遠見尾根から五竜岳

2005年9月18、19日 3人パーティー(カミさん、長男と)




小遠見山から五竜岳

 1日め 遠見尾根→五竜山荘・テント泊
 2日め 五竜山荘→五竜岳→五竜山荘→唐松岳→八方尾根
 という1泊2日の計画で、五竜岳をめざしました。
 2日目まではなんとかお天気がもつだろうとの読みで入山したのですが、秋雨前線が出現する 時期にぶつかり、ガスと雨の天気に。
 五竜岳を目の前にして、また遠見尾根を下ることになってしまいました。
 それでも遠見尾根は、後立山連峰の眺めがすばらしく、秋を迎えた尾根筋の紅葉や木の実の姿 も楽しむことができ、楽しめた山旅になりました。



マツムシソウ

9月18日

 大町と白馬をつなぐ大糸線沿いの国道が、神城駅の脇にさしかかる手前に、「五竜とおみスキ ー場」「テレキャビン」の看板が立つ交差点がありました。道標に導かれて左に曲がり、沢沿い にペンションが並ぶ坂道を1キロも登ると、テレキャビンの駅です。
 4人乗りのキャビンに乗って、標高1500メートル余のアルプス平駅へ。
 一帯は遠見尾根の中段に開けた緩い斜面で、冬はスキー場、夏は高山植物園になっています。  ここから15分の登りで地蔵の頭のケルンに立ちます(標高1676メートル)。
 白馬三山が八方尾根の上に姿を現し、正面には五竜岳も堂々と立ち上がって、すばらしい景観 です。

 遠見尾根の登山道はここから始まります。地蔵の頭に上がらずに左(南側)をまいて、地蔵の 頭の先に出るルートも使えます。
 コースタイム70分(私たちは50分弱)で、小遠見山(2009メートル)に登りつきます 。
 ここから眺める五竜岳は、岩山が高く持ち上がり、深い急傾斜の谷が幾つも刻まれています。 姿は剣岳を東から眺めたときにも似ています。
 左手には、鹿島槍の北峰。北壁にはヒマラヤの高山にある襞状の岩溝が幾条も刻まれ、雪渓に は雪がまだたくさん残っています。どの場所から見るよりも、雄雄しさを感じる山容です。



鹿島槍ヶ岳

 遠見尾根はここから、中遠見山、大遠見山、西遠見山と登り・下りが続いて、つめで標高差3 00メートルを一気に登って、稜線の白岳(2531メートル)に達します。尾根の高みの間に ある鞍部のなかには、左右が切れ落ちた場所も数ヶ所あります。小遠見山から白岳までコースタ イムで4時間ほどの長い登高です。
 私たちは、この区間を2回の休憩で、ゆっくり登り続けました。五竜岳は、北東面の岩場に大 きく割菱(わりびし)=御菱(ごりょう)の模様が浮き上がり、間近に眺めるだけに迫力があり ます。

 岩山の眺めととともに目を楽しませてくれたのは、色づく木の葉、木の実でした。
 クロウスゴ(ブルーベリーに似た実)は、尾根筋にずっと分布していました。よく膨らんだ実 をかみ締めると、酸味とほのかな甘味があり、えぐみも感じられます。
 シラタマノキはサロメチールに甘味を添えた味。慣れない味覚にちょっと驚きますが、そうそ うこの味だった、と思い出せばサロメチール味も疲れが癒されるよう。
 仲間のアカモノの実は、酸味がないだけ口当たりがよく、穏やかな甘味。
 この2種類とゴゼンタチバナの真っ赤な実とは、は、登山道沿いをほとんど途切れることなく というぐらい、埋め尽くしていました。目線の高さから上には、ナナカマドの紅葉と真紅の鈴な りの実が続きます。
 登る登山者を応援する、色とりどりの葉と木の実。にぎやかな秋の山道でした。



オオカメノキの実

 オオカメノキも葉が赤く染まりだしていました。赤く成長した実が黒く完熟したものも混じり 、少し甘く、ぬるりとした食感があります。ガマズミ(スイカズラ科)の仲間ですから、毒はな いはずです。
 真っ赤で透明感のある実を、重たげにぶら下げているのは、タケシマラン。熟した実は触れよ うとしただけで、落ちてしまいます。淡い甘味が感じられました。
 マイヅルソウも、白地にピンクのうずら模様の実が、熟すると黒紫色に太ります。味は弱く、 薄く、タケシマランと同様に、2個めでしっかり味を確かめるのは、可愛そうな風情でした。

