釈迦ヶ岳から富士、南アルプスのパノラマ大展望


2007年1月




釈迦ヶ岳の南西面。下山時に日向坂峠からの林道の下りで 

 甲府盆地を中央道で走るとき、気になっていた三角錐の山がありました。御坂山 塊の釈迦ヶ岳(1641メートル)です。
 周囲の丸みがある山々のなかで、きりり と尖ってランドマークのように目立つ山容。とくに南西側の稜線は50度ほどの傾 斜で崖状に落ち込んでいます。
 あの、てっぺんでは、きっと、周囲さえぎるものの ない展望が開けているのでしょう。大きな空が待っているのでしょう。登るならば、空 気が澄んだ季節がいい。
 1月末の好天の日に、思いがかなって釈迦ヶ岳に登ってきました。葉が落ちて抜 群に見通しがよい樹林のコースと、ちょうどいい塩梅にそのルート上を装ってくれ た雪化粧とが、念願の山行きを盛りたててくれました。

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◇今回のアプローチと行動タイム

 今度の山行では、前日に、富士五湖の本栖湖から20キロ余り富士川の谷へ下った下部温泉 に泊まって、翌朝、精進湖へと登り返し、登山口の芦川(あしがわ)村へ移動しまし た。

 行動タイム

身延市・下部温泉(9時25分発)→芦川村・上芦川登山口(10時45分着、11時 13分発)
→林道終点(11時32分)→稜線の道標(11時58分)→檜峯神社分岐→釈迦ヶ岳 山頂(12時31分着、13時17分発)→府駒山(13時48分)→すずらん群生地 登山口への分岐(14時03分)→日向坂峠(どんべえ峠)・蕪入沢上芦川林道(14時 10分)→すずすらん群生地登山口・大駐車場(14時30分)→スタックした車の脱 出作業→上芦川登山口(15時06分) 車で林道をもどり、スタックした車の牽引・脱出作業。無事、救助!
上芦川登山口(15時35分 発)→新鳥坂トンネル→中央道一宮・御坂インター(16 時15分)→中央道・八王子インター(17時10分)→自宅(17時23分 着)

 アプローチ
 芦川村へは、車を使う場合、一般的には、中央道の一宮・御坂インターで下りて、新鳥 坂トンネル経由で40分ほどの道のりです。

 下部温泉の宿で妻が見つけた地元紙の「山梨百名山」のスクラップでは、連載の早 い回に釈迦ヶ岳が登場していました。山頂から甲府盆地を一望すると、とても近くに 街が望めるのに、いざ登山口へ行こうとすると、この山の遠いのを実感させられる。そ んな紹介が、記事にはありました。
 釈迦ヶ岳は、バスの便が悪く、登山口までは確かに苦労させられます。しかし、車 を使えば、中央道の一宮・御坂インターで下りて、芦川村も、その反対側(北側)に ある檜峯神社へも、40分余りで到着することができます。
 私たちは、この時期の積雪による難渋を避けて、南面の芦川村から入山。2本の登 高ルートを上り下りに使って周回するコースを選びました。1月にこの山に登るに は、これは大正解でした。

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今回のルート。ハンディGPSで記録した経路を、赤いラインで示しています。
図の左下の上芦川地区の登山口から入山しました。下山は、日向坂峠経由で林道
を下降。釈迦ヶ岳西側で稜線に出る手前で、25000分の1地形図の登山道と、
実際のルート(踏み跡)が少しちがっているのがわかります。 




稜線への登り。明るい雑木林 

 上芦川地区の登山口(標高1125メートル)は、「すずらん群生地」(大駐車 場)の登山口よりも、2キロほど手前にあります。ここには、駐車場はありません。し かし、林道がここだけ長さ30メートル、幅3メートル分ほど広げられており、その 範囲ならば数台の駐車スペースがあります。
 11時13分、「上芦川登山口」を出発。幅2メートル余りの舗装された作業道を 登ります。日陰では数センチの積雪があります。作業道はジープや無限軌道車のこと だけ考え、20度前後の斜度の場所でも、最大傾斜線をとって、どんどん登っていき ます。
 春もそこまで、というお天気で、道の脇にはタラの木も日差しを浴びて、気持ちよさ そう。スミレの葉(根生葉)もみずみずしい緑色です。

 20分足らずで作業道は終点に。「釈迦ヶ岳山頂へ60分」の道標から、登山道に なりました。
 今度は、明るい雑木の林を、ジグザグに登っていきます。稜線に出るまで、道標は 途中に1本あっただけ。落ち葉や雪の上を、踏み跡を選んで、ぐいぐい登ります。石 を落としたら、そのまま転がっていくような斜面です。私の足首にとってはこの曲げ 角度は久しぶりの体験です。

 30分とかからずに、釈迦ヶ岳と、その西隣りの神座山(1521メートル)をつ なぐ鞍部に出ました。
 ここからは、標高差150メートルの急登です。積雪は10センチ足らず。夕べに新 雪があり、それが凍結はしておらず、足場は安心です。急な場所では石や木の根が露 出していて、ザックに用意してきたアイゼンは不要でした。途中、ロープを架けてあ る場所も、傾斜はさほどでなく、安心しました。

