帆布サブザックの加工・改造 (完成編)

  2004年11月


◆雨ブタポケットの製作

 加工・改造その3は、雨ブタポケットの製作です。ザックのてっぺんに乗っている雨 ブタに、ファスナーで開閉する物入れがついたものです。
 この製作は、これまでで、一番、苦労しました。時間がとれたときに、ゆっくり少し ずつ、作業をすすめました。



先に、雨ブタポケットを作り上げて、
「オプタテ」に取り付けた完成写真をお見せします。

第1ステップ 型紙をつくる → 帆布を切り出す
 雨ブタポケットは、ザックの上部にすっぽり被るものですから、雨ブタの底の形がか なり独特な立体形状になります。上面のポケット部分の上面(天井部分の布地)は水平 でもかまわないのですが、底はザックを横からみて、U字を逆さにしたように湾曲しま す。
 手間と苦労がかかったのは、この形状のためです。

 どういう寸法やカーブになるか、予想がつかないために、まず雨ブタポケットの実物 大模型を製作しました。帆布サブザック「オプタテ」に仮の荷物を積め、その上にうま く乗るように、茶色のやや厚地の包装紙を切りぬいて、ガムテームでとめて、模型を仕 上げました。
 そして、この紙製の模型を、切り開き、展開して、型紙を作りました。
 さらに縫い代分を見込んで、型紙をもとに、材料の帆布から、雨ブタポケット用の布 を切り出しました。

 写真が、型紙をもとに切り出した、布です。湾曲した立体形状をもつために、布地の 縁がカーブしています。雨ブタの底布になるフタの部分も、中央部が盛り上がる形状に なるように、あとで両端をつめて、縫いました。
 この帆布は、札幌の秀岳荘から、「オプタテ」の材料と同じ素材・色のものを1平方 メートル2100円で取り寄せたものです。ワックスを滲み込ませて撥水加工がしてあ ります。



帆布を、型紙にあわせて、切り出したところ。

 切り出した帆布のうち、ポケット部分にはファスナーをつけます。背負ったときに頭 の真後ろになるあたりです。ファスナーで接合する部分はカット・分離しました。これ で、カットは終了です。

第2ステップ ほつれ止め、縫製部のライン引き
 次は、縫製する前の、準備工程です。
まず、切り出した帆布の周辺・縁の部分がほつれないように、ミシンと手で、ほつれ止 めの下縫いをしました。糸は、皮の加工用の丈夫な細い茶色のナイロン糸です。これが 、前処理その1。

 実は、私はミシンが使えないので、ほつれ止めのこの縫いつけは、カミさんに頼んで 一気にやってもらいました。ファスナーを縫い付ける部分も、あとでカミさんがミシン かけをしてくれました。

 下準備の2つめは、縫いつけ箇所に、色鉛筆でラインを引いておく作業です。縫いつ け部は縫い代の「遊び」(余分な幅)があり、作業もポケットを裏返しておこなったり 、湾曲した立体の形の状態で縫うため、おおよその線がないと、相当に位置がずれかね ません。
 実際にも、カット段階から位置が少しずれて、ポケットの前部分の高さが、左右で寸 法がちがいました。まあ、登山装備は丈夫さ第一、見映えよりは実用的であればいいで すから、少々のシワやゆがみは無視することにしました。

 第3ステップ ファスナーの縫いつけ、ポケットの形に仕上げる
 こうして準備をすすめたあと、まず、ファスナーの縫いつけです。ミシンであっとい う間に装着しました。ファスナーは、「ゆざわや」で23センチの長さのオーダー品を 購入してきました。プラスチック製で、250円くらい。
 次いで、ポケット部分を裏返しにして、箱状の形を手縫いで作り上げました。(小学 校のころの雑巾縫いを思い出しました。皮を縫うときは、高校時代、野球部ころ、いつ もほつれた硬球の皮を修理していたころを思い出しました。)
 ポケットの外形ができたところで、ポケットの後部の「壁」のすそを、雨ブタの底布 の所定の位置に、これもミシンで一気に縫いつけました。
 さらに、左右の壁を、底布に手縫いで縫いつけ。ここが一番、湾曲して、曲がりやす いところ。ここまでは、袋を裏返ししての作業です。
 最後に袋を表に返して、ファスナーを付けた前部の壁を、底布に手縫いしました。



雨ブタポケットを設置した様子。
ファスナーをつけました。(完成後の写真)


