花繚乱の妙高・火打山

1999年7月28日




【行動タイム】西多摩の自宅(3:25発)→圏央道・青梅インター(3:38)→関越道・上信越道 経由→妙高高原インター(6:11)→笹ヶ峰登山口(6:35〜6:55出発)→富士見平分岐(8: 40)→高谷池ヒュッテ(9:08〜9:25)→火打山山頂(10:47〜11:00)→高谷池ヒュッテ (11:55〜12:15)→笹ヶ峰登山口(14:55〜15:55仮眠)→圏央道・青梅インター(18:50) →自宅(19:25)


 前夜は遅く帰宅。11時まで装備をそろえて、午前3時の目覚ましで起きる。3時25分発。

 

平日の早朝だけに、圏央道も関越道もガラガラ。藤岡ジャンクションまできて、さて、と迷 ってしまった。天気予報では西日本は大雨、北アあたりまでは雲がかぶりそう。予定通り火打 山をめざすか、それとも関越道をこのまま走って、別の山にするか。遠く、東の空は明るくなり だし、尾瀬・日光方面は晴れているようだ。結局、迷ったまま上信越道に入る。浅間山も妙義 山も上半分は雲の中だ。

 少し眠くなったので途中の佐久平PAで短い仮眠をとる。蓼科、八ヶ岳方面は稜線がきれ いに見えている。このあたりから北アの山並みが見渡せるはずだが、厚い雲
の中だ。

 長野市を5時30分すぎに通過する。いつのまにか高速道路が妙高高原町の先まで伸び ていて、妙高高原インターを下りて25分ほどで登山口の笹ヶ峰に着いてしまった。途中、杉野 沢の前後では道脇に、これから花を開こうと花茎を高く伸ばしたウバユリが目立つ。山菜のコ ゴミもウドも、このあたりでは雑草のごとく生い茂っている。ギボウシの花は盛りだった。

 登山口には車が12台くらい止められる駐車スペースが設けてあったが、休日には道路に 車があふれてしまう様子。先着が10台ほどいて、なんとか指定の範囲内に車を入れることがで きた。

 

6時35分、登山口(EL1320メートル)発。始めは、若いブナや白樺林の中の緩やかな登 りだ。空が雲でおおわれているので、暗くて涼しいなかを行程をかせぐ。途中、降りてきた二人 連れに聞いてみたら、昨日は山頂はすばらしい展望だったとのこと。「でも、暑くてたいへんだっ た。今日はその分、涼しいからいいでしょう」。うーん、暑くても遠くが見えた方がいいのに。

 

 30分ほどで大きな沢(黒沢)に出、倒木を利用した仮設の橋を使って渡る。このあたりか らブナやミズナラの大木が目立ち始める。枝ぶりに見とれながら、汗をかく。


 梅雨の直後だし、沢沿いとなればヒラタケが見つかるかもと、さきほどから道脇の倒木をキ ョロキョロ捜索しているのだが、食べられないイグチの仲間とか、毒のニガクリタケ、毒にも薬にも のベニタケの仲間などしか見当たらない。と、笹に隠れた倒木にびっしりと灰色のキノコがついて いる。ヒラタケのかなり大きな株だ。ヒダを見ると、残念なことに時期がすぎて老菌気味。「う〜ん、 せめてあと4、5日早ければなあ…」。この登りある案内板にはシラネアオイが出ているが、花期は とうに過ぎたようす。エンレイソウも黒い実をつけている。

 登りが急になり、十二曲がり(1790メートル)の少し上の地点で朝ご飯のおにぎりを食べる。 ここまで登って、笹ヶ峰の貯水池が見えた。途中、7パーティーほどを追い越してきた。富山からき た単独行の40代の男性、「高速を使わないで登山口まできたから、3時間もかかった」。柏崎から の3人の女性パーティー、「いつも見上げている山だから、登りにきたの」。福島弁の響きが懐かし い3人の男女のパーティー、「いやいやすごい登りだごど」、など。私と同郷の福島の3人は、下山し たあと隣りに止めてある車が「福島ナンバー」だったので、やっぱりと思った。シートに白山のガイド が載っていたので、妙高、雨飾などとあわせてハシゴ登山だろうか。話しながら登るわりには、けっ こういいペースの方々でした。

 富士見平の分岐で登りは一段落する。すでにかん木や根曲がり竹に植生が変わり、雨さえ 混じるガスが吹きつけてくる。「富士見平」の地名がむなしい。

 その後も「アルプス展望台」と標識がある小さな高みがあって、悶々として足をすすめた。

 やっぱりこの山に来て良かった。そう思ったのは、高谷池ヒュッテから火打山への登りに入 ってから(9時25分)。高谷池は標高2100メートル余りにある広い湿原で、池の向こうにはまだ 大きな雪田が残っていた。木道の両脇には今が盛期のキヌガサソウ、クルマユリ、ヨツバシオガ マ、クチバシシオガマ、ベニバナイチゴなどが次々と現れる。そして、一段高い台地へ上がると、 これが見たくてここへ来たハクサンコザクラが、あちこちに小さな群落をつくって咲いていた。つ ぼみが見当たらないので、もう花期は終わりが近づいているのだろうか。ツガザクラ、アオノツガ ザクラもそこここにかたまって咲いている。

