菜畑山から南アルプスの展望
1998年3月15日、16日


菜畑山の南西の展望地点から、 南アルプス(左から、北岳、鳳凰三山、右端に甲斐駒ケ岳)

 今年は河口湖で1メートルを超す積雪になるほど、雪が多い冬だった。居住地 のあきる野市でも、1、2月に何度も大雪が降り、40センチを超したこともあった。
 そして、残雪が近郊の山々を厚くおおったままの、春。山梨県の道志山塊の 菜畑山へ、南アルプスを撮影しに登ってきた。私の山仲間のなかで、 ここから南アルプスが遠望できるという話になって、「それなら、行って確かめて こよう」ということになったのが、思い立ったいきさつだった。

 3月15日(日曜日)はあいにくの天気で、展望はどうかなという曇り空だった。 雪で林道がかなり埋まっている 様子なので、どんな具合か、とりあえず確認しておきたい。展望だって、一回では そう条件が恵まれるはずはない。とりあえず、偵察でもと、妻と二人で車を走らた。

 山中湖へ行く国道を離れて、菜畑山へむかう林道にさしかかると、山仲間から聞いていた畜産農家 があり、すぐその上で車は雪の上を走らされた。20センチほどだった積 雪は、林道をさらに300メートルも進むと40センチを超し、やがて、雪で押し倒された倒木に 前方を通せんぼされた。
 木をずらせて、ぎりぎり車の幅だけの間隔をあけた。通り 抜けようとしたら、前輪が雪の上で滑って、左下へずずっと滑っていく。コトロール不能 のまま路肩の雪面から外れて、ズシーンと前輪左が脱輪してしまった。
 車は自力ではまったく動けない。
 林道終点から30分も歩けば、すばらしい展望の場所 に出るなどと言われてきたのに、家へ無事かえれるかどうかという窮地に 立ってしまった。

 途方に暮れて、とりあえず知り合いに電話しようと、下の畜産農家 まで歩いていく。話してみたら、畜産農家の方々がとても親切な人たちだった。男性の一人が、 「そりゃあ、自力では無理だ」といって、ブルドー ザーで現場までの雪道を登りだす。奥さんらしい人や同僚の女性も、林道を駆け上がる。 我が愛車のお尻のフックにワイヤーを引っ掛けて、ブルドーザーを バックさせて、車を引き上げてくれた。
 ありがとうございます! (帰ってから羊羹をお礼に送りました)

 気を取り直して、菜畑山をふたたびめざす。脱輪の場所から上は、ますます 積雪は深い。とても車では進めないので、車をデポして、雪の林道を上がる。
 残雪は、50センチが60センチになり、林道終点近くでは80センチほどにもなった。

 林道終点には無線中継所の施設がある。ここから、登山道へ。
 20分ほどの短い行程で、菜畑山の頂上に到達した。車をデポした場所から2時間弱。

 天気はあいかわらず曇りで、遠くの山はぜんぜん見えない。雪をまとった大室山 が、ただただ立派。
 帰りは、フキノトウをさがしたりして、遊び遊び林道をくだった。

 その夜、山友達と情報交換をし合って、翌朝の再挑戦を決めた。もう3月半ば だから、明日の晴天を逃すと、今シーズンはチャンスはなくなるかもしれない。

 3月16日。まだ暗い中に起きだし、一人で車を走らせる。今朝は、ぐっと冷え込んで、 今度は展望が期待できそう。
 また畜産農家の上で車をデポして、雪道を登る。車は畜産農家のすぐにデポし、 ふたたび雪道を上がって、林道終点から、菜畑山の山頂に立った。

 

午前7時すぎ。山頂からは、葉っぱのない梢越しに南アルプスの稜線が見え隠れしている。 山頂から、積雪1メートルほどの稜線通しに歩いて、今倉山側へ稜。15分ほど いったところで、北西側の斜面が、大きく開けてた場所に出た。「ここが教えられていた 展望場所だな」。


展望地点から、北岳、間ノ岳、右に鳳凰三山、背後に仙丈ケ岳など

 ここへ来る途中で、すでにブナ混じりの梢越しに北岳を双眼鏡で確認できて いたが、展望ポイントに三脚をすえて、望遠レンズを覗くと、すごい、 すごい。三ツ峠の右に北岳と間ノ岳が雄大な姿を見せている。その右手に鳳 凰三山があり、オベリスクも確認できる。鳳凰の上に白い稜線をのぞかせ ているのは、たぶん仙丈岳だろう。そして、甲斐駒も堂々と立ち上がってい る。農鳥は山影になったが、左には塩見岳、そして、真っ白な大きな山体の 荒川岳、千枚岳あたりの山も見えている。

 ほんとうに、すばらしい展望ポイントで、ここを紹介してくれ た山仲間に感謝の気持ちでいっぱいだった。

 展望の確認が目的だったので、フィルムは白黒で赤のフィルターで撮影した。 帰ってから硬い(F4)印画紙で焼いたら、この目的にはしっかり応えてくれるパ ノラマ写真が出来上がった。
 こんどは、もっと今倉山に回りこんだ場所から,赤石や聖も写してみたい。




 1年後、「山の展望と地図のフォーラム」の「展望の広場」に この報告をアップしたら、先輩の方に、菜畑山からの意外な遠望を、写真とともに 教えていただいた。なんと、奥穂高岳が、山頂から見えるのだという。写真は、幾つ もの「前山」の障壁を奇跡的にすりぬけ、かすめて、奥穂の白い頂がしっかり とらえられていた。
 私も、ぜひ早いうちに、菜畑山からの北アの遠望を、この目で確かめたい。





山の便り、大地の恵み (野原森夫)
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