根子岳スキー、360度の展望

2000年12月30日

 年もおしせまって、12月30日、上信国境の根 子岳(2207メートル)へ、今シーズン初めてのスキー登山で でかけてきました。
 2年前に四阿山へ、今年の晩冬には湯ノ丸山へ、登ってい らいの、この地域への山行でした。
 北アはほぼ全山が姿 を見せ、御岳や富士山、武尊山、日光の山々、身近には奥志 賀の山々、頚城の山々も、心ゆくまで眺めることができまし た。
 GPSも視界が悪い場合も考えて、しっかり準備していったの ですが、好天で記録の役目だけに。行動の軌跡をとることで は活躍してくれました。



根子岳への登高ルート。黄色は下降ルート。
ハンディGPSで記録したデータをもとにカシミール3D(DAN杉本 作)で描画。
国土地理院数値地図50メートルメッシュ標高を使用。


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東京・西多摩の自宅(4時32分発)→圏央道・青梅イン ター経由→関越道・鶴ヶ島ジャンクション(5時03分)→ 上信越道・上田インター(6時46分)→菅平・奥ダボスス キー場の駐車場・標高1430メートルくらい(7時26分 着、8時17分発)登高開始→奥ダボス・3人乗り高速リフ トの終点・標高1546メートル(8時44分通過)→避難 小屋→途中、山頂部の手前で風をよけて食事→根子岳山頂 (11時28分着、同52分発)→シールをつけて下降→2 117メートルでシールを外す(12時19分)→滑走と転 倒→奥ダボスの駐車場(13時38分着、同47分発)車→ 自宅(16時22分)

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 3日続いた晴天も明日の大晦日には崩れるとの予報があっ たので、今年最後のチャンスと早立ちで菅平をめざした。上 信越道は軽井沢の手前から路面に氷が残っている場所が出始 め、上田インターで下りて菅平への山道に入ると、圧雪状態 の道となった。

 午前7時半まえに、奥ダボスのスキー場に着く。ありがた いことに、駐車料金はタダ。根子岳と四阿山が、朝日を背に 浮かび上がっている。根子岳はずいぶん近い。
 8時15分にはリフトが動くとの話だったが、動き出した のは西側の短いリフトだけで、根子岳から張り出した尾根に 向かう3人乗りリフトは8時45分から調整を始める、とい う。展望がいいうちに上部へ上がりたいので、ゲレンデの隅 をまっすぐに登り始めた。(8時17分発)

 カベ状の急なスロープを上がりきって、ふり返ったら、お おっ! 意外にすごい展望日よりではないか。北アの白い 山々がずらりと姿を現し始めた。上信越道の佐久あたりから は鹿島槍の双耳峰ももやにかすんでいたくらいだったのに、 高度を少し上げただけで、ずいぶん条件が良くなってきた。 リフトの終点、高度1545メートルまで上がると、妙高、 火打山、雨飾山なども、間近に、くっきりと姿を現してき た。焼山の噴煙が、斜めに、ゆっくりと昇っていく。いまの ところ、風もない。

 先行者はおらず、リフト終点からはラッセルを覚悟してき た。けれど、根子岳はヘリ・スキーにも使われていて、滑走 コースをつくるために圧雪車か、キャタピラつきの車両で、 雪面をつき固めている。それが、見渡すはるか上方、根子岳 の山頂近くまで延びている。まだ60〜70センチほどしか ない雪を押しつぶしたために、雪の上には笹や潅木が頭をも たげている。
 スキー登高では、キャタピラのあとをたどるのは、でこぼ こがひどくて、固くて、気持ちがいま一つ。それで、ルート をそれて粉雪の上をすすもうとするが、こんどは雪がすくな くて、雪面がスキーごとその下の笹薮の中へ落ち込んでしま う。
 これはたまらん。あと50センチも雪が積もって、自然に しまってくれれば、ずっと歩きやすくなるのに。



