逆川を遡行して、川苔山へ
     1999年6月13日   家族4人

◇コース   東京の西多摩・自宅(5時55分)→川苔谷・下降点(7時05分、荷 造り、入渓地点捜しで手間どる、7時55分)→逆川出合(8時00分、ワラ ジを付ける)→二つめのゴルジュの上の木橋(9時35分)→10メートル滝 上のウスバ林道(10時25分〜11時15分、昼食)→右股20メートルの 滝上(11時39分)→舟久保・登山道(12時20分)→川苔山山頂(12 時40分〜13時00分)→百尋の滝(14時05分)→川苔谷・下降点(1 4時40分、15時05発)→自宅(16時10分)

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岳彦(右)と峻二


 入渓点への踏み跡を下降して川苔谷に降りたってみると、川苔川は暗い淵を 水が勢いよく流れ下っている。下流は潜滝の深い淵、上流も函が連続する地形 が続いている。逆川は遡行が困難なこの川苔谷の、100メートルほどしかな い遡行しやすい区間に、合流してきていた。やさしい沢登りコースと思って やってきた私たちは、本流の川苔谷の迫力に圧倒されてしまう。逆川の出合は 傾斜があるガレの押し出しで、沢幅は3、4メートルほど。

 今回は、二男の足がまた育って、私の渓流シューズをゆずってしまったの で、久しぶりにひっぱりだしてきた地下足袋に、ここでワラジを着ける。待た された子どもたちは、「どうして、最初からワラジをはかなかったのさ?」と 聞く。「ワラジはね、こうやって、水でよく湿らせてから着けないと、すぐに 切れるのさ」と平らな岩に濡れたワラジをパンパンたたきつける私。

 子どもたちは、渓流釣りで沢に入る体験は何度か積んでいるけれども、通し の遡行を目的に沢に来たのは、今回が初めて。逆川は、初級・入門の短い沢だ が、滝の少ないところが多い渓流釣りの沢に比べれば、今日はちょっと手強い かも。シューズとヘルメットで身づくろいをして、二人とも緊張気味だ。妻 は、釣りのほかに北海道の沢も少し体験しているので、落ち着いたもの。

 登り出してすぐに小滝が連続してあらわれ、右からまく。その上に2段11 メートルの滝があり、これは左からまき、次に間隔をおいて出てくる幾つかの 小滝は水流をとりつく。地下足袋は、親指と人指し指の間にワラジが食い込ん で痛い。水も冷たく感じて調子がでなかったが、登るにつれて体も足もしだい に温まってきて、ジャブジャブ進むのが気持ちよくなってきた。

 子どもたちは、ナメ状の小滝もヒタヒタと足をすいつけて登っていく感じ が、うれしくてたまらないという感じだ。小滝を水線通しに直登するのも楽し いらしく、「お父さん、沢登りって、おもしろいね」と息をはずませている。

 イワナがいないかと少し期待してきたが、残念なことに魚影はほとんど見ら れない。一度だけ中流で見たのは、稚魚1匹だった。途中でお腹がすいたの で、フルーツゼリーと大福もちで一服した。谷の上、樹木越しに見上げる細い 空は、良く晴れている。下界は今日もさぞ暑いだろうが、谷底の私たちは、涼 しすぎるくらいだ。

 

 作業の踏み跡の小さな木の橋が沢を横断したあと、ナメ状のきれいな沢床に 小滝が続く場所に出る。ほとんど、水流通しに登ることができ、ルンルン気分 で高度を上げていく。不意に、先を行く長男が滝の脇のへつりから、小さく高 まきに移ろうとしてバランスを崩し、「わーっつ」と大きな声を上げて空中で 一回転し、滝壷に「ドボン!」と落下した。上で妻がはははっと笑っている。 「お前にカメラを持たせないで、良かったよ」という私。こんなに冷たい言葉 を浴びせられても、長男は「いやあー、あせった。はははっつ」と笑い返す。 それにしても、落ちた下が水でよかった。

