上州・武尊山

1999年9月26日(日)日帰り
野原森夫一家4人(夫婦、高2と中2の息子)



武尊山山頂から皇海山方面

【コースタイム】
西多摩の自宅(3時36分)→圏央道・青梅IC→関越道・鶴ヶ島ジャンク(4 時06分)→水上IC(5時07分)→湯の小屋→群馬県自然の森林道の登山 口(野営場の上、EL1470メートル、6時08分着〜6時46分発)→田 代湿原(1570メートル)→きのこ群生地(1700メートル、7時49 分着〜8時05分発)→高山平・武尊牧場コース分岐(1758メートル、8 時20分)→中ノ岳・前武尊コース分岐(9時36分)→武尊山・山頂(21 58メートル、10時00分着〜10時44分発)→高山平分岐(12時10 分)→キノコ狩りをしつつ下山→田代湿原(13時25分着〜40分発)→林 道登山口(14時02分着〜14時17分発)→関越道経由・本庄ICから渋 滞→青梅IC→自宅(18時25分着)
                     車片道190キロメートル。




 未明に関越道に上がり、すいた道を順調に走行。午前5時すぎにはイン ターを下りた。
 沢沿いの車道を走り、途中で右に折れて、細い林道を登った。

昨年は2度もキノコの誘惑に負けて、方向転換

 今日の武尊山登山は家族4人がいっしょだが、私と妻の決意はとくに固い。 というのは…。

 1年前の10月初め、妻と2人で休日の早朝に、武尊山の山頂をめざし た。ところが、登山道のすぐそばにキノコが密生 する朽木、倒木を見つけてしまった。その途中でも、キノコがブナの朽木にびっしり付 いているのを見つけて写真だけ、と写してきたばかり。ついに、登山は中止。 キノコ狩りと写真撮影に方向転換して、青空に映える山頂部を眼前に展望しな がら、やぶこぎ・キノコ探索に打ちこんでしまった。

 武尊山の一帯は、我が家 ではブナ林のキノコ狩りに通ってきたところ。でも、毎年秋に 1、2度ずつ通い続けるうちに、いつも中腹あたりを徘徊するだけで、山頂に 登らないでいいのかという話になった。「いつも北側の背中やお尻のあたりを チョロチョロと動き回っているだけなので、武尊山の山の神様にも、これでは 礼を失する」「武尊山は、まわりに高い山がないから、きっとすごい展望がお がめるはず」……。

 こうして晴天を期して、登山決行となったのに、キノコの誘惑に負けて挫折 したのが昨秋の1回目の挑戦。その2週間後の10月下旬、ふたたび同じコー スから武尊山登山にくりだしたが、このときは登り始めから冷たい雨がふりか かり、おまけにキノコが真っ盛りで、途中でまたもやキノコ狩り に転換してしまった。

3度目の挑戦が、今日の登山。2人の息子たちも、今回は貴重な!休みを費 やして同行してくれた。車で走る道々、妻は「お父さん、今日は、わき目もふ らずに、頂上へ行こうね。こんなに親の楽しみに付き合ってくれる子どもはい ないよ」「キノコの本番には、また来れるんだから、今日は登ることが第一。 山頂に立てば、きっと周囲の山の眺めが最高だと思うよ」などという。

 わかってます、わかってます……。

標高1600メートルあたりから、キノコ・・・・・・

 標高1400メートル余の登山口を6時46分に出発。荷物は、4人分計7 リットルの水も、食糧も、山頂でラーメンをつくるコンロも、雨具、三脚まで も、みんな子どもたちが担いでくれて、私のザックの中はカメラしか入ってい ない。人影がまったくなく、台風の名残の強い風が吹きぬける静かなブナの林 を登り始める。

 あえて9月下旬の時期を選んだだけに、ブナ林はキノコ・シーズンにはまだ 早すぎて、「わき目」をさかんにふるが、シグナルがあまり返ってこない。高 度差100メートルほどを上がった田代湿原のすぐ上では、オコジョらしい動物 が胸を噛まれて死んでいた。

 標高1600メートルあたりからは、それでもキノコが目立ち始めたが、 「すべては下りで。がまんがまん」と歩を進める。

 静かだった登山道も、標高1760メートルあたりで武尊牧場からの道を合 わせると(高山平分岐)、どっと登山者が増えてくる。樹間に武尊山の山頂部 が見え隠れしている。空は薄くもやがかかってはいるが、青空も見え、まずは 願ってもない登山日より。

中岳の登りに入ると、尾瀬、日光、そして越後三山方面の展望が

 標高1870メートルくらいのところにセビオス岳という高まりと小さな湿 原があり、ふりかえると燧ケ岳、至仏山、笠ガ岳がはっきり見え、平ヶ岳や越 後駒ケ岳方面、巻機山も眺められる。東には日光白根山が大きく、高い。そし て、にょっきりと頭をもたげる怪峰は皇海山か。

 「お父さん、富士山も山頂からは見えるかな」「見えるかもしれないよ。こ れだけ、いい天気だもの。北アルプスだって見えるかもしれない」。

 たどる尾根の前方には、岩峰が立ちはだかる。これは中岳で、短い鎖場があった。 抜ければ中岳の山頂の東側をトラバースするように道が伸び、前武尊山から上 がってくる道を合わせた。

 富士山は、このトラバースの途中から南の方角に意外に大きく望むことができ た。その右の山々は、南アルプスか。手前の秩父、奥多摩の山々には、薄い雲 がかぶさっていて、富士山は雲海の上に半身を現している。それにしても、こ れだけ遠くから、こんなに大きく見える富士山は、すごい。南アルプスが圧倒 されている。

