展望の山、岩と花の山、大源太山へ

2002年5月30日(日帰り)


 「上越のマッターホルン」という個性的な愛称がつけられている 大源太山(だいげんたさん、1588メートル)に、越後湯沢側か ら往復で登ってきました。新緑と残雪が輝く季節のうちに、と好天 を待っていたのですが、今日はなんとか午後まで天気がもちそう だったので、代休をあてて出かけました。



湯沢町の旭原から望む、大源太山

 印象と感想をまず。

 1)ふもとの旭原の集落から大源太山を見上げると、尾根筋にはも う雪はまったくなし。双眼鏡でチェックしたうえで、もしもと思っ て用意してきた残雪用の装備はすべて車に置いて、軽装備(スパッ ツも不用)で往復しました。もう一つ心配していた2度の渡渉も雪 融けの増水はおさまり、道が不明瞭なところが少しあっただけで、 大丈夫でした。
 山頂手前の西尾根は、北側はずっと断崖で、一部、南面もやせて いる場所があります。転倒にさえ注意すれば、むずかしいところは ありませんでした。

 2)登り下りの効率がたいへんいい山です。沢を離れ支尾根にとり ついからは、緩い部分はわずかでぐんぐん高度を上げていきます。
その分、時間はくわずに往復できました。

 3)展望も高度をあげるにつれ、ぐんぐん広がります。谷川連峰と 湯檜曽川源頭の山々、巻機山、平ヶ岳、至仏山、苗場山などが望めま した。でも今日は霞みが多い天気で、苗場山も霞んでいました。妙高など遠 望はほとんどだめで、もちろん佐渡も見えず。

 4)GPS12でトラックログをとって往復したところ、25000 地形図の登山道のラインはかなり間違っています。1161メート ルの支尾根の上部に出るまで、全然別のルートをたどりました。
 25000地形図では登山道は大源太川源流の北沢の右岸(上流 から見て)に引かれています。実際には、登山道は第一渡渉地点で 左岸に渡り、第二渡渉地点で右岸に渡り返します。そこから先も、 地形図とは違って登山道は枝沢をすぐ離れ、支尾根にむかって急 登。支尾根の1166メートル地点で地形図の登山道にようやく合 流します。
 地形図の道がこれほど長い区間にわたって違っているのもめずら しい。





北沢沿いの登山道の拡大図。
赤い軌跡はGPSのトラックログで、左上の起点が登山口(駐車場)。
25000分の1地形図では、北沢の右岸に点線のトレースがある。
実際にはGPSの赤い軌跡が示すように、道は北沢を渡渉して、左岸を行く。
2度目の渡渉で右岸に渡り帰してからも、実際の登山道
は枝沢(ムラキ沢)をすぐに 離れ、支尾根へ直上するように登る。
GPSのトラックログは、2本が記録されている。
これは、往復で若干の誤差が出るため。


 5)春から初夏にむかう花の季節を迎えていました。タムシバ、ム ラサキヤシオ、ガクアジサイ、アズマシャクナゲ、イワカガミ、ミ ソガワソウ似の花、ハルリンドウその他。

 6)山菜はいろいろ出会いました。そのうち○シア○ラの木はとて もいっぱい。たくさん写真を撮りました。(資源涵養のため一部伏字)

 7)平日のせいでしょうか。往復の行程で、私たち夫婦以外、誰に も会わない山道でした。

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東京・西多摩の自宅(6時02分発)車→圏央道・関越道→湯沢イ ンター(8時19分)→登山口の標柱から大源太林道へ→登山口 (標高732メートルの林道終点、8時45分着、車10台ほどお けるスペース)

登山口(9時12分)→第一渡渉地点(標高781メートル、9時 25分)→第二渡渉地点(標高847メートル、9時46分)→支 尾根を急登→西尾根に出合う(1264メートル、10時52分) →大源太山頂(11時43分着、同56分発)→第二渡渉地点(1 3時14分着、同28分発)→登山口(13時54分着)

登山口(14時03分発)車→東京・西多摩の自宅(16時46分 着)

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 関越道の湯沢インターから7キロほど車道を走ると、大源太川(弥助沢)沿 いの旭原という集落に入ります。車道の右脇に「大源太山登山口」と書いた 大きな標柱が立っていました。前方に、ごつごつした岩の塊のような大源太山 が立ち上がっています。ずんぐり、もっこりした姿は、「上越のマッターホルン」と いうよりも、北アの五龍岳あたりに似ている。

タニウツギ タムシバ

 この標柱から「林道 大源太線」に入って約3キロ、林道終点の登山口まで車 をすすめました。タニウツギの桜色の鮮やかな花が満開で、林道 沿いは新緑と花の色に染まっています。林道は大源太川の右俣にそってすす み、クロガネ沢の出合で橋を渡って、折り返して登ります。終点の登山口(標 高732メートル)には、登山道の始点を示す道標があり、車が10台停められ る駐車場がありました。2台が先着していましたが、どちらも道の周辺でワラビ を採る人たちでした。

