帆布製のサブザックの加工
2004年10月〜


 札幌の秀岳荘から、この夏、帆布製のサブザックを購入してきたのですが、い ま、このザックに応用が利くように加工を施しています。不器用なので、四苦八 苦なのですけれど。



サブザック「オプタテ」。加工前の写真です

 このザックは、30リットルで、1本締め、ポケットはどこにも付いておらず、 袋にふたがあるだけの、シンプルそのもののつくりです。
 「オプタテ」という北海道らしい名前がついています。床に立てておくと、な るほど、にょっきり立ち上がった、あの山を連想させます。

 シンプルなのは、すっきり見えるし、ヤブに入ったときなど引っかかるものが なくて、いいです。でも、いちいちフタを開けないと、地図も。GPSも取り出せな い。それと、ザックの外にストックや濡れた傘、ツェルトのポールや三脚などを 付けるベルトもありません。

 それで、とても気の長い話ですが、1ヶ月単位で、順次、改良をほどこすこと にしました。

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サイド・ストラップ用のホルダーの取り付け
 まず、ザックのサイドに、ストックや三脚を付けるサイド・ストラップ用のベルト留め(ホルダー)の 工作です。

 地が帆布ですから、その風合いと合うよう、牛皮をホルダーの素材に決めまし た。15センチ×10センチの長方形の牛皮(オイル加工、210円)1枚を、4 等分に切り出しました。この材料の両端近くに、それぞれベルトを通す穴を2個 ずつ開け、ザックの両側に左右2個ずつ縫い付けました。



ホルダー用の牛皮を切り出し、加工。
色が薄い皮は、ザック内部の当て皮ですが、シロウトのためサイズを一回り大きくせず、ややミスしました


 出来上がりは、1970年代の、アタックザックの走りのころに、ザックの左 右にあったホルダーと同様です。

 ホルダーの牛皮の厚さは3ミリ。あらかじめ「菱目打ち」(鋼製、1つ800 円くらい)という工具で、糸目の間隔に、針の目の穴を開けます。古いまな板の 上に皮を置き、菱目打ちを当て、上から金槌でたたいて、穴をうがちます。一箇 所で4目分が等間隔で開き、これを直線にそって繰り返して、きれいな糸目を作 ります。



菱目打ち(3ミリ間隔タイプ)と、糸、針

 帆布に直に縫い付けては、帆布が裂けるため、ザックの内側には薄い牛皮を補強 用に置き、これもろとも、糸で縫い付けます。この当て皮には、ホルダーの厚皮と 2枚を重ねて、菱目打ちで、まったく同一の位置に、針目の穴を開けておきます。

 糸はナイロン製や麻糸があり、専用のワックス(小1個270円)でしごくと、皮 の通り抜けがよくなります。針も、太い専用針(1本80円くらい)。ワックスを 滲み込ませた糸は5メートル購入しました(550円くらい)。

 そのうえで、縫いつけの工程です。本返し縫いです。糸目の穴は開いており、ま た、内側の当て皮にも、同じ位置に穴があるため、1枚の牛皮のホルダーを縫い付 けるのに、40分ほどで仕上がりました。

 指に2度、針を刺しました。針は太めで、けっこう出血。
 雨の日曜日、この作業に最初から没頭しました。
 とっても丈夫な、しかもいい風合いの皮のホルダーが出来上がりました。

 ここに、ロックバックル付きのナイロンベルト(1本260円)をそれぞれ装 着。ザックの両脇にいろんな荷物をくくりつけられるし、ホルダーにはほかの装 備品やペットボトルのホルダーなども、取り付けられます。
 ベルトを使わなければ、ごくシンプルな帆布ザックにもどります。さて、次の 加工は・・・。

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ウェスト・ベルトを取り付けるD環の取り付け

 帆布のサブザックの加工その2は、ウェスト・ベルトを取り付けるD環の取り付 けです。



先に、D環を取り付けた様子をお見せします。底皮に固定

 この「オプタテ」というザックは、シンプルな袋というのが売りなだけに、ウェス ト・ベルトも付いていません。
 ただ、ふだん、軽い荷物と気楽なルートでサブザックを背負うときには、ウェス ト・ベルトはかえってじゃまになる場合もあります。このベルトが欲しいのは、荷 がある程度、重く、長い時間を歩くときや、体がふられるといやな難所の通過など だけ。
 そのために、ザックには小さめのD環だけを、止め具用に付けることにしました。