山頂はもうすぐ。北ア・大キレットを遠望する登高

 前武尊山コースの分岐からは、うっすらとモヤがかかってはいるものの、 八ヶ岳と蓼科山が見え、浅間山、黒斑山、四阿山、志賀高原が望める。武尊山 の山頂に至る道は、中岳から山頂に続く稜線の南側をトラバースするように伸 びていて、岩の尾根を避けて続いている。山頂まであと20分くらいか。ピッチが上が る。


武尊山から槍・穂高方面

 「お父さん、あれは、北アルプスじゃない?」。山頂までもう少しというと ころまできて、長男が言った。なるほど、四阿山と志賀高原の鞍部にあたるあ たりに、遠くかすんで高度のある山並みが見えている。

 「おぉっ、あれは、槍のテッペンだ。槍・穂高連峰が見えているんだよ!」。 私が今度は答える。

 槍ヶ岳は、頂上が草津白根山あたりの山の上に少しだけ見えてい る。大キレットも見える。穂高連峰は、丸ごと見える。納得した長男が、二男 や、休んでいる登山者に、「あれが大キレットで、南岳があって、その右が 槍ヶ岳…」と説明し始めた。

武尊山の山頂から、山座同定と撮影を楽しむ

 武尊山山頂(沖武尊)に、午前10時ちょうどに到着した。

 さっそく私は、頂上の西南端の一番、眺めがいい場所に陣取って、撮影を始 める。モヤがあるので、すっきりした写真は難しそう。長男はコンロで湯を沸 かし始めた。昨日の運動会で足を痛めつつ、がんばって登ってきた二男は、フ ルーツたっぷりゼリーを食べつつ、妻といっしょに食事を広げる。

 「お父さん、あれはもしかして剣岳の方かな?」とまた息子がいうので、そ の方角に目をこらす。なるほど、志賀高原の高まりの右手に、もう一ヶ所、高 度のある山の稜線が見えている。さらにその右に、前の山に分断されたり、前 の山の上に山頂部を覗かせたりして、北アルプスと思われる稜線を、たどるこ とができる。


武尊山から剣・立山方面

 山容と位置関係から、前の山の上に3つほどの高まりを連ねているのが立 山??で、すぐその右手に三角形の美しい稜線を見せているのが鹿島槍か剣 岳??という見立てをした。槍と立山の間の位置でちらりと見えている稜線 は、位置からは薬師・水晶あたりになるが、まったくわからない。

 帰ってから、カシミールで確かめないと。

 ラーメンを食べ、おにぎりをほおばって、ちょっと後ろを振り返ったら、い つのまにか山頂部(タタミ20畳ほど)が人で埋まっていて、驚いてしまっ た。そのみんなが、私たちと同じで西〜南西を向いて座っている。

 10時44分、山頂発。同じコースを下山する。のんびり下りながら、妻が 「思っていたとおりのいい山だった。やっぱり一度、登っておくべきだったわ ね。みんなで登れて幸せだったでしょ」という。武尊山は、山頂から剣ガ峰、 前武尊へと高度感のあるシャープな尾根を派生させていて、山頂からこの山容 を眺めるだけでも、すばらしいのに、展望がとびきりいい。そのうえ広大とも いえるブナの樹林が四方に広がっている。ほんとうにいい山だ。

キノコを摘みつつ、ブナの樹林のフカフカの道を下る

 すれちがう人が多いので、鎖場の渋滞が心配だったが、だいたいひとしきり 登山者は登りきった後だったので、時間のロスなく、難所を通過できた。高山 平の上からは、順光の太陽に照らされて、谷川岳、巻機山、とくに中ノ岳が大きい越後三山方面、 平ヶ岳、会津駒ケ岳が望めた。燧ケ岳と、至仏山はすぐ近くにある。

 ブナの樹海の静かな道に入ると、息子たちがナラタケを摘みつつ、かけっこ をして先行する。足元はふかふかして、膝にやさしい道。この区間だけでフィ ルムを1本、キノコの撮影で費やしてしまった。

 帰りの関越道、沼田インター付近から、鋭く突き上げる支峰をしたがえて、 どっしりとした大きな山容の武尊山が望めた。「武尊山の山の神様。ようやく 頂上に登らせていただきました。これからは気がねなく、ふもとの林を徘徊さ せていただきますね」。




  写真とカシミールによる山の同定の確認結果。
 いずれも武尊山山頂から、北アルプス。
山名    位置      見え方     現場確認   カシミール・チェック

穂高連峰 根子岳の右  全体・大きい  肉眼・写真  ○
槍ヶ岳   本白根山の左 肩から上部  肉眼・写真   ○
燕岳    白根山の左   稜線全体   ×見えず    見えるはず
鷲羽岳  白根山の右   ピーク・小   ×見えず    見えるはず
薬師岳  横手山の右   山頂部     ×見えず   ○
蓮華岳・針ノ木岳
      同 さらに右  山頂部・大   肉眼・写真   ○
立山   白砂山の右   山頂部     肉眼(写真) ○
鹿島槍  同 さらに右  山頂部・大   肉眼・写真  ○
剣岳   岩菅山の左   ピーク・小   写真       見えるはず
白馬岳                  ×雲で見えず  見えるはず







山の便り、大地の恵み (野原森夫)
http://trace.kinokoyama.net  
上信越 Index へ    HomePage TOP へ
記事、写真の無断転載を禁じます Copyright (c) Nohara Morio.
since Nov.2000