幌尻山荘の救助は、要請があるまで待つべきだった
   ―――野原森夫の山と自然のジャーナル


FYAMAP(山と展望と地図のフォーラム)への投稿から(2003・8〜11月)

 2003年8月、台風による豪雨のため、20人を超す登山者が北海道・日 高山脈の幌尻山荘に足止めとなった「遭難」事件について、以下のコメント は、山関係のあるフォーラムの掲示板に書き込んだ私の発言です。

 なお、この一件での、事件直後の私の意見は、「遭難パーティーないしはツ アーの会社から、正式の救助要請が地元自治体や警察にあるまでは、放ってお いたら」と、いうものです。この件、すでに台風が通過して天候は回復しており、 小屋には全員が生存。主催者が要請をしないのに、地元関係者が 救助活動の手を出すほどの切迫した緊急性はありませんでした。救助は数機のヘリで一飛び でした。責任ある要請があるまで、1日でも2日でも、待つべき事件でした。
 幌尻岳とは、そういうところです。引率した側、された側ともに、おかれた事態を知った 段階で、自分で責任ある意思表示をおこなうべきだったのです。

 その後、このツアーの参加者がある山の雑誌に「ともに助け合って、救助を 待った」という「美談仕上げ」のレポートを寄稿していました。

 しかし、あれから3年近くたった今日現在でも、私の意見は変わりません。北 大山岳部のパーティーのように、自力で下山する体制がなかったのならば、あの 気象条件のもとで、あの山域に入り込んだのは、無謀登山そのものです。そし て、その後始末はどうであったのかが、問われる事件だったと思います。
 私は、主催者、救助された側の責任ある言明を、まったく耳にしていません。

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幌尻山荘の救助の件、その後は

 今年(2003年)8月のこの事件については、FYAMAPの旧会議室に当 時のツリーがありますが、その後の情報を知りたくて、探してみました。あれこ れ関連情報はありました。

1)日高山脈の日高側の入山ルートは、寸断されたまま。来夏も林道はもちろん、日 高側から徒歩でアプローチするのもむずかしそう。

http://members2.tsukaeru.net/masarus/hyaku/yama8/yama8.htm

平取町による掲示
http://www2.town.biratori.hokkaido.jp/biratori/cgi-bin/news.cgi

2)その後のこの件での議論

 以前のツリーでも紹介されましたが、関連会社の掲示板に、次の書き込みがありま した。
http://www.maitabi.jp/cgi-bin/bbs/yybbs_2.cgi?page=5

>地元の人間の意見として 投稿者:幌尻山麓の人 投稿日:2003/09/10(Wed) 00 :01 No.66  内容の紹介は略します。

3)救助費用をめぐる問題

 この1件ではいろいろなご意見があると思います。私は、正式の救助要請が主 催者からあるまでは、放っておいたら、とまで言ってしまいました。もちろん人 命にかかわることですので、町や北海道の対応として、「原則なしではいけな い」という趣旨の程度ですけれど。
 とくに救助費用の件で、以下、イ)、ロ)、ハ)と順不同で紹介します。

イ)最近、自治体は捜索活動費用の負担に業を煮やしている
 青森県の東奥日報の記事2003年5月31日(土)から
「かさむ捜索費『遭難者側負担を』 本格的な春の山菜採りシーズンを迎え、県 内では入山者の遭難が相次いでいる。遭難発生の度に農作業を中断して捜索に当 たる地元消防団員。苦しい財政事情の中、消防団へ日当を払う市町村。・・・こう した中、県山岳遭難防止対策協議会黒石支部は『遭難者が地元でない場合、消防団 の捜索は最初の一日だけ』とすることを決めた。・・・・消防団員の出動手当につ いては、二十八日に開かれた蟹田町臨時議会でも取り上げられ、「遭難者が町外の 場合は捜索費用を徴収すべきだ」という声が上がった。四月に開かれた県山遭協蟹 田支部の総会でも、今別町から遭難者に捜索費用の負担を求める声が出た。」

ロ)捜索費用は「要請した人が出す」に、変更の動き
 北海道のHTBが、2003年6月3日(火)に放送した内容(同社のHPから)
『山菜採りで遭難 費用負担は?』
 「去年道内では山菜採りによる遭難が75件(82人)発生」したが、いままでは「捜 索は道警や消防が中心で原則として費用の個人負担はなし」だった。しかし、「捜索 が長期化したり範囲が広がると地元自治体にも様々な負担が」あり、「道内の大野町 は捜索費用の一部を遭難した本人にも負担してもらうことに」「100万円以上の請求も あり得る!?」と紹介。
 具体的には「大野町遭難対策に関する実施要綱」がつくられた。
「@調査活動、初動捜索」 「A @の活動で発見されない場合、捜索を要請した ものからの『捜索依頼書』に基づき、「遭難対策本部」を設置し、遭難対策協議会に 要請して出動する。」「捜索活動費用  捜索費用は、要請したものに負担していた だきます。」

ハ)ツアー登山のケース(例)
 こんな規則を承認してもらったうえで、登山を実施しているところもあるようです。あ る県の交通会社関連企業が主催団体です。
 ここには、ツアー内で落伍した側、救助にあたった側の別などはあらかじめ規定され ていないので、実際の遭難の場合は、負担の区分けでもめることも予想されますね。
 それと主催者の責任は、書いていません。

 「コンセプトと申込みの際の御案内  登山ガイドが同行しご案内する本格的な登山コース を、ご案内する会でございます。・・・健脚であれば誰でもご参加いただけますが、ご自 分のレベルに合ったコースを選択してください。・・・途中で引き返す事になっても、お 帰りの際の費用はすべて個人負担となります。・・・国内旅行傷害保険・登山保険はご自分 の責任でご加入いただきます。○交ツーリストでも、保険の取り扱いをしておりますのでご 利用ください。外務員は添乗員として、また山岳ガイドとして乗務いたします。行動中はす べて、安全・保安のため外務員の指示・命令に従っていただきます。・・・遭難捜索、救助 にかかる費用(数百万円)はすべてご自分またはご家族の負担です。○交ツーリストは一切負 担いたしません。」

 やはりとことん、「参加者だけの自己責任」ということでしょうか。この規則が一般的なものと すると、もしガイドの指示で台風下の山荘に入り込んで、動けなくなった場合、ヘリ出動 費用などは「個人もち」ということになります。規則の限りでは。
以上、紹介でした。

  2003・12・2  野原森夫



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