伊那の峠のクリタケ

2002・10・14


 十年ぶりくらいになるでしょうか。伊那谷の峠にきのこの探索に出かけました 。峠への車道の入り口に住むHさんの家が足場です。

 天竜川からひと登りした高台に中央道の伊那インターがあり、そこから峠に向 かってさらに登ったところに、Hさんの家があります。畑の斜面の彼方に東駒ケ岳(甲 斐駒ケ岳)、仙丈ケ岳、遠く塩見岳が見渡せる、もったいないような眺めの場所に、9 0歳を超す母上とHさんは暮らしています。

 紅葉の時期の連休で、峠にはマイカーが、あとから、あとから、登っていきま す。一帯は、Hさんが毎年、チャナメツムタケの出具合と時期を下調べするフィールドで す。赤松、カラマツなどの急斜面です。足元には、切り倒された雑木(ナラなど)の枝、幹が朽ちか かって、あちこちに散らばっています。「これなら、チャナメが出そうな場所だな」と 思いました。

 Hさんは、さっそくシロナメツムタケを見つけました。チャナメツムタケは、誰か人 が入ってしまったためか、すぐには見つかりません。その代わり、雑木の切り株にクリ タケの幼菌が出始めているのが見つかりました。
さらに奥の、やぶっぽい樹林の中に入り込むと−−−。すごい! 成長しかけの、新 鮮なクリタケが幹の両側から生え出しているナラの 木がありました。




チャナメツムタケ

 写真におさめて、さらに探索すると、チャナメツムタケがあちこちで 見つかります。そして、Hさんが「オーイ! カメラ、カメラ」と呼ぶので走っていっ てみると、またクリタケの切り株です。3方からびっしりと、クリタケが生え出してい る切り株でした。



クリタケ

 以前にこの峠に来たときに、メンバーの一人が食べごろのクリタケの大きな株を見 つけました。ところが、あんまりうれしくて、写真に撮る前に収穫を始めてしまったため、「いつか、あの大 株を」というのが、ずっと私の夢になっていました。いま、目の前にしているクリタケ の切り株は、成長の具合はまだ40パーセントくらいながら、幼菌がびっしりとついて いて、4、5日すればかなりの大株になりそうなもの。うれしくて、角度を変えながら 何枚もシャッターを切りました。

 30分ほどして、かごと袋がずっしりと重くなってしまいました。
 今度は、尾根の上方へ少し位置を変えてみます。赤松が主体で雑木が混じる林です。 ショウゲンジ、ホテイシメジ、ヌメリイグチがありました。
 さらに、先行する妻 が「オーイ!!」と読んでいます。行ってみると、やった! ムラサキシメジが半周の 菌輪を描いて、生え出していました。大きなものは傘が13センチほど。肉厚で、ヒダ はさらに紫が鮮やかな美しいきのこです。



ムラサキシメジ。下も



 角度や構図を変えながら撮影していると、また、先へ行った妻が、「早く!」と呼ん でいます。今度は、チャナメツムタケの群生でした。いままでで見たうちでも、一番、 たくさん、集まって生え出しています。



チャナメツムタケがいっぱい生え出していた

 

そこへ通りがかった地元のご夫婦に、Hさんが声をかけました。「なんだか、この季 節になると、山で会うねぇ」。
 私たちのカゴをのぞいたご主人は、「おお、クリタケか 。いっぱい採れたなあ!」とうらやましそう。でも、そのカゴに入っていたのは、チャ ナメツムタケです。確かに、摘んでしまえばクリタケに似ています。
 Hさんによると、 このあたりではチャナメツムタケを採る人は少なくて、たいていは生えたまま放ってお かれるとのこと。多くの人がねらうのはショウゲンジ(コムソウ)で、ご夫婦のカゴに もショウゲンジがおさまっていました。味はホンシメジなみのシモコシも入っていたので、写真を撮らせ てもらいました。



シモコシ

 1時間30分ほどの探索でしたが、たっぷりの収穫をかかえて、私たちは山を下りて きました。
 Hさんの経験豊富なきのこ汁。家のそばの畑で取れたニンジン、ジャガイモ、ブロッ コリの茎、コンニャク、肉などを順に入れて、たくさんのきのこと煮込み、長ネギ、ニ ラ、シュンギクを仕上げに加えます。醤油味、酒も入れます。実だくさんで、汁は少な めで、濃厚。うまい。

 久しぶりに伊那のきのこ狩りを楽しんで、土産をどっさり積み、中央道インターへと 車を走らせました。
 家に帰って、チャナメツムタケやムラサキシメジ、ショウゲンジなどは、またきのこ汁 西ました。クリタケは、大根おろし和えと、定番のクリタケご飯にして、初物を味わい ました。




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山の便り、大地の恵み (野原森夫)
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