「プロジェクト うなぎ置き針漁」

2004年5月下旬




ウナギの谷。前夜、よどみに仕掛けた「置き針」を早朝にひきあげます

 南関東の谷川で、ウナギの置き針漁を体験しました。もう20年来、この漁を趣味に している、知り合いのトクさんに連れていってもらいました。

 福島県の阿武隈川のやや下流域で育った私には、子どもころに、ウナギ漁の体験や見 聞きが少しありました。
 そのうち、今回、体験した置き針漁は、私の親父もやっていたもので、太く長い木綿 糸に、タコ糸で針を10本ほどずつ結びつけ、ミミズを針につけて、川のよどみなどに 沈めておく方法です。
 翌朝、回収すると、ウナギやナマズ、それから鯉やときに雷魚などがかかっていまし た。
 置き針でとってきたウナギを、井戸のかたわらにマナイタを置き、千枚通しで頭を固 定して、さばく様子を見るのも、子ども時代の楽しみでした。



餌は、アブラハヤ(写真)や、ドバミミズです

 友人のトクさんらの置き針漁は、準備がたいへんです。
 まず、餌採り。
 小魚が多い川にあらかじめ目星をつけておき、今回もアブラバヤ(ウグイの仲間)を たくさん採ってきました。これは、四角形のフレームを網で包み、前後に小さな穴があ いた仕掛けを利用しています。内部に鯉つり用の練り餌の塊をぶらさげ、ハヤが多い川 に沈め、見張っていると、どんどん中に入る。ころあいを見て、引き上げるという方法。
 今回は、このアブラバヤ(体長7〜9センチ)のほかに、大きめのミミズも使いまし た。

 餌をかかえて、めざすウナギの谷へ。
 ウナギは上流から水が流れ込む広く深いよどみ、それも川底や岸に岩場がある場所に います。
 長さ10メートル前後のナイロン紐(直径3ミリ)を「幹糸」にし、これに綿のより 糸をハリスにして結んだウナギ針を、1メートルぐらいの間隔で結びます。ハリスの長 さは20〜30センチくらい。

 ミミズは針に通すように掛けます。
 ハヤは、ハリスの先端を焼き鳥用くらいの細い竹串に挟んで、ハヤの口から腸まで竹 串を通し、肛門から抜いて、ハリスを引き出します。このハリスの反対側にはうなぎ針 を結んであります。肛門側からハリスを引き出し、うなぎ針がちょうどハヤの口元にく るあたりまで、もってきます。
そして糸の先端を幹糸の紐に結びます。うなぎ針、逆さ釣りになったハヤ、ハリス、幹 糸の順で、ぶら下がります。ハヤにはとってもかわいそうですが、こうすると、翌朝ま で生餌になってくれます。

 幹糸には3メートル間隔で小石を結び、セイノ!で、淵に投げ込みます。
 前日夕方にこれを行いました。現場は、深いV字谷で淵やよどみが連続します。膝上 までの渡渉もあります。

 仕事の都合などで、私はすべての作業が終わった夜に、現地でトクさんらと合流しま した。

 翌朝4時すぎ起床。10数本の仕掛けの回収です。
 谷は深く、道路から50メートルほどの高度差を下降し、へつりや渡渉で現場にたど り着きます。



 仕掛けの幹糸が、岸に固定されていて、静かに引き揚げられます。カメラを構えて、 どきどきしつつ見守りましたが、獲物は上がってきません。餌は食われているものや、 残っているものなど、さまざま。

 その後も獲物は上がらず、ついに、第一の漁場のうち、一番当たりが多い場所へ。
 そこは、両岸が狭まり、足元が切れ落ちて、かなり深いトロ場になっています。対岸 の岩場の下部を流れが洗い、水底の地形は複雑そう。水は青く濁っています。トクさん は、「ここは底にも大岩があり、ウナギが身を隠しやすいところなんだ」と説明します。
 トクさんが、この川で最初にウナギを引き揚げたのも、このポイント。安定した実績 がある場所で、つい先日も、トクさんの同好メンバーが1本、引き揚げています。



大ウナギが暴れて、仕掛けをめちゃめちゃにして、逃亡したあと
幹糸のナイロン紐は、粘液でぬらぬらでした


 仕掛けた2本のうち、1本は、外れ。
 もう一本を引き揚げ始めたところで、「おおっ!」と声が上がりました。獲物が上が ったのではありません。幹糸が、握りこぶしのような大きな「糸玉」に、ぐちゃぐちゃ に巻かれて、上がってきたからです。糸玉全体が、粘液でぬらぬらしています。かなり の大物が、石の重りごと仕掛けをグチャグチャにして暴れまわり、ついに逃げた跡でし た。
 すごい。でも残念。ウナギはハヤを持ち逃げし、針はみな残っていました。

