2人用山岳テント
タッドポール23 コンバーチブル


使用雑感  2006年8月




タッドポール23 コンバーチブル。
フライをセットしたところ。雷鳥平CPで 


 山に登り始めて35年。テントは、昔の家形テントをふくめて、これまでに大 小6つを使ってきた。
 今季、軽量で耐風性がいい小型テントを、7つめのテントとして調達した。ノース フェイスの「タッドポール23 コンバーチブル」で2人用、約36000円。2、3 年前に?出たモデルで、購入した2006年7月時点では、各店に在庫はほとんど なかった。幸い、新潟県内の店に見つけることができて、すぐに購入を申し込んだ。
 パーマークという山・アウトドア用品店 (http://www.parrmark.co.jp)。翌日には発送してくれて、ありがたかった。

 2人用のテントの導入は、ツェルトを除けば、1975年に購入したダンロップの 初代吊り下げ式ドームテント(当時の購入価格で24000円)いらい、3つめにな る。
 我が家で、現在、運用しているテントは、以下の通り。

 ICI石井ゴアテックス スタードーム 3〜5人用
  (1999年購入) 購入価格 フライ共 約11万円
 秀山荘 ZONEテント 4人用
            (1987年購入)   4.5万円
 初代ダンロップ吊り下げテント 2人用
       (1975年購入)   2.4万円



フライシートを外したところ。「タッドポール23」のキャンプ用 は、本体の屋根の全体がメッシュ構造になっている。この「コンバーチブル」は登山用で、天井と後部の メッシュ開口部は直径40センチ前後で、パネルで閉じることができ、保温性と強度が上がっている。

 

 2人用が新規に必要になったのは、子どもたちが大きくなって、夫婦2人の山行の 割合が多くなってきたため。私たちには、中型テントでは大きすぎるし、体力的にも 負担を感じてきた。

 初代ダンロップを更新した理由は、
 1)当時のこの初期モデルは、オールフライでなく前後の壁が丸出しのため、耐風 性に難がある、
 2)フライがない分、前後の壁に防水加工がされており、そのために室内側の結露 がひどい、
 3)ポールが10ミリのジュラルミン製で今となっては重過ぎる、
 などが理由だった。
 もちろん、現在のダンロップ(商品ブランド名は今年変更)のドームテントは、以上 の欠点は解決されている。このダンロップ2人用は、札幌で学生生活を始めた長男に 譲り、この夏は利尻島に渡った。



30年使ったダンロップ初代ドーム。最近では2004年
にナルミズ沢で世話になった。よく働いてきたと思う。


 数ある2人用山岳テントのなかで、選択のうえで、最後まで候補に上がっていたテ ントは、
 ICI ゴアライトXテント2〜3人用
 カモシカ エスパース duo 2人用
 アライ エクスペディション・ドーム ゴアテックス2人用
 ノースフェイス タッドポール23 コンバーチブル 2人用
だった。いずれも、山用としてまずまずのつくりで、必要な大きさがあり、 本体の布地は30から40デニール・ナイロンなどを用いている。
 このなかで「タッドポール23 コンバーチブル」を選んだのは、耐風性が良さそうな構造をし ていたからだった。

 山の稜線は、夏でも風が強い。私たちも、ピンチに遭遇したことがあった。
 北アルプスの双六のキャンプ指定地にベースを置いたときのこと。3日ほど続けて強 風と大雨が続いた。幕営2日目の夜、もっとも激しい風雨がきた。
 他のパーティーでは、ICI石井ゴアテックス スタードームが、防風のための石積 みが不足してポールが傷み、倒壊。隣りのダンロップの6人用の大型テントは、使い込んだ古いフ ライがちぎれ、本体に破れ目が入った。
 このときの我が家のテントは、秀山荘 ZONEテント 4人用。不十分ながらも、高さ 50センチ前後の石積みの壁を作っていたので、破損はまぬがれた。しかし、夜半に、フレームが折れそう なほどにたわみ、風圧のなかフライとテント地を通して、雨が霧状になってテント内を濡 らした。
 その日は、双六の天場から往復10時間行程で、水晶岳に登っての、夜だった。
 夜8時から12時すぎまで、激しく揺れるテント内で、断続的に猛烈に吹き付ける風に たいして、壁をささえるなどして頑張ってみた。でも、そのままでは眠ることは、もちろ んできない。ポールや布地が傷む恐れがあった。そのうえ、我々は家族登山だったから、2 人の小学生の息子がいっしょだった。