 本来は本返し縫いなど、より強い縫いつけにする必要がありますが、手縫いは慣れて おらず、袋に手を入れて縫うような場所も多く、とりあえず形に仕上げることを優先し て、つくりあげてしまいました。糸は、皮の縫製に使う丈夫なナイロン糸です。おいお い、力がかかるところは補強をしていきます。

 ということで、相当な苦労をして、かなり時間をかけて、雨ブタポケットの形が出来 上がりました。ただの箱型ならば、ミシンで一気なんでしょうけれど。

 第4ステップ フタの縁を皮で補強する
 次は、雨ブタの縁の部分が帆布にほつれ止めの縫いつけをして、そのままなので、こ こに補強の皮を取り付けました。
幅20ミリにやや薄手の皮を切り出し、2・5ミリ間隔の「菱目打ち」であらかじめ縫 い目の穴をあけました。細いナイロン糸で縫いつけ。皮の長さが30センチずつしかな くて、途中の間の悪いところに継ぎ目が出てしまいました。縫っているうちに皮が伸び て、左右の継ぎ目の位置に違いもでて「非対称」に。
 これも、手作りの味です。使い込めば、皮が磨り減りだして、こんなものは目立たなく なります。
 この補強を加えると、雨ブタポケットは、ちょっと重厚なイメージに変わってきました。



雨ブタポケットの縁を補強の皮で縁取り。完成後の写真
ピッケル石突きホルダーも設置した完成状態を、先にお見せします。


 第5ステップ 1本締めのベルトを設置
 雨ブタポケットの仕上げは、ザックを締めて、背負うための1本締めのベルトの取り 付けです。
 サブザック「オプタテ」は、シンプルな一本締めのベルトのザックです。この良さは 残したい。サブザックですから、見かけは単純なものがいいし、1本締めは簡便です。
 ただ、雨ブタポケットは、30リットルのこのザックにかなり荷を詰め込んだ場合も 、楽にザックを開け閉めでき、かつザックそのものの強度も保つように使うことを想定 しています。
 荷物がある程度あっても、強度を保つには、両肩の背負いベルトにベルトを固定でき 、そのベルトでザックを締めて、ザックの後側で1本締めのアジャスターにつながる必 要があります。つまりY字型のベルトの配置です。
 これは、両肩にベルト止めをそれぞれ設置し、2本のベルトを雨ブタのところで1本に 絞ればOK。両肩の背負いベルトには、ロの字型の金属環を、皮ベルトで縫い付け、固 定。また、ベルト用のプラスチックの締め具を使い、Y字型のベルトを構成しました。 ベルトは荷物の増減に応じて、伸縮できます。



完成後、雨ブタを取り付けて、裏面を見たところ。
ベルトと、その接続の様子がわかると思います。
本文の説明にはありませんが、細いベルト(伸縮式)が、
背中中央のD環につながり、雨ブタが後ろに引かれるのを
防いで、安定させています。
この細いベルトも、背負いベルトや1本締めベルトとは別系統に
セットしてあり、雨ブタに強い張力がかからないしくみです。


 ザックを背負い、また締める強い力がかかるベルトを、直接、雨ブタに縫いつけて固定 すると、その上にのっているポケット部分にも力がかかり、ファスナーな開きにくくな ったり、容量が十分に活用できません。これは、市販のザックでも、体験することです。
 そのために、背負いベルトに連結したY字型のベルトは、雨ブタポケットの下を前後に 楽に可動できるようにしました。雨ブタの底に、大小の皮の帯を縫いつけ、この帯を通 してY字型のベルトを設置、締める方式です。
 雨ブタポケットはベルトが伸縮しても、自由に動きます。

 第6ステップ 雨ブタにピッケル(石突き)・ホルダーの取り付け
 これは、多くのザックにあるもので、ほんとに「ピッケル(石突き)・ホルダー」と して使っている場面には、ほとんど出会いません。多くは、アルミカップなどの取り付 け場所に使われていますね。ホルダーの材質も、樹脂製が大半になってきました。
 でも、私のような年代の者には、皮のこのホルダーは、抜きがたいものです。

 つくりは、単純。ほぼ正方形に厚めの皮を切り出し、これを菱型において、中心から 左右に15ミリくらいの位置に計2ヶ所、ベルト通しの穴をあけるだけです。これを、 雨ブタポケットの後ろ側の、雨ブタの下部に縫い付けます。
 皮を縫いつけた布地には、必ず「当て皮」が必要です。しかし、こんどの場合は、雨 ブタの裏にベルト通しの皮の帯を設置しているため、これに当て皮役になってもらいま した。縫いつけも同時におこなえ、合理的。しかも、強く張られたベルトで支えられる 場所に、ピッケル(石突)ホルダーが設置されているので、ホルダーもしっかり支えら れています。
 このホルダーには、皮ベルト(締め金具つき)も製作して取り付けました。  金具は1個80円で購入してきました。

