しんだ。カリカリに炒めたベーコンと、そのベーコンか ら出る油をからめて焦げがつくまでフライパンで焼いたパンと、コーヒーと、カ マンベール・チーズなど。
 朝日が、後立山と剣の稜線を越えて、奥大日岳の当面の岸壁を照らし始め た。

 行動食やカメラの準備も終えて、6時半前に、私たちも出発した。
 新室堂乗越まで30分ほどの緩い登り。ここは、1985年の剣岳登山の帰り 道に、長男を背負って下った思い出の場所。木道が敷かれたが、あのときの記憶 と同じで2ヶ所ほど雪田をトラバースするところがあり、そして花は、あのとき の記憶以上に、延々と続く花畑が展開していた。



新室堂乗越から、眼下に雷鳥平幕営場

 新室堂乗越に登りあがると、眼下の幕営場を大きく取り囲んで、周囲の山々が 明るく輝いている。朝のこの時間帯は、山が、一日のなかで一番、明るい顔を見 せるときだと思う。

 ところが、この稜線歩きの道々、ずっと姿を見せてくれる剣岳は、谷の残雪さ えまだ黒々として、シルエットの中にある。太陽がもう少し南に位置してくれれ ば、あの谷筋も明暗がはっきりと出て、迫力ある剣が眺められるはずだ。立山か ら剣までの雄大なパノラマ大展望を眼前にすることと、のびやかな稜線の花々。こ れが奥大日岳の愉しみだと思う。

 稜線の途中、チングルマの白い花のなかで、ある一帯だけ、花びらに淡い朱色が さしたチングルマがあるのが見つかった。持参した重たい図鑑で調べたら、赤み が差した花びらをもつものは、「タテヤマチングルマ」で、この山域に固有のもの だという。

 大日岳の稜線は、ハイマツやガレ場などをすすむ場所はごく部分的で、それ以外 の道はずっと草原をたどり、花に包まれる。ハイマツや潅木帯のなかでも、いまの 時期はオオバスノキ、コケモモ、クロマメノキなどの花が盛りだし、ツガザクラ、ア オノツガザクラも面をなして咲き競っている。北アルプスの双六岳以北では、こう した規模の大きな花畑はよく見られるが、大日岳の稜線はどこまでも花畑が続くよ うにさえ思えてしまう場所である。2人で稜線をたどりながら、「大雪山とよく似 ている場所だね」と話し合った。
 人が少なめで、静かなことも、またいい。



稜線の高みから、奥大日岳の山頂部を望む。山頂は、背後にある

 稜線上の小さな高みを2つめまで乗り越した場所で、目の前に奥大日岳の山頂部 がどーんと立ちはだかる高みに出た。東面の岩場は70度以上はある。右手の立山 川の側は断崖だ。  ルートは、奥大日岳のこの山頂部に尾根通しにとりつく踏み跡も見える。もう一 本、南面の山腹を斜上していく道も見える。その分岐まで行くと、尾根通しの踏み跡 は通行禁止で、斜上してすすむルートを登りあがることになった。高度はどんどん稼 げる。枯れた源頭の沢筋の横断箇所が続き、落石に気をつける。花は相変わらず、多 い。



山頂部に上がると、立山川の側は雪田が続いて、周囲は花畑が展開していた。
山頂は目前。


 標高2600メートル。登りあがった山頂部は、雪田が稜線のすぐ右手(北側)に たっぷりと張り付き、花が周囲をつつむ、別天地のような場所だった。山頂は目の 前。雪解けで姿を現した草地には、植物の芽吹きの真っ盛り。コバイケイソウも、ハ クサンイチゲもまだ芽を出し始めたところで、春到来をつげるショウジョウバカマも 鮮やかな赤い花を開いている。春と夏をいっしょに見るような場所だ。眼下の日本海 はかすんでいた。

 8時半前、奥大日岳の山頂(2606メートル)着。
 山に囲まれた室堂から、弥陀ヶ原へと続くのびやかな台地が、ここからは一望に見 渡せた。  南を遠望すると、北ノ俣岳、薬師岳、笠ヶ岳、弓折岳、三俣蓮華岳、水晶岳、赤 岳、槍ヶ岳、野口五郎岳などをはるかに望むことができる。

 圧巻は、立山から別山、剣御前を経て、剣岳、そして早月尾根を急角度で落とす、岩稜の大パ ノラマ。剣岳は、黒い谷筋を幾条も落とし、どこから見ても人を寄せ付けない凄みが ある。早川尾根の小屋もはっきり見えた。



山頂の手前からの、剣岳。もやがかかりだした。

 奥大日岳から、大日岳は、あと一走りという間隔に見えている。ここからは小さな、や さしい山容を見せている。一気に行けそうだが、高度差からして登り返しは倍するも のがあり、この次のプランにとっておくことにした。

 2人で4個の桃を平らげ、水分をたっぷり補給して、奥大日岳の山頂を後にした。  帰り道は、引き返してみると、いつもながら、長いもの。花の撮影を楽しみながら、来 た時よりも時間をかけて、花の稜線を楽しんだ。

 12時過ぎに、天場着。
 昼ごはんのあと、温泉(雷鳥沢ヒュッテ)に入り、大きなお風呂、窓の外の立山の眺 めを独り占めにした。この時間帯は、男湯も女湯も他に客はなし。
 午後は、大走谷、小走谷下流(浄土川東岸)の花畑を散策した。別山から流下する大 走谷、富士の折立、大汝山から流下する小走谷は、どちらも幅が広く長い雪渓をかけて おり、真下から眺める姿は圧巻。そこから流れ落ちた土砂が扇状地のように堆積した一 帯では、地下水位も低く、湿性の花畑が差し渡し1キロ前後の広大さで、ひろがってい た。
 立山の良さを再認識させられた、ひとときだった。

 8月8日

 前日午後に偵察した、雷鳥平→浄土川東岸→浄土川源頭横断→一ノ越のトラバース道 を、登った。一ノ越の鞍部までの標高差は、430メートル。距離は2キロ前後あるも のの、2時間近くかけてこの標高差を獲得するのだから、とてものんびりした行程にな る。
 ここも、終始、花が多い。浄土川の東岸の湿原をいったん離れて支尾根にとりつき、登 りあがると、またそこにのびやかな草原が広がって、たくさんの花が迎えてくれた。
 一日に10人前後が使うだけの、ほんとうに静かな道。

 位置を上げていくほどに、行く手の浄土山から、室堂、そして大日岳連峰の眺めが、変 貌していく。山崎カールを真上方向に見る眺めも、独特。立山の最深部にすっぽりと抱 かれて、存分にこの山に浸りきれるルートだと思わされた。



トラバース道の中段、左手の雄山から派生するなだらかな台地をすすむ。前方右手は浄土山

 今日も晴天で、登山者が多い一ノ越からは、龍王山から五色ヶ原へと向かう縦走路に入 る。ひと登りで、富山大学立山研究施設がある、高台の分岐点へ。
 ここからは、五色ヶ原と薬師岳が目の前にある。そして、目の下には、立山カルデラの 巨大な噴火口が落ち込んでいる。
 この高台からは、立山ー剣のパノラマの景観も満喫できた。



浄土山分岐の高台から、立山



同じく、剣岳と、右に別山



同じく、五色ヶ原と、薬師岳、黒部五郎岳

 分岐点から浄土山(2831メートル)へ進み、ここから室堂山分岐をへて、室堂へ下 山した。



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野原 森夫