 ついに安全のために、雨具を着込んで必要装備のみ持ち出し、脱出。ポールを抜いてテ ントを倒し、重石にのせて、双六小屋に退避した。
 強風2晩めのこの夜は、3パーティーが小屋に逃げ込んでいた。夜が明けて、「全然、眠 れなかった」という他のパーティーの話を聞いて、早めに退避して良かったと思った。睡眠不 足の私たちの場合は、翌日は、笠ヶ岳への縦走をあきらめ、下山することになった。

 幕営では、テントの性能だけでなく、風を考えた設営の如何が結果を大きく左右する。破損 や倒壊は、テントの性能だけに原因があるわけではない。しかし、テント自体、風に強いつくり になっているかどうかが、非常に大きな問題だと感じてもきた。

 「タッドポール23 コンバーチブル」は、2人用なのに3本ポールを使っている。2本 ポールの十字型に比べると、たわみは押えられ、がっしりした造りだ。立ち上げた本体は、張り が強く、ぴっしりとしている。フレキシブルに本体が変形することで耐風性を保つ他のテント とは違い、剛性を感じるような感触がある。
 そして、背が低い。これは残雪期などをふくめ、防風壁を設ける場合なども、長所になる。
 フライをかぶせると蝶の蛹のような姿になり、流線型をしている。風に縦方向に立ち向かう と、かなりの耐風性を保てると見た。
 3本ポールは、重量の面でハンディがあるが、このテントは重量も合格ラインに抑えられて いる。たたむと夏山用シュラフほどの大きさに収まる。

 初使用は、今年(2006年)7月末の南アルプス・聖岳の聖平のはずだったが、事情で 1週間延びて、8月上旬、立山の「雷鳥平幕営場」となった。2泊をベースキャンプ用に 使った。



内部の壁には、メッシュのポケットが4つある。便利だった



4つのメッシュのポケットのうち、片側分。
友人の家で子どもが遊んだときに撮影


 難点も含めて列挙すると、使用感は次の通り。

1)室内の天井が低い。
 前部の半円ポールの真下以外は、高さが90センチかそれ以下しかない。大人が座っているこ とができるのは、この半円ポールの真下だけ。室内での活動が制約される。そのため、寝そべって いる時間が長くなる。95センチほどの高さのエリアを、室内の中央部あたりまで拡張すると、か なり楽になりそう。身長180センチ前後の人には、このテントは不向き。

2)底面と容積は大きい。
 床は220センチと細長く、面積は2人用としては広い。幅117センチもちょうど良い。通 常のX型ポールよりも、構造上、両側の壁が垂直に近く立ち上がっているため、これも広さに プラスしている。
 またフライによって、長さ94センチの前室がつくられる。この半分の部分に、2人分の登 山靴、ごみ収納袋、2つの水タンク、コッフェル、コンロ、蚊取り線香などを置いたが、通り 抜けは支障なかった。
 フライ設置時の長さは314センチと長い。縦に風を受けられるように張りたいが、それが できない設営場所もありうる。

3)バーナーの使用場所に困るテントだと感じた。
 雨天や、積雪期には、前室、あるいは本体内でバーナーを使うことになる。その場所は、室内の高 さの制限から、半円ポールの真下の範囲(本体最前部)に限られる。ところが、ここには、本体の 入り口があり、入り口の下壁が立ち上がっているし、上部からも入り口の壁が下がっている。熱放 射などを気にすると、前室の地面にバーナーを置かざると得ないが、この場合も入り口まわりの壁 や、前室の天井の高さが気になる。高さ1メートルほどのエリアにもう少し、余裕があれば、バー ナーをより安全に使えるのに。安全な調理には苦労する。
 メーカーの注意書きでは、室内でバーナーは使用禁止だ。しかし、そんな山岳テントはありえな い。まして4シーズン使用をうたっている「コンバーチブル」タイプではないか。慎重にガス・バーナー やガス・ランタンを使った。ホエーブスのようなガソリン・バーナーはもちろん無理。

