朝日連峰・八久和川のイワナ釣り

1985年8月  野原、山野、吾妻

山行・遡行記録は、東北の山にあります。


 東北・朝日連峰の中でも険悪な沢の一つ として知られる八久和(やくわ)川を訪れま した。減水気味の澄んだ淵に群れる型の良いイワナたち。 私たちも深い淵に飛びこみ、泳ぎのぼり、みちのくの秘渓 の涼しさを満喫してきました。

 最上川水系の八久和川は、下流の深い廊下帯と上流部と はサオを振る釣り人もまれで、八久和の大イワナと して知られる型の良いイワナがすんでいます。

 鹿児島、東京、福島から集まった私たち3人は、日程の 都合上、上流域だけをねらうことにし、登山道を使ってい ったん天狗角力取山(1376メートル)に登り、八久和川へ下 降して入渓しました。テントを張り終えたのは8月4日午後4時すぎ。水面を飛びかう トンボの群れをめがけて、ライズするイワナの姿が見られま す。幕営地(標高720メートル)の付近は渓相は穏やかで、大 きなトロ場の好ポイントが上流にも下流にも続いています。

 山野君は上流ヘフライで、私と吾妻君(福島)はルアー釣りで下流 へと分かれました。

 フライの山野君は、川幅いっぱいの大きなトロ場に近 月増した。深みに逃げる イワナが1尾、2尾。上手の落ちこみにフライを落とす と、岩かげから魚影が水面に飛び出してきます。軽く合わ せて引きよせると、27センチの良型です。

 次の淵では、群れている魚が見えるのに食いません。や やスレているようす。

 夕暮れどきで、すっかり薄暗くなった大淵の好ポイント にも、15メートルほど体を離し、下流側から遠投です。一瞬、 フライが水にはじかれたようになり、サオを立てて合わせ ると30センチのイワナでした。山野君は、1時間半ほどで26〜 30センチのイワナを4尾(小さめの6尾は放流)。

 ルアーの私は、29センチを頭に14尾でした。ルアーは、 投げるごとに3、4匹のイワナが追ってきますが、どうもガツン と食い込んでくれません。意外に、大きな淵よりも瀬の小さなポイント に食いのいいイワナがいました。

イワナは、3尾は夕食のおかずにし、残りは開きにしたあ と、塩水につけて体をしめてヤグラにつるし、煙でいぶし て干し上げました。このイワナは家に帰ってから、燻煙 器でじっくりいぶし、おいしい燻製に仕上げました。

 翌5日は、幕営地から標高差700メートル以上を登ります。 オツボ沢出合いの廊下と小鱒滝で二回高まきしたあと、直 径12、3メートルの大きな丸い滝壷をもっ呂滝へ。深いよどみ で、たくさんのイワナがのんびりと泳いでいます。

 この滝からは渓相は厳しさを増し、私たちも泳ぐイワナ をながめながら、登りに専念しました。水流が細くなった沢 にこれまでより大きなイワナの姿が目につきはじめまし た。魚止めの滝が近ついています。ここまでくると釣り 人が入るのもまれで、イワナは警戒した動きもあまり見せ ません。36、7センチの大型が、淵の底でゆらめいていま す。ここまで遡(さかのぼ)ってきたイワナ を釣るのは酷かなと思うし、だいいち、遡行に 時間がかかってゆっくりしてはいられません。 足を止めてはイワナの奔放な泳ぎに見入りました。

 魚止めの滝を越すと沢は核心部です。釜を泳ぎ、滝を登 って、高度をかせぎます。ことしは雪渓が小さく不安定 で、悪場が顔をのぞかせていたため、途中、左から入る枝 沢へ逃げ、連続する小滝を登って夜8時近くに稜線の 一角にぬけだしました。

 干したイワナを背負い、満天のキラ星を見上げての、夜 の稜線歩きでした。




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    山の便り、大地の恵み (野原森夫)  
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