 さきほど麓から眺めて、大源太山の尾根筋にはもう雪はまったくないことが確 認できました。もしもと思って用意してきた残雪用の装備はすべて車に置き、ス パッツも置いていくことにしました。

 9時12分、林道終点出発。
 最初は植林地の刈り分け道をたどり、北沢沿いのブナ林に入っていきます。10 分あまりで最初の渡渉地点(標高781メートル)。長さ8メートル、太さ25センチ ほどの四角い柱が渡してあります。その角材が右斜めに傾いていて、橋の下1・2 メートルほどの流れは水勢が強く、岩があります。滑って落ちるとけがをしそうなの で、7、8メートル上流側の浅瀬を石跳びで渡渉しました。(帰りはこの石跳びでヨ メさんが足を濡らしました。)
 北沢には、上流にもう1カ所の渡渉地点があります。雪解けの増水を心配して きたのですが、今日はほとんど平水で、これなら大丈夫と思いました。

 橋の対岸(上流から見て左岸)に渡ってすぐに、シシゴヤの頭から蓬峠へ新たに 作られた道の分岐点がありました。左岸に続く道は、倒木が落ち込んだ枝沢を 渡ったり、雪で押しつぶされて行く手を通せんぼする灌木の枝をくぐったりして、進 みます。エンレイソウは花が終わり、○シア○ラ、ヨブスマソウ、ミヤマイラクサなど の山菜が現れます。



北沢の2度目の渡渉点。左岸から右岸へ渡り返し ます。ロープあり。

 9時46分、第二の渡渉地点(標高847メートル)に出ました。右岸から枝沢(ムラ キ沢)が幅40センチのゆるやかな樋状になって流れ込んでいます。北沢の渡渉場 所には増水時の支えのために2本の作業用ロープが渡してあります。水量が少な い今日は、ここも石跳びで楽に渡ることができました。
 北沢を右岸へ渡ったところは、増水で沢床が荒れて進路がわかりにくい。ムラキ 沢の落ち口より7、8メートル上流へすすんだところに、踏み跡が見つかりました。

 道はムラキ沢の左岸沿いに30メートルばかり進んだあと、右手の支尾根のてっ ぺんに向かって、かなりの傾斜を登りだします。
 支尾根の登りは、ブナの樹林の中で、風が弱く、蒸し暑い。汗が落ちました。支尾 根そのものが急角度でせり上がっているのに、道はこれも効率的に、ほとんどジ グザグなしで尾根筋を直上しています。

 この道には、上部の稜線(弥助尾根=西尾根)の下まで、ほとんどの区間にずっと ロープが張ってあります。登るときは、このロープが少しじゃまでしたが、下降は滑 りやすい急坂で、バランスを助けられつつ一気に下ることができて、ありがたいロー プでした。雨の時などは、このありがたみはひとしおでしょう。道脇の樹木の枝に手 をかけて、傷つける心配が少ない点も利点と思いました。

 道脇の樹木で目立つのはブナですが、○シア○ラも群生状態の場所が目立ちま す。山頂手前の、風と雪に圧っせられている場所で は、幹が屈曲し、枝分かれした○シア○ラの木から、瑞々しい芽が出始めているの にも出会い、岩場から落ちないように注意しながら写真に収めることができまし た。ムラサキヤシオの鮮やかな花も、残雪の山々を背景に美しい。

葉が開いた○シア○ラ。
標高1100メートル
ムラサキヤシオ

 今日は不調というヨメさんが、「荷物を背負ってくれ」というので、サブザック1個 分を余計に詰めました。ところが、さっさと先行して行ってしまい、写真を撮りなが らの私は随分引き離されてしまいました。
 ブナ林を抜けた笹原で、追いついたところに、カタクリ似の葉が笹藪に群生して いる場所があります。「カタクリじゃないのか?」「だけど、葉が丸すぎるね」「そうい えば森林限界を超えた稜線下のこんな場所に、あるのも変だ」と少し議論になり ました。そのときは花や実が見つからず、決着がつかなかったのですが、帰りに 時期遅れで花を咲かせているカタクリが数輪、見つかって、その生命力に感心し ました。なんとも不思議。地面が深くまで凍結するような場所だと思います。笹藪 が防風に役立ってくれて、冬越しは雪のふとんの保温効果?の故でしょうか。



すみません。マクロ・ボタンを押さずにシャッターを切ったた
めに、後ピンになってしまいましたが、
稜線直下のこんな場所で
正真正銘のカタクリです。


 10時52分、弥助尾根(西尾根)に到達(1264メートル)。この尾根道でも、アズ マシャクナゲ、ハルリンドウ、イワカガミなど花に次々と出会い、一年ぶりに見 る山の花に見入りました。



