カンダハーという名前の締め具

2008年2月




 東京の西部にも今朝は8センチほどの雪が積もりました。
 機会をみて写真に撮ろうと思っていた、古い山スキーを雪上に持ち出しました。

 板は私の2代めの山スキーで札幌の秀岳荘のグラス製(内部はなんと木製)のも の。締め具 (いまでいうビンディング) は「カンダハー」が付けてあります。私 が山スキーを始めた1970年代は、締め具の主流はまだこれでした。


カンダハーは、山靴の先端を皮の厚いベルト
で固定し、踵をワイヤーで固定して滑走します。


 皮の登山靴で使える、
 ラッセルでも板が下駄のように足に追随してくれる(支点が足指の付け根あたりにある)、
 滑走でもそれなりにスキーを操作できる、
 などの点で、現在のビンディングに比べても、まだ独自の持ち味を失っていないと 思います。何しろ、軽量で、値段が3000円前後で、スペアのワイヤーと皮ベルト と針金を携行すれば、現場で補修が利くというのが、安心な点でした。



 登高のときは、普通は、ワイヤーの中ほどの固定個所をフリーにして踵が若干、あが るようにします。
 ワイヤーを、スキーの外側にでなく皮バンドの内側に通したうえ、靴 の真下でX型に交差させて踵にひっかけて固定する方法が、ワイヤーの 伸縮をうまく生かして踵も上がるし、ラッセルしやすくて、「裏ワザ」 として伝承されていました。

 カンダハーは、スキーを皮バンドでサンダルのように履いてしまうこ とと、ワイヤーで踵をつかず離れず固定するのが、程よかったです。支 点は、親指の付け根あたりにくるので、深い雪のなかで板に雪が乗って いても、脚力でスキーを持ち上げ、押し出しやすい仕組みでした。


 山岳部などでは、入山のアプローチにこれで山へ入り、稜線へ出て、締め具を外 してスキーを廃棄してしまい(当時の話です)、身軽になって縦走するという方式もとっ ていました。



左が私で、学生寮内に捨ててあった板に、ジルベレッタの模造品
のビンディングを付けて、奥手稲に出かけたときのスナップ


 その後、ジルブレッタ(この名ももはや懐かしい)が普及し、何代も改良がすす みました。いろいろな締め具をその後も使ってきましたが、登高やワンデリングのような 使い方なら、まだまだ使えると感じています。
 ワイヤーはまだ2本、スペアを保存しています。


1991年、北八ツに持ち出したときの写真

 当時、札幌の秀岳荘でカンダハーと売上げを2分していたのが、ジル ベレッタの旧型(ワイヤーも使用)でした。山渓などでは、東京のチョ ゴリザという店の宣伝も目立ちました。
 ジルブレッタが日本で広がり出したのは、初代のワイヤー式が70年 代の前半ぐらいかな。「踵が楽に上がる」というので、人気でした。
 羨望の締め具で、無意根山などで社会人の山岳会がこれで登っているの を見ると、横目で眺めていたものです。
 初代のこのジルベレッタは、つま先の前にスキーを持ち上げる支点がくる(現在 もほとんどの締め具がこれです)のと、ラッセルのときに踵が上がりす ぎてスキーと足の一体感がなく、必ずしも楽なものではなかったようで す。


これはシールの側しか見えないが、ジルベレッタ♯400を付けた板。飯縄山で

 私は、就職してから、やっとジルブレッタ#300をつけた板を、東 京のフレンド(荻窪)という店で買いました。ここは、札幌の秀岳荘と 提携していた山道具店で、板はこのときも秀岳荘のものを求めました。
 さらに改良されたジルベレッタの♯400、♯440は、いま我が家のス キーにつけていますが、スキー板と足の稼動金具のあいだにバンドを付 けてスキーを持ち上げやすくしているものの、登高時のカンダハーの一 体性にはまだ負けています。しかし、滑走性能は、ほとんどゲレンデス キー並みに改良されました。



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野原 森夫