 ハクサンコザクラは、木道から少し離れた小さな湿地に直径2、3メートルの大きさでまとま って群生しているところもある。でも、このぐらいの規模なら、白馬鑓ガ岳の大出原(おいでっぱら) の方が大きかったな、などと思いながら、次の「天狗の庭」と呼ばれる湿原に入っていった。すると ……。

 天狗の庭は、差し渡し200〜300メートルで、真ん中に大きな池がある。池の向こう(西側、 南西側)の斜面には3ヶ所ほど雪田が残っていて、よく見るとその雪田の斜面の下の草地が、何 ヶ所か濃い桜色に染まっている。木道から近い場所、池の南側の斜面も同じ色に染まっていると ころがあるので、よく見たら、これがハクサンコザクラの大きな群落だった。これはすごい。

 立ち入り禁止区域なので、近づくことも、撮影もできないけれど、きっと以前の高谷池周辺は、 たくさんのハクサンコザクラが咲き乱れていたのだろうと、楽しい想像を膨らませながら、残雪と湿 原と岩、そこに点在するハクサンコザクラの鮮やかな色彩の景色を眺めた。

 火打山の山頂へは、天狗の庭から稜線に上がり、ほぼ稜線通しに高度をかせいでいく。稜 線に上がったあたりでは、大きな雪田(雪渓の源頭部)がすぐ下(北東側)に現れ、新潟県の中郷 あたりの集落や田畑も見下ろすことができた。でも、少し高度があがると稜線は完全なガスに包ま れ、南西側から強く冷たい風が吹きつけてくる。ここでも花を見る以外は楽しみがなくて、ハクサン シャジン(4分咲き)、ウサギギクなどを眺めつつ、ゆっくりと登っていった。山頂の少し下に、小沢の 源頭にあたる小さな溝が南東側から上がってくるところがあって、そこの小さな残雪にかたわらにも、 ハクサンコザクラの群落があった。高山病になりやすい体質で、頭痛が出始めたので、途中、20分 ほど休んで呼吸を整える。寝不足はやはりよくない。寒いので雨具を上にはおる。

 10時47分、火打山山頂(2462メートル)着。視界は30メートル。眼鏡のレンズにすぐに水 滴がたまるほど、水っぽいガスが冷たい風と共に運ばれてくる。その寒い山頂に25,6歳の女性 がいたので、三角点の標識を入れてカメラのシャッターを押してもらった。彼女が言う。「もう1時間 もここで展望がよくなるのを待ってるんですよ。もし急ぐのでなかったら、30分くらい、つきあってい ただけませんか」。

 ええっ!? こんなことを山で言われたのは、初めてですよ。

 「今朝早くには、途中で北アルプスも見えていたんですよ。展望はよくなるのかしら」

 

 風が出てきたし、運頼みですね、と言って、カシミールで確認してきた晴れていればの大展望 の話を教えてあげ、「無慈悲でしょうが、夕べは3時間少ししか眠っていなくて、帰りの運転が心配 なんです。下で花の撮影もしたいし、降りちゃいますね。後からすぐに何パーティーか登ってきます から」。ごめんなさい。

 11時ちょうどに、下山開始。

 下山は、カメラをぶら下げて、ゆっくり下った。ハクサンコザクラは念入りに撮影した。ツガザ クラは、マクロでアップすると、愛らしい。クチバシシオガマも、品があっていい花だ。天狗の庭の池 の対岸の眺めに、また見とれる。

 高谷池ヒュッテからの下り。いつまでも頭痛が治らず、ゆっくりゆっくり下る。ばてて体を横にす ると、すぐに眠ってしまう。富山からの単独行の彼に追い付かれて、いっしょに下る。なんども休んで 笹ヶ峰の登山口へ降り立ち(15時05分)、40分ほど仮眠して頭をすっきりさせてから車を走らせた。

 下山の途中、小沢を渡るところがあったが、いい川底の色なのでもしかしたらと思って眺めた ら、20センチほどのイワナが1匹、人影にびっくりして深みの石の下に逃げ込んだ。展望なしだった けれども、いろんな楽しみがあった妙高・火打山。今度は湿原のイワイチョウが黄葉し、ナナカマドが 赤く染まり、キノコがわんさかの秋に、展望を確認しに再訪したい。

(西多摩の自宅に午後7時半前に帰宅。車の走行距離は往復563キロ。)





山の便り、大地の恵み (野原森夫)
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