南蔵王で8月初旬にナメコ!

2003・8・4




 8月4日、初めて、蔵王連峰の南部のブナ林に行きました。またまた 展望に恵まれない、雨の山歩きになりました。

 今回は、福島市に母の介護(姉に代わって数日の交代)で帰省し、そ の合間をぬっての山行きです。この日は朝9時半すぎにディサービスの 迎えが来て、午後3時半に送りの車で母が帰ってくる。そのあいだの約 6時間ほどで家から出かけられるところに、ということで、南蔵王の屏 風岳(1817メートル)をめざしました。
 とはいっても登りだけで3時間あまりかかるコースです。3時すぎに 家に帰りつけなくなっても、夕方の5時にはヘルパーさんが来るので、 もしも天気が良かったらその時刻まで帰宅を少し遅らせて、行けるとこ ろまでいこうと考えました。
 梅雨明けとはいえ前線は南下の気配。朝の予報で、大きな雨雲が日本 海方面から山形県に迫ってきているのが、気がかりでした。

 家から車で1時間余り。10時50分、登山口の「みやぎ蔵王白石ス キー場」の駐車場に着きました。
 ルートは、垂清川(湯川)の支流、コガ沢(権現沢)沿いの道です。 屏風岳は南東面がカール状にぱっくりと口を開けています。爆裂火口跡 なのでしょうか? そのおわんの底を流れ、山腹を下るのがコガ沢で す。

 駐車場を11時発。白石スキー場のゲレンデの右端を登っていきま す。「水引入道コース」と呼ばれるこのルートはくわしいガイドブック が見つからず、現地確認主義で進みます。
 地図上では少し登れば右手の尾根を乗り越えて、谷すじに降りていく ように読めるのです。しかし、そんな取付き点は見つけられずに、藪の 中に切り開きはないかと探しながら、ひたすら上へとゲレンデを登らさ れました。
 空はいまにも降りだしそうな気配。すぐ南側の摺上川上流の山々も、 背後の吾妻連峰も、低い雲が垂れ込めています。
 2本目のリフトの中段ほどの高さまで上がったところで、ここまで踏 み跡などまったくなかった草むらの先に、登山道の取付きを示す道標が 現れました。ここまで早足で22分。標高960メートルあたり。林内 の刈り分け道がここから始まります。

 登山道に入ると、周囲は一変。ブナとミズナラなどのとても雰囲気の いい森の中に分け入ります。しばし尾根筋をたどって、右手の谷へ下降 を始めると、周囲の斜面も対岸も、高さ25メートル、太さ60〜80 センチほどの立派なブナの林が展開していきます。
 沢伝いに登っていく道かなと予想してきたのですが、道はなかなか沢 へは降りず、谷底から高度差で80メートルはある中腹をすすんでいき ます。沢の両岸が切り立っているためでしょう。ようやく緩やかに下降 し始め、水流が見えるあたりまで来たところで、落差30メートルほど はあると思われる大きなナメ滝が、樹間からすかし見えました。流水が 美しい曲線を描いています。おそらくこの滝も、幾つかの大きな滝の一 つでしかないでしょう。コガ沢はなかなかむずかしい沢のようです。

 標高1080メートルあたりで、登山道はいったん沢の脇まで下降し ました。いい水の色です。火山性の水質を気にしてきたのですが、石に は水苔がよくついていて、これなら川虫も棲めそうです。少なくともか なり長い期間、火山活動で生物が棲めなくなるような事件はなかった様 子です。ただ下部の滝が障壁になっているので、上流部に自然のイワナ が遡上してくるのはむずかしいでしょう。遡行するには、手ごわくと も、おもしろそうですし、上に逃げれば登山道があるのは安心です。こ の沢を観察できて、目的の一つは達せられました。
 私と同様、水辺に降り立った人の足跡がありました。
 ここからの登山道は、道のアップダウンが大きくなり、足場が悪い道 になりだしました。

