奥利根・コゴミヶ原

1990年5月12〜13日  野原、H、T、K




 7年ぶりで奥利根の支流へ、山菜採りにでかけた。
 林道の車止めに着いたのは、夜9時前だった。 道の脇、沢のほとりの草原にテントを張るというと、「何だ、こんなところにか」「もっ と、いい場所かと思っていたのに」と、みんなから不満の声が上がる。車止めがあって、 この先のキャンプ地まで行けないんだから、しかたがないと言い訳をして、テントを張り 、焼き肉パ−ティーの準備を開始した。

 大型のタープと青い作業用シートで自作した「特製三角屋根宴会テント」を張り、明る いガソリン・ランタンを吊るす。風をさえぎった空間で乾杯!をすると、みんなの顔はい いっぺんにほころんだ。
 ビールがうまい。「なかなかいい肉じゃないの」「この沢の音がたまんないよ」「おい 、そこの野沢菜をとってくれよ」「星がきれいだ………」

 翌朝は、明け方から釣り人がつぎつぎと車で上がってくる。営林署の巡回も5時に来た 。ニンニクとオリーブ油のスパゲティを準備して、みんなを起こす。朝日岳の方角が朝日 に染まる。

 予定よりもかなり早くに出発。適当に枝沢を選んで、踏み跡や半分沢遡行の感じで登っ ていく。ふりかえると、すっかり明るくなった青い空を背景に、朝日岳がきれいだ。7年 前にこの一帯にきたときの、あのときのままだ。緑の淡い色合いで染まる山肌も、コブシ の花も、咲き始めた山桜も。

 踏み跡はなんども切れ切れになって、あまり当てにならない。靴を濡らしながら、沢筋 をたどる。人がほとんど入った形跡がないだけに、ウド、ゼンマイ、ワラビなどが順調に 採れる。シオデも見つかり、うれしかった。
 Hさんは、「おっつ、ショウジョウバカマだ」と指さしてはルートを外れ、気にかかっ た花があると歩み寄り、ときには膝まづいて、名前を考えている。いつもながら、ゆっく りのんびりしたペースで進んでいく。



 沢を渡り返し、渡り返し進んだところで、ゼンマイの群生地があり、ちょうど食べごろ のものがまとまって採れた。
 この先にはウドが多い場所があるはず………。
 めざす場所にたどりついて、「ウヒョー!」「すごい!」、みんなで声を上げてしまっ た。「コゴミだ、コゴミだ。コゴミヶ原だ」。
 到着してみたら、なんと、ウドヶ原はコゴミヶ原に大変貌しているではないか。幅20 メートル、長さ40メートルほどの、カヤの枯れた湿地に、鮮やかな緑色のコゴミがそこ らじゅうに生えだしている。
 まちがって踏みつけてしまわないように、注意深く足を運んで、手頃な伸び具合のもの を選んで摘む。ポリ袋が見るみる一杯になる。夢中でかがみこみ、はい回ったので、後で 気がついたら腰が痛くなっていた。とにかく、夢中ではいまわった。もう、体がコゴミに なってしまいそう。



コゴミ

 Tさんは、ウドを捜して、10数本を見つけ出した。上手に30メートルほど行ったと ころにも別の湿地があって、ここには大きなウバユリの冬枯れ・ドライフラワーが立っていた。根元を 掘ってみると、大きな「ユリ根」が育っている。「これ、うまいんだよ」。家に持ちかえ って、茹でてかじってみたら、タマネギのように肉質がはがれやすく、ほんのりと甘味が あった。

 タラの芽も時期で、これも摘む。そばの沢の中には、小さなイワナの姿が見られた。

 天場までもどって、さっそく採れた山菜を天ぷら、おひたし、酢味噌和え、ゴマ和えで 味わった。

 帰り道、山宿に立ち寄って、Hさんの知り合いでもある管理人のTさんを訪ね る。温泉で汗を流して、さっぱり。お茶のみ話で出された山菜は、ネマガリダケ(生みそ で)、ヨブスマソウのおひたし。ヨブスマはコウモリのことで、葉の形が似ている。関東 あたりのとちがって、ここのヨブスマソウは茎が太く、野山の香りがきつく、個性ある味 わいだった。

 採れた山菜――― ウド、タラの芽、コゴミ、ワラビ、ゼンマイ、トリアシショウマ、シオ デ、ハリギリ、ニワトコ、フキ、ヨブスマソウ、ウバユリ(鱗茎)。





山の便り、大地の恵み (野原森夫)
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