1989年5月3〜5日 家族4人 ![]() ブナ林を登る 国道を北上して、神城から鬼無里方面への近道に入る。蕎麦粒山を乗り越す峠への登り にかかると、車が何台か止まって、みんなカメラを構えていた。窓からは真っ白な北アルプ スが目の前に展開している。白馬から、五竜、鹿島槍にかけての迫力のパノラマ。車を止 めて、朝日に照らされ、次第に明るくなっていく山々に見とれた。 カラマツやブナ、雑木の林を縫って走るこの道は、芽吹きはこれから。北信濃の春は遅 い。トンネルを抜け、小川村をかすめて鬼無里村に入ったところにV字型のいい谷があり、 コゴミや竹の子(ネマガリダケ)をとる。コゴミは、裾花川沿いの山道に入ってからも、いくら でも採れた。 ダムを越し、谷がV字型になって車道のすぐ上に雪崩に磨かれた大スラブがあるような
怖い場所を抜ける。道の脇には残雪が目立ち始めた。 10時前に起き出して、展望がいいうちにと、中西山の稜線の高台をめざして出発する
(10時54分)。歩き出してびっくりした。いつのまにか駐車場は車でいっぱい。観光バス
もつぎつぎに到着し、奥の自然園への道は人の行列になっている。みんなミズバショウ
が目当てらしい。ミズバショウなら、途中の車道脇の小さな湿地にもいくらもあったのに。 空は青い。ブナの幹は明るく輝き、期待していた雪もいっぱいだ。積雪は1メートルくら
いか。気分最高で春のブナ林に分け入る。 正面の雪の壁には苦労させられるが、斜面がほどほどに緩い、滑っても安心なところ をえらんで、さらに回り込んだ。それでも、稜線の直下では、いちだんと傾斜が増す。峻二は ここで再び背負子の中へ。一番、緩いところから斜面を直登して、元気がいい遥子、 岳彦、そして私の順で西山の稜線に飛び出した。(14時20分) ![]() 西山の稜線から妙高・火打(右後方)、雨飾山(左)方面 すごい展望だ。いつか登りたいと思ってきた雨飾山も、そして越後側の妙高の山々も見
える。北アルプスは、朝日、雪倉、そして白馬から鹿島槍まで、ずーと主脈が連なってい
る。ここに来るまで、背後で切り立った山容を見せていた戸隠西山、高妻山も、この稜線
から対座すると、谷を深く落としてすばらしい高度感だ。 下降は、下のブナ林のなかへ、ほぼまっすぐに下りることにした。とっかかりの雪の斜
面は、きついところは10メートルほどなので、ここだけは慎重に下る。その下は、緩い雪
面と滑り止めのブッシュが続いている。 ![]() あとは傾斜が緩くなり、かかとのキックステップでぐんぐん下降する。岳彦はいったんシ リセードを覚えると、夢中になって、滑ってくる。シリセードではスピードが出ないところま できて、今度はそりを下ろして、長い滑降を楽しんだ。 途中、雪原で、遥子たちが灰色の野ウサギを見つけた。さらに下って小さな沢に出る。 湿原が点在しており、人気のないこの場所で、ミズバショウがひっそりと咲いていた。最 後は沢をスノーブリッジで渡って、自然園の管理小屋に出た(15時30分)。 夕ご飯は、今朝方摘んできたコゴミ、フキとキャンプ場で採ったフキノトウなどを合わせ
て天ぷらに。マーボ豆腐も作り、ビールと水割りがうまかった。 ![]() 山の便り、大地の恵み (野原森夫) http://trace.kinokoyama.net 上信越 Index へ HomePage TOP へ 記事、写真の無断転載を禁じます Copyright (c) Nohara Morio. since Nov.2000 |