 ブナの大きな木がひときわ目立つあたりで、食事をとりました。周囲 も向こう岸も、見渡す限りのブナの林です。鳥の声、水流の音、バラバ ラと落ちてくる雨の音。花も出会うごとにカメラを取り出して眺めてき ました。静かな山を体験できるのが、この一帯のいいところでしょう か。

 道はまた沢から離れて高度を上げだしました。登山道は、標高126 0メートル付近でコガ沢を渡渉し、対岸の小尾根を「水引入道」(16 56メートル)というピークに上がります。せめてそこまで行きたい と、ペースを速めました。

 

「水引入道」らしい対岸の高みが見え、沢の渡渉地点まであと少しと 迫ったあたりで風が出始めました。ポタポタ落ちていた雨がシャワーの ようにザーッと降りかかりました。
 少し様子を見、思案したけれど、すぐに止みそうにありません。沢を 渡渉したあと水が出ると、尾根まで上がって別ルートで下降することに なります。
 引き返すことにしました。その分、ゆっくり降りながら、ときどき見 つけたキノコや花の写真を撮っていこうと。
 12時20分ごろ、下降開始。

 傘をさして歩きました。樹間から空を見上げると、かなりの勢いで雨 が降りかかっているのに、森の枝や葉がその雨をしっかり受け止めて、 地面にはパラパラとしか落ちてきません。そのかわり風が強く吹くと、 ザザーッとすごい勢いで雨が落ちてきます。足元だけでなく、周囲の様 子も観察しながら、ゆっくり下降しました。



 

 「おやっ」と思うものを見つけました。「あれは、ナメコじゃない の?」
 小さな沢筋が落ち込んだ場所。登山道を横断して長さ15メートルほ どのブナの幹が倒れ掛かっています。その幹には緑色の苔がびっしり付 いた部分があり、茶色のキノコがぽつぽつと伸び出しています。近づく と、やっぱりナメコでした。
 晩秋のナメコがもう生え出していました。細長く2メートルほどの区 間に、たくさん生え出しています。撮影したあと、十分、食べられる大 きさに育ったものを摘み取りました。梅雨どきの低温が、子実体に行け 行け、伸びろ!とゴーサインを出してしまったからでしょうか。「冷 害」の不安を考えさせる出来事でした。



 キノコではナラタケも、生え出したばかりの若い菌をふくめ幾つも見 つかりました。こちらは6月ごろにしばしば見られるものです。白い繊 細なヌメリツバタケは夏のキノコ、それにツキヨタケも出始めていて、 こちらも生育はオールシーズン型か。



 花は登りでも、下降でも撮影しました。白い小さな花を咲かせる花が あり、タニギキョウかなと思い撮影したのですが、帰って図鑑を開いた ら、タニギキョウは1株に花(5弁)が1つ。こちらは2輪ずつ。しか も茎のさきに双葉のように2枚の対生の葉を広げ、そこに4弁の白い小 さな花を2つ付けます。背丈は10センチ内外。??
 アジサイ、オカシモツケソウ?、アザミの仲間、カニコウモリの花な ど、派手でないもののひっそりと咲く花が印象的でした。

 スキー場では、青紫の花が美しいウツボグサ、白いオカトラノオ、ア カツメクサ、チングルマによく似た白い花?もありました。ゲレンデ内 に踏み跡はないことがわかったので、今度は作業車のわだちを拾って下 りました。

 いったん雨が小降りになった駐車場には水たまりができていました。 山百合の白い大輪が群生しています。
 14時着。帰り道は鎌先温泉の湯に寄りたかったけれど、余裕があり ません。
 今度は白石から福島飯坂インターまで33キロを東北道を使い、15 時すぎに実家へ帰りついて、行水で汗を流しました。母はナメコをまじ まじと見てくれました。

 ナメコとナラタケは、酒と醤油で煮て、つまみにしました。登山道を 横切っていたあのブナの倒木には、10月にはたくさんのナメコが生え 出すことでしょう。
 初めての山域、新しいルートを知った山歩きでした。

     






山の便り、大地の恵み (野原森夫)
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