 二男の体が、胸までびしょ濡れだ。滝にとりつくときに、体をへばりつける ので、水をいっぱい浴びてしまうためらしい。「寒いよー!」としきりに訴え る。体を岩から離せ、とり付く前に足場をよく確認しろ、体を立てて手はバラ ンスをとるために使うんだ、などとアドバイスするが、怖くてどうしても体が 岩にしがみつき加減になる。妻は、「腕力が足りない。体をずり上げることも できないんだから」と下山してからいったが、私は、妻の腕力と脚力を再認識 した。

 高さ2〜4メートルほどの小滝がほとんどで、その中にハング気味の滝や表 面が磨かれている滝が、ときどき混じる。これはいけそうだと判断したもの は、そのまま登り、子どもたちには難しそうなのは自分の見せ場だけつくって 迂回させる。その一つに3段15メートルの滝があり、上段はパイプを縦切り したようなトイ状で、大股開きしてフリクションを効かせ、ずり上がった。ま だまだ息子たちには、負けるわけにはいかない。ザイルを持ってこなかったの で、高さがあって落ちたらまずい滝は、高まきする。

 幾つの小滝を越してきただろうか。谷いっぱいに広がった壁が目の前にあら われた。高さは10メートルほどで、水流の右手にホールドの多いルートがあ る。傾斜は70度くらいか。この高さだと、確保なしでは安全でない。左から 高まくと、出たところが「ウスバ林道」と呼ばれる作業用の踏み跡だった。1 0時25分、途中、2度の休憩を入れて、2時間余りで、逆川の行程の7割を 登ってきたことになる。

 昼食は、おにぎりとあったかいラーメン。そして、担ぎ上げてきたスイカ。 山菜のミズ(ウワバミソウ)がいっぱい生えていたので、それをラーメンの具 に添えた。

 後から、ザイルを装備した若い二人の男性が滝の直登ルートで登ってきた。 その後から50代の単独行の男性が迂回ルートであらわれ、続いて2人パー ティーが登攀装備で滝を登ってきた。ハーケンの音がしたから、バランスが難 しいところがあったのだろうか。

 後を追って出発する。すぐ上で二股となり、ヤブがなくてツメが楽な右股を いく。水量はがくんと減った。小滝が2、3あったあと、か細い水流の2段の 滝があらわれた。高さからいって、これが20メートルの滝か。水が少なく て、迫力がない。左から高まく。浮石が多い急な斜面で、落ちたらあぶない。 ここだけは、なれない初心者がいる場合は、ザイル確保が必要だと感じた。

 滝の上でもう一度、沢は二股に分れ、水が涸れた。濡れた足を早く解放して あげたくて、ここで登山靴にはきかえ、登山道の下りにそなえる。
 沢型をたどって、舟久保の登山道に12時20分に達し、そこから登山道を 川苔山に登った。

 12時40分、人がいっぱいの川苔山の山頂着。100人ほどの人が、思い 思いの場所で弁当を広げたり、体を休めている。葉が茂っているので、展望は わずかな透かし見だけ。三ツドッケ、鷹ノ巣山、御前山、大岳山など、かすん で見えるのは近くの山だけだった。山頂で、私たちを追いぬいていった若い二 人パーティーに会った。左股から山頂を直登するコースをとったが、水が涸れ てからがブッシュが多くて手間取ったとのこと。

 13時山頂発。ガクアジサイの仲間、まだ葉だけのトリカブトなどが見られ る山道を下り、百尋の滝をへて、川苔林道を下る。このコースは長男が1歳の ころに残雪を踏んで登ってきたところで、妻としきりにそのころの思い出話が でる。14時40分に、車を止めた竜王橋の近くに着いた。

 「おもしろかったよ」という長男、「魚がいなくて、せっかく持っていった 竿が使えなかった。今度は釣りができる沢に行こうよ」という二男。トレーニ ングも兼ねた山行だったが、次の沢や、夏の縦走の難所のクリアにも、いい体 験になったと感じた。





山の便り、大地の恵み (野原森夫)
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