雪の小楢山

   1991年2月17日     岳彦と



〔岳彦の小学2年のクラスの文集に掲載〕



 この冬一番といわれる寒気団が南下した日曜日、久しぶりに岳彦と二人で山に登りまし た。山梨県の小楢山です。

 林道に入ると雪が降りだしました。輪だちをたどって行き着いた峠の登山口では、四〇 センチほどの積雪になっていました。強い風で舞い上げられた雪の粒が頬にあたます。「 岳彦、寒いから、早く用意をして歩きだそうせ」。スパッツなどの身づくろいをして、ソ リを持って、登り始めました。

 「寒くないか」
 「ううん、だいじょうぶだよ」

 ときおり、ブゥーンとうなって風が吹きつけると、岳彦は足を止めて踏んばり風が行き 過ぎるのを待ちます。私の登山靴の踏跡を、上手にたどって足をすすめます。それでも、 登るごとに雪は深くなって、膝まで埋まるようになってきました。

 「お父さん、ここらで休もう」と、幾度かタイムを要求する岳彦。でも、口に食べ物を 入れてやる度に、また元気に登り始め、ついに一七一九メートルの山頂に着きました。

 「お父さん、どのくらい雪が深いか、掘ってみようか」といって、手袋で雪を掘りはじ めると、深い、深い。八〇センチほど掘ってようやく、地面の上をおおった枯れ葉が出て きました。



 下りは、小さなピークに登っては、その下に長く続く斜面を二人でソリで滑走しました 。岳彦は、今度は休みを要求するどころか、駆けくだり、駆け上がって手ごろな斜面をえ らび、また滑走です。

 「岳彦、もういいから、先にいけ」
 「うん」

 峠に降りる最後の長い滑走では、歓声だけを残して、岳彦が見えなくなりました。「お とーさーん、すごいよー」と下の方から声がしてきます。下ってみると元気に手を振って いる姿が見えました。







山の便り、大地の恵み (野原森夫)
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