杉材で燻製器(手作りスモーカー)を作る

2005年12月


 2005年の年末、クリスマスとお正月用のオードブルを作るために、燻 製器(スモーカー)を自作しました。
 手作りしようと思いたったのは、これまで20年ほど使ってきた燻製器の使 い勝手が、いま一つだったからです。

 1)スチール製で、内面に水分が結露しやすい。適度な水分抜けができいく い。
 2)煙のスス成分を吸ったその水滴が材料に滴下して、表面を汚す。
 3)容積が小さく、材料を余裕をもって入れられないだけでなく、温度管理 もしにくい。
 これらが自家製を思い立った理由でした。



側面を組み立てて屋根を打ち付ける直前の段階の写真。
屋根はこのように大きな傾斜をつけました。
屋根下の内部にある3本の細い円柱は、材料を提げるためのもの。
最上段で熱源から離れ、冷燻などに使う場所です。


 新しく作る燻製器は、常時、戸外に設置しておく予定です。そのため材料に は杉材を選びました。
イ)雨を受けても腐食しにくく対候性がほどほどにあること、
ロ)柔らかい材で加工しやすいこと、
ハ)荒材という板だと12ミリの厚さがあり、幅15センチ、長さ3.6メート ルのものが1本500円余で買えること、
ニ)檜や杉の木目が好きなこと、
ヘ)そして木材一般にいえることですが、機能的にもスモークの最中に適度に水 分が抜けていくし、外気が寒くても温度保持がしやすいこと、なども好ましいと 思いました。

 もちろん、雨が降りかかることも考慮し、完成後は屋根や外壁の外側部分にだ けは、防水・防腐効果を期待してオイルステインで塗装をしました。これをしな いと、戸外での設置には耐えられません。材料をいぶす内面は、無塗装です。何 度も煙で燻されるうちに、昔の囲炉裏のある家の板壁のように腐蝕しにくい表面 ができあがってくるのを期待しました。
 購入した杉荒板は、全体で4000円分くらいになりました。

 自分で作るわけですから、材料選択だけでなく、設計・構造にもこれまでの体 験で気が付いた改善点を幾つか取り入れました。



屋根と前面の扉を付ける前の段階。斜め前から見た写真です。

 その1)板材とはいえ、状況によっては結露が起こる可能性があります。その水 滴が食材に滴下しないように、屋根も内壁も、できるだけ突起や凹をなくし、垂 壁や傾斜のある平滑な壁で囲むようにしました。屋根も平らでは結露・滴下しや すいので大きな勾配をつけました。万一、結露しても、屋根裏の急斜面から落ち ずに流れて、壁に導かれるように、屋根は前後で40センチの落差をつけまし た。



ほぼ完成し、扉も屋根もつけた状態の写真。
扉は、使わなくなり解体した台所の食料棚(自製)の扉を転用しました。
この扉はパインの集成材で、ニスを塗っています。




下段が燻煙材を入れたり、電熱器を設置するための扉。
とりあえずブロックを底面に置いていますが、
厚さ5センチのコンクリート板を試験運転では使いました。
中央の扉は食材を出し入れするためのものです。


 その2)高さを145センチほどとし、熱源からの位置を20センチほどから 1メートルほどまで自由に変えて材料を設置できるようにしました。

 その3)燻製器の前面には3つのドア、出入り口を設けました。
 下に電熱器の調節や燻煙材を出し入れするための作業口。
 中段に大きく開口する食材用の出し入れ口。
 そして屋根が一番高まった最上部に、小さな通気口です。
 これまで使っていたごく旧型の燻製器は、上部にふたがあるだけで、一斗缶を2段 重ねにしたような構造でした。いちいち全体を持ち上げないと、燻煙材も追加できな い造りでしたので、今度はアクセスが大きく改善しました。

 その4)3つの開口部は、密閉の良い造りを考えました。扉と壁の間に隙間ができ ないように、開口部の内側に板を張って、開口部を少し狭めています。その板の上に 扉が重なるように締まるので、煙や熱は逃げにくい構造です。上部の通気口も開口部 より大き目の引き戸で締める方式です。



一番上に排気口を設けました。
気密性を上げるために、スライド式の小さな戸を使っています。


 しかし、材料が木材となると、鉄板とは違う困難がもちあがります。杉板は1回め の使用と戸外で冬風に当たるうちにかなり収縮し、板の間の隙間が広がり、試運転では 煙も熱もどんどん外に漏れ出しました。隙間は接着剤と充填材とで目止めをしました。 屋根はとくに熱と煙がもれやすいため、板の合わせ目にさらに板を上から重ねて打ちつ け、密閉と雨除けを確保しました。こういう補修・調整はこれからも必要でしょう。
 密閉をよくした分、通気口の開閉加減で、かなり人工的な温度と煙の管理ができそう です。

 その5)燻製器の底面は床張りはしていません。庭のデッキの上や、地面に直に設置 します。必要に応じて電熱器を熱源に使いますので、安全のためにも、底に厚さ5セン チのコンクリートの敷石を置き、このうえに電熱器や燻煙材を入れる鉄製容器を設置しま す。
 この鉄製容器は、もう10年ほども燻製器で使用してきた、肉厚のパエリア皿の小型 のものを、使用します。

 さて、試運転です。
 温燻(60度から70度)は、材料にホタテ貝柱の生のもの、プロセス・チーズ、か まぼこを試しました。ホタテ貝柱は、事前にソミュール液で味付けをし、一晩、風乾し ました。隙間から熱が逃げたせいか、温度は50度まで上がったかどうか。このぐらいに 上げると、プロセス・チーズはやや融け出して、形が崩れ、チーズの限界です。ホタテは 熱源に近く置いたのですが、まだ生加減。スモークしたあとさらにふた晩、乾燥させて仕 上げました。



スモーク前の生の鮭(今回はトラウト・サーモンを使用)

 冷燻(30度以下)は、スモークサーモンを作りました。電熱器は使わず、桜のオガ クズを固めたスモーク・ウッドを鋸で細めに切り出したものを使用しました。温度を上げ られないので最上部に鮭を吊るし、外気温が下がる夜間だけ、スモークしました。これも ソミュール液(玉ねぎとりんごをすりおろし、塩と月桂樹の葉、胡椒を加えて煮沸して冷 ました液)に2日間、漬込んだあと、2晩、風乾。スモークしてまた干す工程を3日間、 繰り返して仕上げました。

1度スモークをかけて、
一晩、風乾中
   背側
 こちらは温度がピッタリだった様子で、すばらしい出来栄えでした。
 これまでと違い、デッキに常設しているので、思い立ったら手早く燻製できるのもいい ことです。



試験運転で作成した、4種類のスモーク

 今後の改良・改造点は、以下のようなことです。
 A)温度調節を確実にするため、サーモスタットを装着する。
 B)ステンレスの材料で、食材を載せる網をもっと作る。まだ2枚しか作れていませ ん。ステンレスの針金を曲げるのがむずかしい。
 C)温度を上げずにスモークする条件を改善するために、別立てで燻煙室を作り、ステ ンレスの筒で、この燻製器に煙を導く方式を考える。
 スモーク・ウッドは簡便です。しかしコストや自然素材の利用を考えると、私の場合、桜材は入手可能なので、自前で燻煙材をた くさん用意したいと考えています。



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野原 森夫