三ツドッケ
 1986年10月


三ツドッケの避難小屋


 秋一番の季蔀に奥多摩を訪れたのは、考えてみれば初めてのこと だった。標高600メートルの東日原から1575メートルの山項 へ、標高差900メートル余の登り。雑木林の山道は、意外なほど 紅葉が鮮やかだった。やっぱり奥多摩も、時期を見て入れば、なか なかである。

 クヌギ、ナラ、クリの林は、まだ緑の葉が残り、ドングリがいっ ぱいに落ちている。エゾリスより小さく、エゾシマリスよりひと回 り大きいホンドリスが、幹をよじ登って逃げる。ドングリは鋭く細 い歯で皮を切り裂かれ、二つに割られ、中の実だけ削り取られるよ うに食べられていた。

 雑木林を抜け、稜線が狭まると、ブナとナラ、それに潅木の林に 変わり、樹林の間から周囲の、黄、朱色に染まった山肌が見え隠れ する登りだ。道の両側では、姿も形もそれぞれにユニークなキノコ が、目を楽しませてくれる。

 2時間で、山頂下の一杯水小屋へ。コブが三つ並ぶ県境の稜線に 出、昨年夏の日航機事故の取材を思い起こしながら、御巣鷹山の方 向に向かって手を合わせる。

 一杯水小屋は、どこを向いても、奥多摩の山また山の中だった。 近くには心細いながらも水場があって、一度泊まってみたいところ だ。川苔山が、目の下に見える.立川からは西に見える大岳山を、 ここは正反対の東方向に望む位置にある。ふもとからは近いけれど、 山は深い。





山の便り、大地の恵み (野原森夫)
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