避難小屋近くからの、北アルプス

 避難小屋(1810メートル)まで登って、そばで北アと 妙高を撮影していたら、真上を低空でヘリコプターが飛びぬ けていった。操縦士と目が合う。30分くらいしてもう一 度、飛んできたので、今度は様子をよく観察した。山頂下の 雪原まで行って、ホバリングし、また帰って行く。風が出て きたので、着陸できるかどうか、確かめにきたらしい。
 なんだか、騒々しいスキーツアーのコースだなあ。でも、 私の山友達の一人は、この上部で、下降中にギャップに落ち て骨折し、下から救助隊に迎えにきてもらったことがある。 「携帯電話で連絡して、手を振ったら、下から見えるとい う。すぐに、スノーモビルが上がってきて、助けてもらっ た。いや、恥ずかしい、恥ずかしい」とのこと。
 この山は、普通の条件のときな らば、他の山にない「安全性」があるということか。



山頂部から妙高・火打方面

 風が強くなってきた。高度があがり、笹原の雪も、表面が クラストし始めて、のっても落ち込まないところも出てき た。ヘリポートの手前、2128メートルの小ピークを左に 見るあたりから、夏道の赤い鉄板の標識を頼りに、雪の原を 山頂をめざす。この鉄板の標識は、スキー場の上部から山頂 まで、30〜50メートルに1本ずつ、間をおかずに立てら れていて、視界が悪いときには目印になる。

 樹氷がびっしり付いた針葉樹の木立をぬけて南東に回りこ むと、山頂部の直下に出た。高度差10メートルほどの、短 いが急な細いルートが最後の登り。スキーを横にして、階段 登りでいくしかない。急坂の上の尾根は地吹雪のように、細 かい雪が風にあおられていた。
 風をよけながら腹ごしらえをする。今日は、800ミリ リットルの魔法瓶に熱い甘酒を入れてきた。風が吹き付ける なかでは、これが最高のごちそうで、甘くて、温まって、元 気が出る。
 上から粉雪を浴びながら、急坂を一気に登り、山頂部に出 た。




 北東へ100メートル尾根をたどると、石造りの祠がある 根子岳の山頂に着く。11時28分。風で、地表の岩が露出 している。風は南西から吹きつけていて、雪も飛んでくる。 太陽はかすんでいる。上空には南から広がった雲があり、北 アの鹿島槍あたりまで、ぼうっとしたもやのなかにはいり始 めている。さきほど、避難小屋で写真を撮っておいて、よ かった。

 見える山を指差してみた。
 富士山はシルエットだが、全形がきれいに見える。八ヶ岳 と蓼科山の右上に宝剣・木曽駒、遠く御岳?乗鞍岳。
 北アは、穂高連峰がかなり黒っぽいもやのなかに入り始め た。槍ヶ岳、鷲羽岳、野口五郎岳。水晶岳は、四阿山からは 野口五郎に重なりかかったが、この根子岳からは山頂の双耳 峰が完全に右に分離して、全体が見える。右手に遠く高く薬 師岳。
 蓮華岳から爺ガ岳、鹿島槍、五竜岳。後ろには、立山三山 がうまく全体が抜け出ている。剣岳はもやが濃い。白馬三山 はよく見える。

 妙高と頚城の山は、山頂からは樹林の陰になる。

 北にはもやがない。白根山と横手山。他にもいろいろな山 が見えるが、名前はわからない。岩菅山も、判別できなかっ た。(岩菅山は、横手山の左となりにあった。)

 谷川岳方面の右に、白い雪山が見える。至仏山と燧ケ岳。そ の右の雪山は、山頂部にいくつかのピークがいちいち区別し て見分けられる。武尊山だった。

 奥日光の山では、横に大きく山体を見せる男体山がよく見 え、その左上に、一つだけ白い高い峰は見えるのが日光白根 山のようだった。男体山の右に少し離れて、ミニ男体山のよ うな山が見える。なんだろうか? (皇海山でした。)

