ポントナシベツ川のアメマス
1980年8月

 秋風がたち始めた八月末、北海道留萌市在住で、学生時代の つり友だちの、山野弘和氏とと もに、夕張山系ヘルアーつりに いきました。ゆったりと流れる 渓流で、久しぶりに北海道なら ではの大物アメマスの、ズシン とくるヒットの感触を味わい、 楽しい釣行となりました。





ポントナシベツ川にて。1980年8月


 八月二十二日早朝、留萌を車 で出発した私たちは、芦別市ま で二時間半、さらに林道を一時間ほどさかのぼって、芦別岳西南の芦 別湖へ着きました。めざすは芦 別川の大イワナでしたが、 芦別川はこのところの雨のため 増水していて、魚影も薄く、ニ時間ほどつりのぼっても魚の追 いがありません。予定を変更し て、夕張岳東面のトナシベツ川 へ車を走らせました。

 芦別市から国道38号号を狩勝峠方面へ車で1時間ほどで金 山町へ。夕張岳から流れるトナ シベツ川は、この町で深い渓谷となって空知川に合流していま す。林道入り口にある金山営林 署で入林許可を受け、途中にあ る車止めチェーンの錠の番号を 教えてもらって入林。私たちは トナシベツ川支流のポントナシ ベツ川(通称森田の沢)をめざ すことにしました。

 林道はバッタが大発生してお り、夏の終わりを感じさせま す。車を走らせると、のんびり 選んでいたキタキツネやエゾシ マリスが、ヤプへ飛び込みま す。ポントナシベツ川林道は、 金山林道と分かれて6キロほど登 った桔梗橋が車止めです。

 ここを幕営地に決め、さっそ くつりのしたく。「今晩のおか ずに」と、夕暮れ間近のポント ナシベツ川へ入渓しました。川 は澄んでいます。

 山野氏の仕掛けは、ライトア クションロッド1・6メートルに小型 のスピニングリール、ラインは 4ポンドテストで、ルアーは銀色系 のスピナー3・5グラムです。私は 同じロッドに、大物を期待して6ポン ドと太めのライン、ルアーは、金色 の5グラムのスピナーを使うことに しました。

 橋の下で支流が合流するゆ ったりとしたポイントに、まず 私がルアーを投じました。大き なポイントなので、初めは両へ りを攻め、三度めに20メートル 遠投して、流心の深みヘルアーを 沈めました。リールをいくらも 巻かないうちに、ググッと竿 (さお)をしぼり込む大きな手 ごたえ。暴れまわるような激し い引きではありませんが、魚は なかなか深みから姿を見せません。浅瀬へ引き 寄せて両手で大きな魚体を押え つけました。

 体長36センチの見事なアメマス (エゾイワナ)。この程度の大 きさには驚かない山野氏です が、胴まわりが24センチグラマーな肢(し)体には、びっくりしたようでし た。山ドジョウとさえいわれる エゾイワナにしては、こんな型 はほんとうに珍しいものです。 後で腹を裂くと、バンパンに残 った胃袋から、バッタが23匹も 出てきました。アメマス特有の オレンジ色の節子も出てきま した。つり人はこういうとき、だ れしも感傷的気分にひたります が、背に腹はかえられません。

 日没前に、25センチクラスが3匹上がりました。岸辺の砂州に は、中型のヒグマの足跡があり ました.

 アメマスはサッと塩をふって 水を抜き体をしめたあと、たき 火でみそ焼きにしました。筋子 はみそ汁のおいしい具となりは てました。たき火が消えると、 すばらしい星空。久しぶりにヒ グマを恐れての、北海道での幕営 しました。

 翌日は、腰まで水につかった り、高まいたりしながら、X字 型の渓谷の下流部をつりまし た。山野氏はフライ・フィッシ ングにきりかえました。午前中 までで釣果は6尾でしたが、澄んだ 水中からルアーを追うイワ ナに、心地よい緊張感を味わい ました。

 好釣り場で知られるトナシベ ツ川も、シーズンは終わりに近づい たようです。三ケタの釣果 も珍しくない北海道の渓流釣り にしては数の出ない釣行となり ましたが、美しい渓相、白い腹 をくねらせてヒットするエゾイ ワナの感触を楽しんで、私たちは山を下りまし た。



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野原 森夫