 ここまで出来上がったサブザックを、11月上旬の赤城山の登山で使ってみました。  サブザックにもともとついていた雨ブタは、一枚の帆布で、小さくたためます。ザッ クの袋のなかに丸めて押し込んでしまい、ワンタッチ締めひもで口を閉じます。その上 に、製作した雨ブタポケットをベルトでのせました。
 地図やGPS、ちょっとした行動食なども入れることができ、コンパクト・デジカメ も収容できるほどの小さめの雨ブタポケットです。布地の材料も、皮の色もいっしょ。 素材が全体に調和して、最初からついてきたような外観になりました。皮の縁取り、ピ ッケル(石突)ホルダー、背負いベルトの固定環などが効いて、少しずつヘビーな感じが 出てきました。でも、風合いや色、素材からは、素朴な感じが出ていると思います。
 この雨ブタポケットも、着脱式で、外してしまえば、元のサブザック「オプタテ」に もどります。
 まだ、今回の改造のコンセプトである、「オプタテ」のシンプルさ、簡便さを失わず 、柔軟に使用できるという方向には、沿っていると思います。

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◆背負いベルトの接合部を強化、D環を装着

 次の改造は、ザックそのものの強度のアップです。
 これは、赤城山の登山で使用して、けっこうこのザックが収容力があることから、考え たことです。サブザックとはいえ、30リットルまで拡張でき、 荷物によってはかなりの力が各ベルトにかかります。
 強度アップと、いろんな荷造りに対応できるように、とくに背負いベルト と本体の接合部分を、強化することにしました。

 D環を設置することと、背負いベルトの縫いつけ部分の強化のために、幅7センチほ どの皮を、ザックの背あての上部に縫い付けました。
 縫い付けるときに、背負いベルトを横切るように、丈夫なナイロン糸でがっちり縫製。
 D環は、この背あての皮にとりつけるしくみそのものは、これまたクラシックなザック の方式と同じです。昔は、キスリングなど多くのザックがこの方式でした。
 荷物が重いときに雨ブタをのせる前に、紐やベルトでがっちり荷造りするた め、D環には一番大きな力がかかる可能性があります。そのために、厚さ3ミリ弱の皮 だけでは不安があるため、まず薄いナイロンベルトでD環を背あての皮に縫い付け、その 上から皮をかぶせて巻き、他のストラップ同様の縫い付けをしました。  完成した状態の写真を、見ていただければ、外観の様子がわかります。



背あての上部に、皮を横に縫い付け、D環を設置(完成後に撮影)

 この背あての上部の皮には、見えない部分が、もう一つあります。
 皮の内部に、ABS樹脂のプレートを挿しこんであることです。
 写真が、そのプレートです。



ABS樹脂製のプレート。厚さ0・6ミリの板から切り出しました

 これを挿入することで、皮部分の一体性が増し、力を分散できて、強度が上がります。
 また、背負ったときに型崩れしにくく、パッキングもしやすくなります。
 5枚の薄いプレートの合計の厚さは、3ミリ。

 厚いものは折り曲げにたいする剛性は高まりますが、限度を超えると一気に割れ、 行動中には困ってしまいます。
 薄手は1枚ずつの剛性は弱いですが、それぞれが滑りながら接して、柔軟に湾曲する ために、ショックにたいする割れにくさが高まります。この種のショックは行動中に そう何回もあるわけではなく、ごく稀れ。その場合、もし1、2枚が割れても、全体の 役割は損なわれません。
 このように想定して、あえて高価な厚板を避け、1枚250円のプレートを求めて、 切り出しました。5枚は接着はせずに、背中の真ん中あたりでビニルテープを巻いて 束ねただけです。よく曲がりますし、鉛直方向の力には良い剛性を発揮します。



今季、初めて出会った小雪のなかで。
小さな三脚と、着脱式の市販のサイドポケットを付けています。

(武尊山で)

 この取り付け、縫製作業と、荷物が多いときのいくつかの荷締め用のD環のとりつけ で、ついにサブザック、「オプタテ」の加工・改造が完成しました。
 改造中に4回、このザックは使用しました。
 4度目は、強い木枯らしが吹き、あられ、小雪が舞い中の、武尊山のブナ林逍遥でし た。



完成

帆布サブザックの加工日誌(前編)



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