ブナの山のナメコ、クリタケ

2002年10月20日




クリタケ

 秋が深まる時期になると、そろそろナメコに出会いたくなります。今年も、奥利根・ブナの山の 、標高1400メートルほどにあるブナ林に行ってきました。
 あいにくの雨の予報です。その分、往復とも関越道は渋滞がありませんでした。

 いつものように中腹の登山口まで上がります。登山靴、雨具、ザックと山登りと同じ装備で出 発。小雨模様のなか、ブナの林床の根曲がり竹のやぶこぎでは、水滴をいっぱいかぶる ので、動きにくいけれど雨具は仕方ありません。私と妻は、やぶで大事な雨具が裂かれ るのを嫌って、お古の雨具で身をかためました。

 20分ほど登山道を登ります。この季節、葉があらかた、落ちてしまったブナの木が 並ぶ様子は、白い幹、枝が「素肌」をさらしているよう。「いまごろ来ると、ああ、ブ ナ林なんだなあと、夏よりも強く感じさせられる」と妻がいいました。

 標高1300メートルほどの台地に出ました。10月半ば ごろだと、ここからさらに、標高1600メートルの針葉樹林の一帯まで登り、遅いク リタケやナラタケを見つけたりします。今日は、この天気だし、先週クリタケは権兵衛 峠(伊那)でいっぱいとってきたばかりなので、周辺で、じっくりやぶを歩 き回ることにしました。

 根曲がり竹のやぶは、背丈が160〜180センチあり、入り込むと視界がさえぎら れます。50メートルも入り込むと、方角がわかりにくくなるし、登山道へもどるのに ずいぶん遠回りさせられたりします。ところが、道からそれぐらい離れてやっと、人が 入り込まないエリアが始まるのが、この一帯の状況です。きれいな状態のきのこに出会 うには、やぶこぎは、必須です。

 私たちが使った方法は、一つは、1人を登山道に残す方法。道から80メートルほど もやぶを進んでいくとき、お互いにコールしあって、登山道のラインと自分の位置関係 を把握するようにします。特徴ある木を目印にする方法と組み合わせると、かなり有効 です。
 この様子を見ていて、登山道を降りてきた2人のグループは、「なるほど、こういう 方法があるのか。人間をGPSにしているんだ」と感想を妻に話していったそうな。

 関連したワザとしては、長さ1、2メートルの枯れ枝の先にバンダナなどをまいて、 この枝を高く差し上げて振って、位置を教える方法もあります。ホイッスルもかならず1人1個、持つよう にしています。以前、カヤノ平に友人たちと行ったときは、2人一組になってホイッス ルの符丁を決めたほか、1組に1台ずつトランシーバーを使いました。

 もう一つの方法は、ハンディGPSに登山道をウェイポイントで記録して使う方法で す。今回のように探索地域があらかじめ定まっている場合は、ウェイポイントの間隔を 狭く記憶して持っていきます。別に、緯度経度を描きこんだ位置判定用の地図(パソコ ンでプリントアウト)も持ってきているので、広域の行動の場合も位置は判定できます 。結局、GPSで位置を判定するほどの「方向喪失」はなかったのですけれど、ナメコの 木を見つけて位置を正確に記録することはできました。



ムキタケがついたブナの朽木


 探索では、長男がクリタケを、まず見つけました。雨傘をさしかけて、上部からの光 をさえぎり、柄やヒダが写る低い位置から接写しました。ヒダが美しい、とても新鮮な クリタケでした。
 道々、ムキタケがついた倒木はたくさんあったのですが、ブナハリタケをふくめて、 今年はいつもより出が遅れています。ムキタケは幼菌が目立ちました。時期が早めのは ずのナラタケまで、幼菌がいっぱい出始めた朽木が見つかり、ちょっとびっくりしまし た。ほかに、ナラタケ似だけれど、白くて名前がわからないきのこや、センボンイチメ ガサと思われる元気いっぱいのきのこなどが見つかりました。同定できないので収穫は せず、撮影のみ。エノキダケも、出始めの数本が見つかりました。チャナメツムタケも 見つかって、これで今日の夕ご飯のメニューは、きのこ汁とクリタケご飯に決まりまし た。


 帰りかけたところで、今回は時期が早すぎて無理、とあきらめかけていたナメコが見 つかりました。幹が高さ3メートルほどのところで折れていた木の、高さ50センチほ どのところについていました。まだ出始めでした。幹の3箇所の位置から幼菌が固まっ て出ており、時期になれば有望です。大きめの2本が出ている別の位置の株を抜き取ろ うとしたら、株もとがスポンジ状でぼこりと崩れて、開いた穴の中に、これも食べごろ 大のナメコが10本ほど、伸びだしていました。木の幹の肉は白く、柔らかく、ふかふ かしていて、まだいっぱいナメコが出てきそうでした。

 幸い、雨は降ってもぱらぱら程度です。気持ちのいいやぶこぎを満喫して、4人で山 を下りました。
 帰りは、紅葉真っ盛り、雨で車はすかすかのなかを湯ノ小屋へ下りて、水上インター へと向かいました。

 今回入った一帯は、10月末から11月上旬にナメコやエノキダケがシー ズンの盛りになります。ヒラタケもこの時期、以降からです。けれども、この時期はち ょうど新雪と重なり、車道が通行止めになったり、そのまま春まで閉鎖され たり。運よくスタッドレスで上がることができると、根曲がり竹のやぶが雪で押しつぶ された、少しは見通しが利く、誰もいない森の中で、探索をすることもできます。




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山の便り、大地の恵み (野原森夫)
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