 ウェスト・ベルトそのものは、ふだんははずしておいて、必要なときに、取り付け る方式です。「使わないときは、外せば、シンプルなサブザックにもどる」という のが、今度の加工の趣旨ですが、それにも反しません。

D環は、2個120円で、金属製のものを購入してきました。くすんだ真鍮の色を していますが、鉄に着色をしたもののようです。
 D環を固定する細いベルトは、牛皮を切り出して使いました。幅24ミリ、長さ 12センチ。折り返してD環を通すので、2枚重ねの長さは、半分の6センチ。

 2枚重ねにした状態で、また「菱目打ち」でひし形の糸目の穴を開けました。
 皮が薄いので、菱目は「2・5ミリ」。前回のベルト止めの皮の縫い付けでは、3 ミリの菱目打ちを使いました。
 今度は、細めの麻糸を使用。皮やザックと同じ濃い茶色に染めてあり、縫い目は 目立ちません。
 このD環ストラップを左右計2個つくりました。

 次は、ザックへの固定です。
 帆布が、キスリングのような厚地ではないので、そのまま縫い付けたり、固定 したのでは、布地がすぐ傷みます。ウェスト・ベルトは、転んだりしたときなど、 かなりの力が瞬間的にベルト部にかかるので、「カシメ」(金属のリベット)を 打って、ザックに止めるのがベストです。

 帆布の裏側に、また当て皮をしてしのぐことも考えました。  しかし、ここで、新しい加工を、また思い立ちました。というよりも、すでにそ の材料は手元に入手ずみです。
 ウェスト・ベルト用のD環ストラップの取り付けは、その加工をしてから、おこ なうことにしました。

・・・・・以上の作業と、次の工程は、郷里の福島の温泉の宿で、台風22号の 雨に降り込まれたなかで、黙々とおこないました。部屋のすぐ8メートルほど脇 には、林道をはさんで山間の沢が流れていました。窓から見ると、沢は茶色に増 水し、迫力があります。宿の窓からその水面までは、6メートルほどの高度差が あります。

 「ここまで、水を被ったことはない」と、宿の人にいちおう言われたものの、山 の沢の6メートルの高度差なんて、あっと言う間です。おまけに、この沢(荒川 上流、水源は東吾妻山、高山、安達太良連峰北部)は、宿の直前で細くすぼま り、右に大きく屈曲して、流心の延長線は宿に向いています。そこらへんは、よ く考えられているのか、カーブする流れをさえぎるように、林道が伸び、その土 台は土手状の高い石積みとなっています。
 「関東に上陸した史上最強の台風」の今後の進路によっては、夜逃げの用意も いります。
 雨具、ヘッドランプなども部屋に持ち込み、窓外で強く降る雨や沢の濁流を眺 めつつ、皮を切り出したり、糸をしごいたりして、すごしました。

 雨がさらに強くなったり、沢を岩がゴンゴンと流れ出すようなら、背後の傾斜 のごく緩い森に逃げ込むしかありません。

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底皮を当てる

 帆布のサブザックの加工、その3は、ザックの底を保護する当て皮(底皮)の製作で す。
 台風22号は、どうも茨城県沖に抜ける気配があり、これなら台風の西側で雨が弱まる と安心して、作業を本格化させました。
 サブザック「オプタテ」は、底の仕様もシンプルです。普通のザックなら、サブザッ クといえども、合成繊維や樹脂素材で底を保護しています。「オプタテ」には、これが ありません。底も、両サイドも前後も、みな同じ帆布製。そのシンプルさが、美しいの です。



底皮を逆さに見たもの。縫い付けるまでに準備した段階の写真。

 それだけに、皮を当てて補強するのは、悩みました。元のシンプルな良さが、失われ るのは確かだからです。

 でも、初使用で武尊山の沢に入ったときに、底も帆布のこのザックは、湿った場所に 置くのにも、気を使いました。パラフィンを滲み込ませて防水加工はしてありますけれ ど。
 それと、ザックがどこから傷むかといえば、ご存知のように底の周囲からです。底と 壁の接合部分に、まず損耗と破れがきます。しばしばヤブの中を動くので、形のシンプ ルさは利点です。が、強度の点でも、私の使い方に合わせて、補強を行なうことにしま した。