4)フライ前部(開口部)の構造はオープン時の雨対策が不足。
 この点は、小型テントに注文するのは、無理な面もあるが・・・。
 本体、フライともに、出入り口の造りが、まだ工夫がいる。
 夕立ちにあってわかったが、フライの出口と、本体の出口を、ともに開けておくと、本体の床(入 り口付近)に雨が落ちてくる。
 通常、前室のある中型以上のテントでは、フライの前部の屋根が本体の入り口を十分に上から覆う つくりにしたうえで、出入り口(フライの開口部)を、より前方に設けている。だから、雨が降って も、本体内には降りかからない。雨が降る中でも、フライの出入り口と本体の出入り口を開けたまま で、調理が行なえる。
 ところが、タッドポール23では、小型テントの制約のためもあって、フライの出入り口は、本体 の出入り口と重なっており、フライ開口部を通過した雨滴が、本体出入口をも鉛直に落ちて通過し、 雨がテント内部の床に落ちてくる。
 逆に説明すると、雨が落ちて濡れる床に頭をおいて真上を眺めると、テントとフライの開口部を通 して、空が見える。
 フライの出口の上側のファスナーを閉めたまま、下側を下半分だけ開放すると、雨が降りかかるの は防げた。しかし、これだと、前室は入り口のすべてを閉じたままと同じ空間しかなくなり、バーナー を使うにはやや危うい。
 ただ、3)、4)の問題は、これをクリアしている2人用テントは、あまり見たことがない。横に比 較的大きな前室がある、エスパース duo は、少し良いようだ。アライテント(ICIも)の大きめの 前室つきのフライも、雨対策の点では良さそうだ。後者は、耐風性が心配だが。

5)防水性は十分。
 フライの防水性はかなり良い。
 フライの構造面では、本体との間隔はほぼ十分だが、後方(足元)の両側の壁の部分で、本体がフライ と接触する。強い風を伴う場合、フライの下部や、フライ布地そのものからも、雨滴が噴霧状態で本体 に入りこんでくるが、この条件にはまだ出合っていないので、不明。
 本体にも撥水加工がしてあり、使い始めでは水滴をよくはじいた。逆に、布地の通気性がやや不安に なった。

6)風通しに難? はフライの調節で
 雨天のなかで一晩めを過ごしたが、テント本体内部はサラサラだった。通気性はまずまず。春山で使 うと、壁の結露もテストできるだろう。
 オールフライのためと耐風構造から、風通しは、良くない。これは、山用テントとしては、マイ ナスにならない。
 一日目、日差しが強い午後を過ごした。フライは直射日光で熱せられて、本体天井のメッシュ窓を開 けておくと、フライからの輻射熱が内部に差し込んできて、本体内も温度が上昇した。
 そこで、本体後部のメッシュ窓を開け、その外側のフライも本体が露出するように、捲り上げて固定 した。風が、後部のメッシュ窓から、本体入口方向に向かって、一気に流入し、流れだしていった。こ うしておくと、フライと本体との空間にも、よく風が通る。本体の温度も下がり、ずっと過ごしやすく なった。
 前後からの風に強いつくりのテントだが、風を取り入れるときは、フライの張り方を加減すると良い ようだ。

 まとめ。
 一応は所期の目標に応えてくれた。耐風性、広さ、防水性、軽量。大事な点はクリアしている。
 正直、もう一言二言いうと、色は赤系ではなく、ワサビやブルー系が選べると良かった。古い 広告では、赤以外もあった。まあ、赤も、この赤は落ち着きがあって品がいいが。
 それと、天井に張る専用のメッシュ棚も求めたが、横幅のサイズが符合せず、たるむは、天井はさらに 低くなるはで、改良を決意させられた。ノースフェイス社のこの製品はこのテントには不適合。本体内面に3箇所の フックを引っ掛ける紐が設置されているが、うち2箇所は前部にあり、身動きを制約される。ここには棚は設置できない。 後方の天井に設置するコンパクトなメッシュ棚なら、落ち着きがいいと思う。ICIのドームでも 私は自作した。
 設営地の条件、季節、人数などを勘案して、用途に合わせてうまく使っていきたい。





山の便り、大地の恵み (野原森夫)
http://trace.kinokoyama.net  
   HomePage TOP へ
記事、写真の無断転載を禁じます Copyright (c) Nohara Morio.
since Nov.2000