奥多摩のきのこ探索       
ウラベニホテイシメジが一気に生えだす
   

2007年9月20日、10月7日





ウラベニホテイシメジ  10月7日 


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1回目、初秋の探索      2007年9月16日

 暑かった今年の夏の余熱がまだ尾を引いているお天気のなか、奥多摩のき のこ・フィールドに出かけてきました。今季2度目の探索で、奥多摩エリア は今年初めてです。
 現地は、標高700メートルから1300メートルほどにかけて、規模が 大きな天然の広葉樹林が広がっています。ふもとから眺めると、一帯はまだ夏 の緑色の樹海です。稜線に近い付近が、ようやく、黄色味を帯びた葉が見ら れる程度。
 やっぱり今シーズンは、きのこの時期が大幅にずれこみそうです。

 撮影機材と昼食をザックにつめ、足固めをし、防虫スプレーを頭部と手足と にかけて、急な山腹にとりつきました。
 森に分け入ると、体がさわやかな冷気に包まれました。木陰のせいだけで はありません。この2週間ほど、台風の豪雨を含めて何度か雨があったので、林 床は湿気を含んで、森の外よりも気温が少し低めなのでしょう。
 これは、ちょっと意外です。もしかしたら、きのこ達も生え出しているかもしれません。足首が、ぎ しぎし悲鳴をあげるような急斜面ですが、ときには幹に腕を伸ばして、体を持 ち上げ、山腹を斜めに登りあがっていきました。



現地の森 

 ナラを主体に、クリ、朴、ハンノキ、カエデ類、クルミ、トチ、アカマツ、カ ラマツ、モミなど様々な樹種が自生している森です。
 まず、倒木の両側にいっせいに生えだしている赤い小さなきのこを見つけまし た。コベニヤマタケです。



コベニヤマタケ 

 そして、管孔から柄にかけて、優雅なラインを見せるハンノキイグチ。おいし いきのこで、いまが盛りと生え出しています。
 カワリハツやヤマイグチも、よい被写体です。次々にきのこが現われるため、10 メートルと続けて歩くことはできず、立ち止まっては、カメラを構える姿勢を続 けました。



ハンノキイグチ 

 カミさんは、絵の題材にするのか、ドングリやおもしろい形の木の実を拾いなが ら、私の少し上を並行して登っていきます。私が撮影で手間取る分、そのカミさん の方が、きのこを見つけるピッチがはやく、「また、あったよー」と声をかけてき ます。
 10種類ほどのきのこの撮影をしたところで、昼食休憩。手ごろな斜面に、手ご ろな倒木を見つけて、腰を下ろしました。
 おにぎり、塩もみの丸ごとキュウリ、梨、スポーツドリンク。緩やかな風が林を 流れるなかで、うまい昼飯でした。



キヌモミウラタケ 

 お昼をまわって、めざす尾根にたどり着き、そこから右回りで森を周回しなが ら、斜めに下降しました。
 いつもなら必ず出会うナラタケは、今年はまだありません。クリタケもここは10月 初旬から出ますが、この秋は遅くなるかも。
 入山地点に降りつく直前で、初めて見る白いきのこを見つけました。傘も、柄も、純 白の絹糸の屑をまぶしたような姿です。図鑑で探し当てるのにかなり手間取ったうえ、キ ヌモミウラタケ(イッポンシメジ科)とわかりました。こういうはっとさせられる、初 対面のきのこに出会えるのが、撮影探索のおもしろいところです。
 しかし、味見をする気にさせるきのこには出会えないまま、奥多摩での第一回の探索 行を終えました。



 

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2回目、秋本番直前       2007年10月7日

 同じ森に、今年2回目の探索です。今度は、往復6時間の予定で、この森の未踏の エリアに分け入るため、ハンディGPSと、緯度経度を描き込んだ地形図とを、フルに利 用することにしました。
 車をデポし、荷作り、足固めをしていて、ちょっと迷いました。防虫スプレーを顔や 手首に吹き付けるかどうか、です。「毎晩10度前後に気温が下がりだしたので、とり あえず使わないで、持ってだけ行こう」と決めました。これがぴったり当たり、この日 は終日、蚊やブヨは姿を見ることがありませんでした。



ミネシメジ 

 いつもの尾根に取り付いてすぐ、山腹にクサウラベニタケ(毒)の大発生を見まし た。カキシメジ(毒)も幼菌は伸びだしています。そして、ミネシメジも見つかりまし た。

 10日ほど前からの気温の低下を感じて、やっと秋のきのこ達が生えだしてきたので す。彼らを食べる虫たちが激減したため、きのこは姿もきれいです。雨も繰り返し降って、山 肌は湿気もほどよく保たれています。
 この秋の気配に一番、敏感に反応したきのこが、ここではウラベニホテイシメジだった ようです。すごい。群生するエリアはとびとびですが、一カ所に数本から10数本ずつが 立ち上がり、傘を開きかけています。傘を開くと15センチ内外にもなる大型のきのこで すから、本当に見事です。
 ウラベニホテイシメジは、判別がやや難しいものの、エリンギの歯ごたえにシイタケの 旨味が加わったような、おいしいきのこです。撮影が目的の探索ですが、これにはたまら ず数本を採集しました。
 この日、ウラベニホテイシメジは、行く先々で、例年に2倍、3倍の数で出迎えてくれ ました。