 その際、派手な皮を使うのではなく、布地の色とほとんど同じの目立たないこげ茶色 を使うことにし、糸も、同じ色で目立たせないようにすることにしました。

 もう1つ、皮の素材は、D環やサイドのベルト・ホルダーを製作したのと同じで、オ イルを滲み込ませて防水性を高めたものを、選びました。厚みは2ミリ少しと、かなり あります。この種の牛皮は、チロリアン・シューズなどによく使われているものです。 私も1足使っていますが、こすれて傷が付いても、オイルを使って磨くと、傷は見えに くくなります。1足目は、はきつぶすまでに15年も使えました。「このサブザックが 、自分の山登りで最後まで使う小型のザックになるかもしれない」という気持ちでとり くんでいるので、材料としては好適です。(そうはいても、たくさん、傷をつけるでし ょうけれど)

 「東急ハンズ」では、業務用に使われた皮素材の断片・はんぱ物を売っています。お そらく、カバンか靴の皮を切り出した残りのオイル・レザーが、不定形ながら60セン チ四方くらいの大きさで、売られていました。4600円。なんと、当のサブザックと ほぼ同じ値段です。底皮だけでなく、これから使う部分にも、残りを利用できそうだっ たので、これを購入しました。

 しかし、ザックに底皮を当てる、というのは、いままでの工作とは違って、かなり難 しいことです。
 まっ平らでコシのある厚皮を、ザックの底と、壁の立ち上がり部分とに、ほとんど継 ぎ目なく当てるというのは、どうすればいいのか?
   継ぎ目を背中側の両サイドに2ヶ所、あらかじめ設けました。これで、背中に当たる 側の外壁は、皮がうまく直角に立ち上がりました。

 問題は、横から後方へ、パンが膨らんだような曲線を描く部分です。
 型紙をとって、大体の形に皮を整形してみました。皮が立ち上がった部分では、余分 の皮がだぶつきます。それは、縫いつけ方で、一目ずつ皮をわずかにだぶつかせて整形 すればいいと、やってみました。
 失敗でした。
 皮は波打ち始め、これでは一体感がなく、目立ちすぎです。



底皮を取り付けたところ。D環と、ベルト・ストラップも写っています

 結局、ザックを後ろから見た両端の下はじに、左右1ヶ所ずつ小さな切れ込みをいれ て、ここで余分な皮を合わせて、きっちり縫いつけ、ザックの形状に合わせて皮を立ち 上げました。まるで、最初からこういう縫い合わせを予定したかのように、仕上がりま した。
 でも、1枚皮で立ち上がるのに比べると、素人の手作り感は否めません。
 1枚皮で、すっぽり底部を包み込む、というのが、防水対策上も、美しさからみても 、ベストだ
ったのですが、そういう皮の整形をする道具も技術もないので、仕方ありま せん。  こういうときは、要は実用と耐久性だと、納得することですね。

 

 これで、保革油を適量ずつ塗りこめて、保守しておけば、十分な防水性と耐久力が保 てるでしょう。シンプルだった「オプタテ」は、底部を皮で補強されて、色合いは地味 ながら、ぐんとたくましい外観に変貌しました。
 (もともとの、ごくシンプルな「オプタテ」で良かったという気持ちが、若干ですが 、沈殿していますけれど。)

 

 事前に製作しておいた、D環式のウェスト・ベルト止めは、この底皮にしっかり縫い つけ、さらにカシメを打って、がっちり固定しました。



底皮を取り付けて、一段落したところ

 おおがかりな加工の部分は、これで山を越えました。
 次は、30リットルを目いっぱい詰め込んだり、稀にザックの上に荷を乗せるような 場合の、ヒモ締め用のD環の増設。そして、着脱式のポケット等の製作です。

帆布サブザックの加工・改造(完成編)



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 山の便り、大地の恵み (野原森夫)  
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