弥助尾根(西尾根)に上がって、大源太山を眺める。
元気が良ければ近く見えるが・・・。



山頂手前の稜線で、風雪に
耐えて芽吹く○シア○ラ
断崖に芽吹く○シア○ラ


 尾根の左(北)側は、大源太川の左俣の源頭部で、急傾斜の岩壁です。はるか 下方に、雪渓が光っています。大源太山の山頂部は、雪で磨かれた屏風のような 岩場の上にのっています。私たちがたどる登山道も岩の上をたどる場所が出て きました。ところどころ、右(南西)側の尾根もやせているところがあって、一部分 では両側が断崖で幅80センチ、長さ3メートルほどの、ごく短い「戸渡り」をする 場所もありました。残雪の季節、早い時期にくるとたいへんです。一か所ある鎖 場は、傾斜が緩くて安全な場所ですが、せっかく張った新品の鎖が一部、抜けて いました。この時期は、全体に未整備の道です。
 ヨメさんは、「遅いとかえってこたえる」といって、また先行します。私は少しばて て息が乱れ、足元だけを見て、高度をかせいで行きました。山頂の道標が見えま すが、まだ100メートルは先。一歩、一歩、足元だけを見て登っていったら、ふい に目の前にその道標が現れ、狭い高みに出ました。

 11時43分、大源太山頂着。
 東西に4メートル、南北に10メートルほどの、細長いピークでした。四方が、すとんと 落ち込んでいて、見晴らしがいい。頂上に立って、立った甲斐があるという山頂の様 子です。「平らな山頂よりも、こういうはっきりした山頂が、私は好きなのよ」とヨメさん は、いつものせりふをいいます。私は、その山が個性的だったら、どっちもそれぞれ好 きですけれど。



10人くらいなら、休める広さがある山頂
道標の右下が、登ってきた弥助尾根コース。
後方は谷川岳、一ノ倉岳、茂倉岳方面


 大源太山は、1600メートル足らずの高さですが、国境稜線から北へずれて位置し ていることと、周囲の峠や尾根が、ここより低いために、ほぼ全周が見渡せます。
 逆光で条件はいま一つでしたが。



左はしの巻機山から、右はしは朝日岳、笠ヶ岳への稜線



平ヶ岳が、鞍部(檜倉乗越)の彼方にうっすらと見えた



至仏山が、大烏帽子山の左に見えた

 まず北から南東へ。清水峠と湯檜曽川をはさんだ山々が目の前です。左(北)奥か ら、残雪がたっぷりの巻機山から大烏帽子岳への長い、ゆるやかな稜線。続く朝日 岳はひときわ大きく、笠ヶ岳が右へ連なります。
 巻機山から大烏帽子岳の稜線の途中の鞍部(檜倉乗越)に白いゆったりとし た山容が見えました。現場では、越後三山の一角かと思いましたが、帰って調べてみ たら平ガ岳でした。その右には、燧ケ岳と至仏山もちょっぴり見えるはずですが、写真判定で確認 できたのは至仏山でした。

 今度は南から西へ。



大源太山頂から、南〜南西方面

 一ノ倉岳は、こちら側は残雪が光っています。その左肩に谷川岳が見えます。右 へ間近に茂倉岳、右奥へすっきりした三角錐の万太郎山、印象深い山容です。 さらに右へ、ずんぐりとした仙ノ倉山。
 佐武流山と岩菅山は遠くもやの中。薄いもやの中に苗場山、神楽岳が判別できます。妙高連山、そして佐渡 島も、遠すぎて今日はだめでした。

 山頂は風がなく、ブユがわんわんと集まってきて、顔を刺そうとします。撮影を急いで すませて、11時56分、下降開始。
 尾根の下降に入ると、風が流れ、虫は消えました。とくに上部は、北側が垂直に近い断 崖なので、転倒はできません。危ないところは声をかけあって下降しました。その付近か ら眺める山頂部は、磨かれたスラブ状の岩がばっさり切れ落ちて、大源太山の風貌が一 番よく現れている感じがしました。



七ツ小屋山

 南面の七ツ小屋山へせり上がる北沢の支流の源頭部も、谷が深く、高度感がありま す。ブナが幾筋もの支尾根をたどって、上へ上へと登って行き、その支尾根を挟む谷筋 には細く雪渓が残っていました。豪雪と雪崩に枝を屈曲させたブナの葉は、まだ淡い緑 色です。春の終わりの時期の山の眺めでした。七ツ小屋山も、なかなか大きくて、いい山 です。

 1時間20分ほどで北沢の第二渡渉点まで下降。この下降では○シア○ラ以外にも目を やるゆとりができて、ガクアジサイやタムシバも撮影できました。
 登山口に午後2時前に帰り着きました。平日のせいもあったでしょうけれども、ずっと誰 にも会わない行程でした。

 第一渡渉地点から分岐して、シシゴヤの頭に新たに道が開かれていますが、ここから蓬 峠、七ツ小屋山、大源太山と一巡りして、同じ登山口に帰ってくるルートも、さらに人気が なくて、おもしろそう。巻機山の米子沢、ワレメキ沢を埋める雪渓や朝日岳から巻機山へ と続く、残雪たっぷりの稜線にも心をひかれました。





山の便り、大地の恵み (野原森夫)
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