ウラベニホテイシメジ 

 一方、この時期、例年ならたくさん見かけるナラタケが、今年はまったく見かけません。クリタ ケも早いものなら開きだす標高ですが、こちらも皆無。キシメジもほとんどないし、サク ラシメジは2本を見かけただけです。いままでにない遅い秋の始まり、そして本番入りで す。



サクラシメジ 

 2時間半ほど登って、目印の赤松林に着きました。今日はここから、尾根の反対側の山腹 へ入り込みます。おにぎりを2個頬張り、水分をしっかりとって、新しいエリアに分け入 りました。
 地形図で予想してきた通り、こちらの山腹は傾斜がきつい。斜めにゆっくり高度を上げる ようにトラバースしたいのですが、25度前後の急傾斜の場所が断続し、迂回するため、何 度も下降や登りをやらされます。水分をたっぷりふくんだ斜面は、踏んばろうとしても、足 元が崩れかけ、両手を使って立木を伝い、行程を稼いでいきます。
 そんな山腹のトラバースで助かるのは、鹿たちが歩く獣道です。斜面を横に切って、高 度差にして30メートルほどに1本ずつ、鹿の踏み跡が何段にもわたって、ほぼ水平に続 いています。
 この獣道を下の段から上の段へとはしごしながら、行程を稼いでいきました。



アオイヌシメジ 

 こういう森の中で、きのこ達は、ある一帯に出るとどどっと群生し、そこを越えると、ぱったり 姿が見えなくなったりします。これは、植生はもちろん、地下水位(地形)や、土質などが影 響しているのでしょう。
 時期遅れのタマゴタケ、ミネシメジ、アオイヌシメジを撮影しました。アオイヌシメジは、一 口生のままを噛んでみたら、濃いきのこの香りと旨味があり、そのまま1本食べてしまいたい ような衝動にかられました。

 3時間40分ほどの登りの探索のあと、稜線直下にある管理用の踏み分け道にひょっこり飛び出しま した。
 腰を下して現在地を確認。尾根の反対側の広大な未踏のエリアのうち、ほんの少しの部分を踏 破しただけですが、こちらも樹種が豊富で、藪が少なめの良い森が広がっていることがわかり ました。

 下山です。ブーメランが旋回するように、今度は、元の尾根の側の中腹まで下降し、山腹 を下っていきます。幹にしがみついて成長しようとしている、アミヒラタケを見つけました。テ ングタケ科のきのこは、3週間前はドクツルタケなどが主でしたが、今回は、ツルタケダマ シなど種類が増えています。そして、そこらじゅうで、ともかく数で他を圧倒しているの は、クサウラベニタケです。



ユキザサ 



ミツバアケビの実 

 下降の途中で、赤い実をつけたユキザサを見つけました。
 山栗のイガのかたわらに、小さな栗の実も。三つ葉アケビの実は、まだ割れていませんで したが、その場で割って、種をつつむほんのり甘い部分を食べました。次に落ちていたの は、ホオノキの実。そして、「姫リンゴ」そっくりの実。ズミか、あるいはヤマナシの実 でしょう。かじってみると、渋くて、指すように酸っぱい。



風で未熟なまま落ちたヤマナシ? の実 

 このあたりは、もう一つ、支尾根を乗り越せば、一昨年にサルナシの実をいっぱい拾った 場所にでるところです。この森は、ほんとうに豊かで、奥が深い。
 かなり下って下って、またクサウラベニタケが足の踏み場もないほど生えだした一帯を抜 け、ヌメリササタケを1本、味見に採集して、愛車の待つ車止めに降り立ちました。



ヌメリササタケ 

 ザックの中では、数本のウラベニホテイシメジがずっしり重い。



幼菌、といってもずいぶん大型ですが、調理のために縦割にしたら、
柄まできっちりと肉がつまっていました。
ここが、エリンギをしゃきっとさせたような食感があります。 




湯がいて、大根おろしを添えて、醤油でいただきました。
わずかにほろ苦味があります。 




素焼き。酒・醤油のシンプルなつけだれで 

 家に帰って、湯がいて大根おろし醤油で1皿。サラダオイルでざっと炒めたあと、白ワイン 蒸しにして1皿をいただきました。

 山採りの 占地の苦味 秋は来ぬ





きのこ フィールド・レポート




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野原 森夫