 四阿山はすぐ東隣だが、そこへ続く尾根は岩場があって、 きびしそうだった。1999年の3月初め、スキーでたどっ た尾根が南へ長く伸びている。根子岳よりも樹林が多く、 黒々としている。1月のこの時期にはまだスキーではむずか しそうだった。

 

 手袋が濡れて、指が痛い。とても長居はできず、20分余 りで出発。
 さきほどの急な斜面のところで、55歳くらいの男性と出 会った。「ルートがわかるように、トレースをしっかり残し てください。私はスキーが下手だから、下降は時間がかかり そうで」という。「ルートはキャタピラの跡があるから、大 丈夫ですよ。でも、あの滑走コースは幅が狭くてでこぼこで、私の腕じゃ下降できない し、わきの雪原はやぶだらけだし、私もどうなるか」と話し た。
 この日、後続のパーティーは4つ、単独行を入れて10人 ほどがあとから登ってきた。

 12時19分、ヘリポート(ただの雪原)の下からシール を外して滑走を始める。予想通りの深刻な事態。ルート脇の 雪原はところどころ雪がしまってはいるけれど、不意にトッ プが落ち込んだり、ターンのときに力が入ると、足ごとこれ また落ち込んだり。何度転んだことか。停まったり、転んだ り、寝転んで起きようとしなかったりを繰り返したので、GPS には、のろのろ、変進、停滞、の様子がそのまま記録されて しまった。
 ほんとうにあと50センチも雪が積もれば、状態はずっと よくなるだろう。

 ふり返ると、冬の斜め日に明るく照らされて、根子岳がお だやかな姿を見せていた。私は、山から麓へ帰るこのひとと きがまた好きだ。冬の時期ならなおさら、安堵感と小さな達 成感につつまれて、ゆっくり高度を下げていくことができ る。
 今度は、もう少し大勢で、この山の展望と、滑走を楽しみ に再訪したい。

 80分の悪戦苦闘の末に、13時半すぎに奥ダボスの駐車 場に下り立った。



GPSの利用について

 ハンディGPS(ガーミン12)は、雪の山では、初めての使用でした。かなり使えるなという 印象でした。

 今回は、あらかじめ、1)リフト上部、2)避難小屋、 3)山頂の3点はウェイポイントを登録しておきました。ま た、ルート(夏道)も作成して、GPSにともにアップロードし て出かけました。いずれも、カシミールでの作成です。
 また、国土地理院の25000地形図をカシミールでダウ ンロードし、カシミールの表示設定で緯度・経度を10秒 (緯度だと約300メートルごと)メッシュで書き入れまし た。視界がなくなっても現場で現在地が割り出せるようにで す。

 歩き出してしばらくは、夏道と並行にすすんだため、GPSに は「ウエイポイントに向かって進め!」とメッセージが出ま した。また、上部で、夏道に入ったり、また雪原に出たりし て、眺めのいい場所、歩行しやすいところを選んでうろうろ しつつ登っていったら、またメッセージの表示が出て、意訳 というよりもじょうだん訳をすると、「足取りがスムーズで ない」などと叱咤されました。
 どちらの場合も、事前に登録したウェイポイントやルート がGPSの液晶画面につねに表示され、自分の位置、どのくらい ルートからはずれているか、どちらに向かうべきかなどを、 知ることができました。

 オーバー・ジャケットの胸のポケットに入れて、電池が冷 えるのを防ぎました。乾電池は、大安売りのアルカリ電池が すぐに切れてこれまで失敗をしたことがあって、いちおう メーカー品を使いました。24時間もつとのことですから、 一日の行動時間のうちなら、安心です。リチウム電池は、 もっと寒いときに試したいです。

 

 GPSは、なかなか役立つなあというのが感想です。雪山だと 衛星も常時、しっかり捕捉してくれました。カシミール3Dの機 能も、あらためて驚かされています。GPSデータを編集してい るときなど、セグメントをダブルクリックすると、標高―時 間―距離のグラフと登山者の絵(アイコン)入りで、データ が一覧であらわれます。すばらしい!!





山の便り、大地の恵み (野原森夫)
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