ササクレヒトヨタケ

2000・10・11

 

 真っ白い色、タイマツのような形、おまけに半日もたてば傘の縁から黒く 変色し、そしてどろどろの黒インクのように溶けて崩れてしまう。
 ササクレヒトヨタケは、おどろおどろしい、きのこです。子どものころから 何度も家のそばで見かけた記憶があります。

 1990年ごろだったか、山梨・塩山の民宿に泊ったときに、大きな農家作り の庭の端に、流し場が設けてありました。その陰に2本、このきのこが生え出しているのを 子どもたちが見つけ、私たちに教えてくれました。
 妻は一目見るなり、「あっ! ロウソクだ!!」
 「これ、まさか食べられるの?」と私。
 「スープにしても、炒めても、おいしいのよ。ヒトヨタケといって、家の近所で 見つけると、よく持ち帰ったわ。生える場所を見つけておいて、採りにいくことも あったよ」
 「フーン」

 図鑑で調べ、ササクレヒトヨタケという名前があることを確認。
 さっそく摘んで、フライパンで炒めてみました。
 いけるんです、これが。つるり、しゃきっとした舌触りで、甘味もある。発見でした。



ササクレヒトヨタケ。「山の展望と地図のフォーラム」の岩松さん(ドイツ在住)が、
家の庭先に生え出したのを撮影。ドイツでは「タテガミインクタケ」(Schopftintenpilz)
と呼ぶそうです。岩松さんは「ご婦人が毛皮をまとったような美しいきのこ」と
評されています。

 北海道ではこのきのこを「ロウソク」ないし「ロウソクタケ」というそうです。

 二男が小学3年生のころ、家のそばの公園で友達と遊んでいて、きのこ図鑑 を眺めるのが好きなやつなので、「これは、いいきのこを見つけた」と思って、私 に報告してきたことがありました。
 朝、二人で行って見ると、公園の樹木のなかを進んでいって、ちょっと開けた 地面に出ました。そこに、ササクレヒトヨタケの大きく(高さ17、8センチ)、太い やつが14、5本も生えだして、前日のものは黒く溶けだしていました。キャップ がかぶさったような傘の部分は、直径が4センチくらいあり、ササクレも白い姿 も、溶けていく様子も、ちょっと不気味。いくつかは、友達が蹴飛ばして歩いた そうでした。自宅の近辺で出会ったのは、これが初めてで、「大発見だ!」と二人 で喜んで、家に持ち帰りました。
 朝食にフライパンで炒めてものを出すことができました。軟らかくて、甘味とこ くがあります。このきのこは、洋風のスープの具にもいいようです。いろんな 調理法があるのではないかなあ、と思わせるおいしさです。

 それにしても、「ロウソク」とは、きのこの名前はどこでも面白いですね。インク にたとえた呼び名は、外国ではヒトヨタケ科のきのこの名前としてけっこうあると 聞いたことがあります。




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