現場で原始的に燻製を作る

燻製シリーズ その2




北海道・見市川でのイワナの燻製。
沢岸で太い枝で木枠を組んで、スモークした。

 渓流に入って、釣れたイワナを持ち帰るときなど、生のままでは保存がききません。日帰りなら ば、腸わたをとって、塩をして帰ることもできます。でも、泊りがけのときは、現場で焼き干し したり、燻製を作って、持ち帰ることになります。
 以前、朝日連峰の沢を登ったとき、このときは沢の遡行が目的でしたから、時間が限られ ました。初日に釣ったイワナは、河原で燻煙しながら半焼き干しにし、翌日はこのイワナをかついで 遡行。2晩目に野天の風にあててさらに干し、家に持ち帰ってから燻製にしあげました。

 なんといってもおいしいのは、現場で、10時間ほどもかけて、燻製に仕上げてしまうことです。 この場合は、温燻(焼けない程度の60〜100度程度の温度)という方法を心がけます。水分が 程よく残って、適度に身がしまった状態に仕上がります。日程に余裕があって、初日に大漁に なってしまった場合などは、ぜひ挑戦したい保存・調理です。

 私の師匠は、山野弘和さんで、水産学部の出身。知床などで何度もやってきた、原始的な 燻製作りを、我々に手際よく指示して、うまく仕上げてしまいました。

 まず、太い枝でしっかりした焚き火を始めます。並行して、大急ぎでイワナの腹をさばいて、 これをまとめて塩水(時間がないので、かなり濃い目)に漬けます。家でやるときは、月桂樹の葉だの、 タマネギだの、ワインだのと、いろいろ加えます。が、現場では、それらはないし、なくても本当に おいしく仕上がりますから、大丈夫です。
 この作業が終わったら、今度は太めのしっかりした枝を4本用意し、針金(何かと必需品) で上部を縛って、高さ1・3メートルほどのフレームを組み上げます。中段には補強と、大きな イワナをのせる棚づくりのために、横棒も組んでおきます。

 1時間ほど漬けこんだら、イワナを取り出して沢の水でさっと洗い、余分な塩を流します。そして 菜ばしほどの太さの、できるだけまっすぐな枝を何本か用意して、これに頭を上にしてイワナを 吊るします。
 沢などでは、何もないので、イワナの目玉を横につき通して 吊るします(写真上の場合)。ちょっとかわいそうですが。キャンプ場ならば、針金(太め)であらかじめS字 型のフックをつくっておいて、これで イワナの頭部の堅いところを引っ掛けます。フックの先をペンチで斜めに切断しておくと、先端 が尖っているので、作業が楽です。

 ほんらいは、ここで風乾の行程となります。現場では、これは省略。
 フレームを焚き火のおき火をまたぐ形で、設置し、フレームにイワナを吊るします。
 火は、炎を上げるのは禁物です。ごく弱いおき火でいいのです。イワナは、輻射熱で もけっこう焼けてしまって、シッポが焦げだします。また焼け煮えると、身が軟らかくなり、頭部と胴体の間で 切れて、火中に落下してしまいます。ごく弱火、とくに最初は、ゆっくり干していくような感じで、皮の表面が 乾いて、水分が抜け始めていく様子を見る。これが、肝心です。焼けてしまっては、燻製の味は失われます。



キャンプで燻製をつくる

 写真上は、子どもの学童保育クラブの父母会主催のキャンプのときに、同じ方法で ヤマメの燻製をつくっているところ。このときは、角材もあり、棚に大きなバーベキュー網をセットして 落下防止にするなど、道具立てがそろっていました。ちょっと見にくい写真ですが、枠組の構造と魚の 位置はわかると思います。

 1時間弱で、イワナの体表を濡らしていた水分が乾きだしたところで、燻煙を始めます。  枠組み全体を、大きなフキの葉を何枚も使って、煙をためる覆いとします。(キャンプの ときは、アルミ・ホイルが良い)
 そして、おき火にチップ(鉈で刻んだ木片)をくべます。チップの樹種には気をつけてください。杉や松だだめ。 ブナやミズナラ、栗、柳などを現地調達します。きのこがよくつく樹種は、いっぱんに燻煙材むきです。



煙がよくこもるように、枠組全体をフキの葉でおおう

 枠組をおおったフキの葉は、どんどん水分が抜け、乾燥して、着火しそうになりますから、様子 を見て補充します。
 燻煙材のチップは、8時間ほど続けると、かなりの量を使います。夜にならないうちに、しっかり 確保しておいて、鉈で削ってはおき火に加えます。おき火は、途中で弱くなりますので、これも 太い枝を順次、補充します。
 イワナの水分が抜け、表面にスモークの色が付きはじめると、焦げやすくなります。火力は十分、 注意します。
 イワナの皮がしわしわになり、肉の模様が皮に透き通って見えるようになったら、だいたいできあがり です。あめ色の、美しい燻製です。昼から作業を始めても、夜中の12時くらいの時間になっているで しょう。(キャンプなどで、食べる人が待っているような条件なら、温度や煙の量を加減して、出来あがり を早めます。)

 火は、弱い熱気があるくらいにして、朝まで夜風にあてて、おきます。
 ずっしり重い燻製をかかえて、沢を下るのは、楽しみがふえて、いいものです。
 キャンプでこれを作ったときには、「燻製の本当の味と香りを、初めて知りました」という、うれ しい感想が出ました。



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野原 森夫