 一番おいしく、食べ応えがあったのは、7月に濃い赤色の花をつけたベニバナイチゴで、実が 2センチから3センチ大の立派なものもありました。
 秋にさしかかった花の山路も良いものです。オヤマリンドウの群生する場所が、そこここに展 開して、この時期の花の代表種は彼らだと感じました。



西遠見ノ池。五竜岳はガスの中

 平坦な大遠見山(2106メートル)から西遠見ノ池に出るころには、五竜岳には霧がかかり だしました。夏には雪渓が残るこの池からの五竜岳を、始まった紅葉を背景に眺めるのを楽しみ にしてきたのですが、残念でした。池の傍らには、コイワカガミが、まだ青い葉の間に真っ赤に 染まった葉もまじえて、きらきらと葉を輝かせていました。



西遠見山から下り、キレットの先にいよいよ白岳への登り

 西遠見山もわずかの高まりです。キレット状の鞍部を越え、白岳の急な登りにさしかかると、 鎖場が3ヶ所ほど出てきます。五竜岳の稜線は霧が深くなりました。私たちの周囲も視界が奪わ れます。ネバリノギラン、チングルマは、もうすっかり紅葉しています。花が終わったミヤマバ イケイソウは、実の時期もすぎて、黒く腐食し始めました。花茎の先端におもしろい形の実を集 め、黄色に葉を染めたあの植物は、ハクサンイチゲの秋の姿でしょうか。
 ずっと花と木の実の眺めを楽しんで登るうちに、白岳のピークに至り、鞍部の五竜山荘へと行 き着きました。
 途中、何度も息が切れ、また撮影をしてきたために、私が2人からはずっと遅れました。
 テレキャビンの山頂駅を8時45分に出て、五竜山荘前の天場に13時20分に着きました。

 風が出始めていたために、テントはしっかり設営し、石積みで低い風除けの壁も設けました。  一段落して、カマンベール・チーズとクラッカーで、水割りを1杯。
 この日の夜までに、階段状の天場には、1列に13、4張りずつ3段がずらりと並び、それで もスペースが足りず数張りが尾根の登山道脇にまで立ち並んでいました。数えたら47張り。天 場のスペースは幅が狭いために、4人用以上の大型を張ることが出来る場所は3張り分ほどしか ありません。私たちのスペースも風当たりは和らぐ位置だったものの、テラスが谷川に傾斜して おり、頭と足の位置で20センチほども段差がありました。
 連休で五竜山荘(300人収容)も満員に近い状態。ふとん1枚に2人ずつと掲示が出されて いました。夕食も4度、5度に分けてとり、戸外で順番待ちや晩酌をする登山者らがいました。



 夕暮れ時には、わずかに青空が見えたり、満月が一瞬、姿を見せたり。風と霧があるものの明 日の好天を信じて、早い眠りに着きました。(19時就寝)

9月19日

 一晩中、周囲のテントをあおっていた風に雨粒が混じるようになって、目を覚ましました。午 前3時。この天気はちょっと残念です。コーヒーを入れて様子を見ましたが、雨は次第に本降り になってきました。
 5時までに朝食を済ませて、6時にテントを撤収。ラジオの天気予報では、北陸から長野北部 にかけて、秋雨前線にいたる前の雨雲が伸びだしているとのことで、山荘の人は「もつと思った のに、予報よりも早めに崩れだした」と話していました。
 それでも山頂をめざす人たちはいます。
 私たちも、と思いましたが、3人で話して「今度また、良い眺めのときに、来よう」という結 論になり、6時28分に下山を始めました。

 昨日、眺めを楽しんだ遠見尾根は、今日は視界がありません。濃い霧の中、鎖場やジグザグの 下降をして、西遠見山まで下りたところで、雲の下に出ることができました。
 そこからは、断続的な雨の中を、チャンスを見てカメラを出しながら、下降。被写体はもっぱ ら登山道脇の木の実と花です。
 途中、2回の休憩で、10時すぎにテレキャビンの駅に帰りつきました。



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野原 森夫