 結局、この日は、第二漁場でも獲物は上がらず、「7年ぶりの坊主」(トクさん)と なりました。無念ですが、次回への思いが膨らみます。

 ところで、このウナギの谷は、毎回コンスタントに実績があるところですが、下流に は大きなダムがあります。はるか南の海で孵って、河口にたどりつき、さらに上流へと 遡って来たウナギは、いったいどうやってあのダムを越えたのか? 魚道はないダムで す。
 「大雨の日には、尾根を越えて、上がってくる」「幾つもの沢のダムで水をやり取り し、揚水発電が行なわれているので、それでやってきたのではないか」など、想像は尽 きません。

 私は、子どものころはよく川のウナギを食べました。ところが味はあまり覚えていま せん。
 数年前、四万十川に行ったときに、川舟に乗って、初めて天然ウナギを意識して食べ ました。
 叔父さんが七輪でパタパタとウナギを焼いています。身の幅が6センチほどある大物 で、白焼きにしたあと、まったく甘くない醤油ダレをつけて、焦げ目が少し付くくらい に焼いて出されました。肉がしまって、しっかりとした味があり、口中に染み出すほの かな油は甘く、皮の焦げ目などはそれらが合わさって、なるほど、これがウナギそのも のの味か、と感激しました。
 澄んだ川で小鮎やエビを食べているウナギです。
 ウナギの味は、天然かどうかよりも、水質と餌で決まるという話はほんとうだと思い ました。ほんとうにおいしいウナギは、川と餌を選び、すでに幻に近い領域に入り始め ているのでしょう。

 トクさんが、とにかくうまい。ぜんぜん味がちがうという、ウナギの谷の天然ウナ ギ。次回はぜひ、その姿に出会いたいと思いました。

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 私が体験した、その他のウナギ漁

穴釣り
 ウナギ針に長いタコ糸をつけて、針にドバミミズを付けます。長さ1メートル弱の篠 竹の先(竹の空洞のところ)に針先を固定し、タコ糸の手元を篠竹ごと片手に持ち、糸 をぴんと張ります。
 そして、ウナギのいる街中の堀川(農業用水路)の、石垣の穴(水中)の奥に餌が付 いた針を差込みます。針を奥に置いて篠竹はそうっと抜き取る。
 穴にウナギがいれば、数分としないうちに糸を引き込む。
 ぐいっと糸を引き抜き、針にかかったうなぎを引っ張り出して、すくい網で受ける。
 こんな簡単な方法ですが、まあ、10回の川遊びで1回ぐらいは、釣れました。  ザリガニもかなりかかってしまいます。
 1960年代末期には、用水路は汚濁が進み、ウナギは見られなくなりました。

水抜き
 年に一度、街中の用水路の清掃があります。
 用水路は網の目とはいかないまでも、ある程度、ネットワークになっており、要所に 水止めの板をはめられるようになっています。
 順に水流をさえぎり、水が抜かれていった用水路には、石垣の穴からウナギが出てき ます。1メートルを越すような大物も、小さな水溜りまで出てきます。
 川掃除の日は、あちこちでウナギ! の声が上がり、ウナギにとってはご難の日でし た。

モリ(ヤス)で突き
 盆踊りの夜など、同じ堀川を懐中電灯で照らすと、ウナギが石垣の間から頭を出 して、じっとしています。
 そうっと真上に行って、モリ(ヤス)で首の辺りを突き、引き揚げます。

 

ど(竹を筒状に細長く編んだ仕掛け)
 これは、阿武隈川などのよどみで、大人たちがやっていました。
 入ったら出られないように作った竹製の仕掛けで、直径20センチ、長さ1メートル ほど。中にはウナギが集まる草(思い出せない)と、蚕のさなぎなどを錬った錬り餌、 その他を仕込みます。

増水の水門脇ですくい取り
 親父に連れて行ってもらって、見物した漁。大雨が降る夜、本流も支流も増水すると 、本流から支流の水門へ、あらゆる魚が集まり、遡上しようとします。これを、水門脇 のよどみなどで、網ですくい取る。
 水門の手前はコンクリートの床が張ってあり、水流は浅く広がって流れ、水門脇のよ どみに魚が溜まります。水流は浅くとも速く、見ていて、迫力がありました。
 ウナギだけでなく、鯉、ナマズ、雷魚などがかかりました。

 


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野原 森夫