ナルミズ沢と大石沢の出合にある、2メートルの滝。左上部に朝日岳の稜線 美しいナメが稜線に向かって延々と続いている、ナルミズ沢に行ってきました。上 越の宝川の上流にある沢です。入山は、群馬県の宝川温泉をへて朝日岳方面に入る林 道から。 第1日は、昼前から激しい雷になり、中流の大石沢出合いの2メートルの滝(1286メー トル)のかたわらで模様眺めのあと、幕営。 2日めは、朝5時前に出発し、快調に魚止めの滝、8mナメ状の滝を越えて、142 0メートルの二股へ。ここで、正面の越後烏帽子を大烏帽子山と勘違いして左俣に入っ てしまいました。「天国へ続く」穏やかなナメに出会うことはできず、残念。 ジャンクション・ピークと越後烏帽子の鞍部にせりあがる左俣沢の源頭は、最上部で
シューズのフリクションが効くかどうかの、傾斜のあるナメ滝が現れ、気が抜けません
。また、枝沢が分岐するごとに、ルート判断にまた真剣になるところ。まちがうと、手
間がかかる岩場や長い笹薮こぎの地帯に突き上げてしまいます。何度も地図やGPSと
にらめっこし、草つきのトラバースもまじえて、ようやく穏やかな地形の鞍部に上がる
沢筋をつめることができました。 ![]() 大石沢出合いから上の、遡行ルート。 行動記録 8月7日 沢幅は6メートルほど。水量は少なめですが、登山靴では渡れません。この先は登山道もひどく
ぬかるむ場所を通るため、ここで渓流シューズに履き替えました。 ナルミズ沢遡行は、ここから入渓するのが、本筋です。しかし、ここからの2キロほどの区間は、
巨岩帯と呼ばれ、上流部よりも遡行には手間取る場所です。今日中にできるだけ高度をかせいで、
いい天場を得たい私たちは、右岸の山道をさらに上流へと進みました。 11時15分、大石沢の渡渉地点着。この渡渉地点の少し手前の高みから、右手前方、40メートル
ほどの下に、ナルミズ沢の中流部の関門、大石沢出合の2メートルの滝と、見事な滝つぼが姿を見せました。 雨が降り出しました。雷鳴は10秒おきくらいです。 それから、2時間あまり、ものすごい雷鳴とほどほどの雨が降りました。ふもとの水上の町では、
停電があったそうです。 雷が止んだのは、午後5時過ぎ。 日没の間際にまって、ようやく、大烏帽子山と朝日岳の稜線が、姿を現しました。
1日目に泊まった大石沢出合いの滝の近くの天場。 沢岸の、水流から2メートルほど高い位置に、 3張りほどテントを張れるスペースがあります。 大石沢の方まで出かけて流木を集めて、焚き火を楽しみました。
流木の焚き火。一晩中、ずっと燃えて、虫をおいはらってくれました(7日夕) 8月8日
沢床の夜は、気温が下がり、何度も目が覚めました。シュラフカバー1枚きりでは、
寒い。 4時55分、テントなどをデポして、出発。
2メートルの滝の上部は、沢床は岩が露出し、さまざまな景観をつくっていました(8日朝) 100メートルも行かないうちに、右手の沢岸にツエルトが1張り、立っていました 。少し先の釜で釣竿を振っている釣り師のものでした。あの雷のなか、脱出もままなら ないこの場所では、心細い幕営だったことでしょう。足元をイワナが走りますが、ナル ミズ沢のイワナの魚影は、釣り師が多く入りすぎたためか、あまり濃くありません。 すぐ先で、深めの滝つぼと切り立った岩壁をもつ、「1mの滝」が現れました。規模 は小さいけれど、泳がないと越えられそうにない。高まきは、右手(左岸)から。しか しツルツルの枝沢が落ちていたため、先へ進めず、退却。こんどは、左手(右岸)の笹 の斜面を腕力を頼りにトラバースして越えました。 その先に、「3mほどの幅広の滝」が現れました。右側から簡単に越せそうですが、
最後に体を持ち上げるところで、ホールドが足りません。木の枝は、皆が同じ部分をつ
かむために、皮がはがれ、折れて、15センチほどの長さしかない。こいつをしっかり
握って、ぶら下がって、左足を高く持ち上げて、足場に立ちこみました。 「第一のトロ場」がその先にあります。予想より規模は小型で、渕は小さい。右から まこうとしたら、カミさんが、「意外に浅そうだよ」と。渕の中を左よりに進んでいくと、 腰までの深さもなく、通過することができました。増水のあと、土砂が底にたまったよ うに見えます。また、昨日の雷雨もカラ雷雨で雷鳴ばかりだったため、渇水状態なので しょう。ここは、高まくと下降でちょっと苦労させられるところです。 それに比べて「第二のトロ場」は、規模がふたまわりは大きい。深い渕が3つほど、 連続しています。右の斜面に平坦な草地があり、踏み跡を伝ってここへ上がり、泥田の ようなずぶずぶのぬかるみを進んで、上流へ下降しました。
魚止めの滝。右手の岩の端を登り、落ち口に出ます ナメがゴーロに変わってしばらく遡行していくと、正面に「魚止めの滝」が現れまし た。午前6時、順調なペースです。先行の男性4人のパーティーが、滝の右端の岩場を 登っているところでした。今朝早く、登山道をへて大石沢出合から入渓したパーティー のようです。間をあけるため、ここで小休止。 一休みして岩場にとりつくと、簡単そうに見えて、中段からはスタンスがとりにくく