 神座山の高度を超えたあたりで、南アルプスの全山が鮮やかな姿を現しました。これぞ 銀屏風。気温の割には空気が澄んでいます。八ヶ岳、奥秩父もまずまずの鮮明度です。



 



山頂から、富士山 

 12時31分、釈迦ヶ岳山頂に上がりつきました。
 いやあ、富士山がおっきいなあ。5合めより下、3合目あたりの樹林まで、御坂山塊 の上に姿を現しています。想像をはるかに 超えるボリュームと高さです。別格の存在感。雪面が鏡のように光を反射させています。



金峰山。五丈岩が見える 

 その手前左に、黒岳、三ツ峠、本社ガ丸。奥多摩の稜線をはさんで、甲武信ヶ岳、北奥 千丈ヶ岳、金峰山、瑞牆山。
 八ヶ岳と甲斐駒の間、はるか彼方には北アルプスも見えるはずですが、今日は北陸方面 に雪雲がかかりだして、視界は諏訪湖周辺の山あたりまででした。
 眼下には、甲府盆地が丸見えです。韮沢付近から、勝沼あたりまで、盆地というよりも 平野のようなゆったりした広がりは、これも予想外でした。



南アルプスのパノラマを撮影中 



赤石岳(左)と、悪沢岳(右) 



間ノ岳(左)、北岳(右)、仙丈ケ岳(右はし奥) 

 この鋭鋒は、どの斜面もすっぱりと切れ落ちていました。そして、期待通り、360度 のパノラマ大展望。大空の中に自分がいるような、独特の世界でした。
 私たちは、撮影と眺めを楽しみ、おいなりや、草だんご、八朔みかんでお腹を満たし、お 茶もごっくりと飲みました。
 山頂には、「今日、初めて人に会った」という2人連れの男性がいました。すずらん群 生地の登山口から登って、帰途は往路側の尾根を引き返し、日向坂峠(どんべえ峠)へ 下りるというので、周回コースの私たちと方向も一致。いっしょに下山することになり ました。



山頂の2体の地蔵 

 男性の1人は、百名山を完登し、いま200名山と300名山に挑戦中とのこと。一昨 年に北海道の9つの百名山に18日間で一気に登ったと聞いて、驚きました。九州・四 国の百名山も同じ年に、同じ連日登山で登ったとのこと。もうリタイアされた年代です が、そのタフさに驚きました。

 聞けば、2人は、すずらん群生地の登山口にたどりつく手前の林道で、車が雪でスタック し、とりあえずそのまま登ってきたそうです。「4人で押せば動くかもしれないし、それ でもだめなら私の車で引き出しましょう」などと話しながら、雪の尾根を下りました。



山頂の東側、尾根を下降する男性2人。斜度は西側とほぼ同じだが、短い 

 この尾根は、山頂直下だけは2箇所の固定ロープがあり、ヤセ尾根状です。アイゼンは 下降にだけは、使った方が安心。しかし、そこ を下りてしまえばのどかな尾根歩きになります。登ったルートよりも、ずっと足場もよ く、下降にはとくに向いています。
 府駒山(1562メートル)の手前では、振り返ると、釈迦ヶ岳の南西面の屏風岩が、険 しい姿を見せていました。その府駒山から10分ほど先に、2人が上がってきた「すず らん群生地」からの登路が分岐していました。



ふりかえると、釈迦ヶ岳がよい姿 

 14時10分、日向坂峠(どんべえ峠)に降り立ちました。ここは、御坂山塊から釈迦ヶ岳 へと張り出した尾根を、「蕪入沢上芦川林道」が乗り越している地点。立派な舗装道路 で、ここまで冬でも車で上がることができます。
 そこからは、斜めに傾きだした日差しを浴びながら、ソリで滑りたいような新雪のを踏み しめて、のんびりと下降しました。

 すずすらん群生地登山口(大駐車場そば)に、14時30分着。その先の傾斜のあるカーブ に、スタックした車が止まっていました。車輪が道脇の雪がやや深い場所に入り込んでい て、人力では脱出はならず。2キロ下の私の車まで急いで下りて(15時06分)、今度は 車で舞い戻りました。

 シュリンゲをつなげて牽引し、脱出作業は無事、成功!

   上芦川登山口を、15時35分に出発、鳥坂峠を「新鳥坂トンネル」で越えました。そこか らは、釈迦ヶ岳の頂から見下ろした甲府盆地へと、ぐんぐんと高度を下げていきます。庭先で ミツマタの蕾が大きくなったのに目をとめたり、紅梅の鮮やかな色に声を上げたりしなが ら、中央道のインターを目指しました。

(北面の檜峯神社へ下降する道の分岐点が、釈迦ヶ岳の西側尾根の登山道にありましたが、こ こは悪路のため通行止めの看板が出ていました。
 御坂山塊は、普通の冬なら数十センチの積雪もいつものことです。釈迦ヶ岳の難所を考えると 、この時期にはアイゼンを用意するのが無難です。)



地図をクリックすると、大判の画面が出ます。芦川村が設置した案内板 






 
山の便り、大地の恵み (野原森夫)  
http://trace.kinokoyama.net/