なります。落ち口に体をもち上げるにもホールドが不足し、上体の腕力が必要。 魚止めの滝の上は、ほんらいなら美しいナメが展開するはずですが、7月の集中豪雨 のためでしょうか。大量の土砂や大きな石が、延々と沢床を埋めて、なんの味わいもあ りません。沢が大きくカーブする場所では、増水時の濁流が谷の外周をえぐり、生々し い侵食地形を見せている場所もありました。
8mナメ状の滝。左手の笹と草付きの斜面をまいて、上流に出ました 沢幅がもう一度、狭まると、「8mナメ状の滝」です。手前に小さい滝つぼがあり、 両岸はスリップを誘う、ヌルヌルの、傾斜のある岩場になっています。迷わずに、左か らまきました。潅木まじりの笹のブッシュこぎです。カミさんが「だから、沢はいやな んだ」と不満の声をあげます。 その100メートル足らずの先で、「1420メートルの二股」に出ました。(6時 44分) 私は、目の前の山を大烏帽子山と誤解して、左の沢をルートと判断しました。水量も
左がやや多めに感じました。
二股から左俣に入ると、小滝が続きます 上部の1540メートルの二股はすぐ目の前。もはや引き返すのもロスが大きすぎま
す。それに、ジャンクション・ピーク(JP)と越後烏帽子の間の鞍部は、青空の下、美しいラ
インを描いて、おいでおいでをしています。鞍部の両側は、白い岩場が展開しています
が、草地も見えます。今日は、金属ものの装備は不足しているため、まともに岩場に向
き合うのは避けねばなりません。ようやく地図と真剣に向き合って、その鞍部のややJ
Pよりに抜ける枝沢1本だけが、傾斜が最後まできつくなく、岩場にぶつからないルー
トであることをつかみました。 1540メートルの上部二股は、左にとれば、朝日岳の朝日平に抜けるこ
とができます。稜線に直接、出るのが目的ですから、正面にルートを選びました。
左股の小滝とナメ。この上部が、やや荒れた源流帯で、ルート判断に悩みました GPSに大いに助けられました 前方に見えていた岩場が目の前に近づいてきたところが、1644メートルの三股で した。一番右の枝沢は、越後烏帽子に向かうもので、除外。真ん中の水流は、目の前の 岩場が視界をふさいで奥が見通せない。どうもこれが、鞍部へぬける、唯一のやさしい ルートの様子です。そして、左の沢は、約10メートルの傾斜のあるナメ滝をかけ、水流は 一番多めです。上部はやはり見通せません。この左の沢と、中央の沢の間には、上部に おだやかな地形の支尾根があります。中央と左、どちらをルートに選んでも、上部でト ラバースすることはできそう。GPSで、現在地ははっきり確認できますが、目指す沢 筋が中央か、左か、目の前の岩場がじゃまになって、確認できません。また、ここまで 細かい枝沢になると25000分の1地形図でも、やや解 像度がアバウトで、現地の地形ときっちり対応しきれません。 カミさんが、「とりあえず左に行こう」といいます。目の前の滝を越えれば、視界が 開け、地形と進路は明瞭になるでしょう。「あの草付きをトラバースすることになりそ う」ということを条件にして、左の沢の滝を登りました。 ナメ滝はツルツルで、フリクションが効かず、右手の草付きと笹を使って、上部に出
ました。その上は、細い溝状のナメ滝で、傾斜は少し楽。もう水流はほとんど消えてい
ます。ここも、草付きとの境を進みました。草付きもまた傾斜があって、滑ります。 幸い、この地点からは、左股沢の源頭部の全体が見渡せました。鞍部の一角に上がるには、
中央の沢が、やはり正解でした。 ◆あとで確認したら、以下のサイトに、この源頭の様子を撮影した写真がありました。 8時24分、最低鞍部のややJP寄りの位置で、稜線に出ました。JPは、ここからは
ひと登りです。目の前に越後烏帽子の高みがあり、そのさらに北方に、大烏帽子山が見
えます。その間の鞍部が、ナルミズ沢を遡行して上がるはずの場所でした。
稜線に上がりつき、ジャンクションピークの登りから、源頭の鞍部越しに、越後烏帽子、大烏帽子山を 望む<BR> 渓流シューズを軽登山靴に履き替えました。スズタケが腰の高さに伸びて、踏み跡は不 明瞭な道です。JPに9時03分着。ジャンクション・ピークからの眺めは、いつか体 験したいと思っていたものでした。越後烏帽子、大烏帽子山、遠くに巻機山方面が望め 、背後には利根川源流の山々が連なっていました。
JPより、大源太山方面
朝日岳から谷川岳方面 JPからは登山道をすすんで、朝日岳に9時31分着。 カミさんは、「今度は秋に、ちゃんとナルミズ沢に登りにこよう」といいます。「沢は
虫と藪コギが、きらいだ」と言ってきましたが、「屋内ゲレンデでトレーニングして、
また登りたい」という話も出ました。 ◆朝日岳から大石沢の出合をへて、宝川温泉の林道へ続く登山道は、とくに上部の露 岩地帯が登山道が不鮮明で、迷いやすい道でした。地図には道がついていますが、この ルートは下部で3度の渡渉があることも含め、注意がいる道です。 山の便り、大地の恵み (野原森夫) http://trace.kinokoyama.net 上信越 Index へ HomePage TOP へ 記事、写真の無断転載を禁じます Copyright (c) Nohara Morio. since Nov.2000 |