ヨツバシオガマ    

ゴマノハグサ科 シオガマギク属 四葉塩竃 




南アルプス・北岳  2005年7月中旬 

 この花の名前のいわれについて、 「塩竈を"浜で美しい"と言うことから "葉ま で美しい"にかけた名前」という話が広くでまわっています。
 私は納得できません。
 塩釜(塩竈)とは、海水から塩をつくる釜です。そのどこが美しいのでしょうか。赤 サビや煤にまみれて、無骨さや実用的な見事さはあっても、「浜で美しい」という語呂 合わせには似つかわしくないと思います。
 属名のもとになった「塩竈菊」の命名のいわれは、もっと別のエピソードがあるはず です。

 とはいえ、シオガマギクと同じ分類学的特徴をもつことで、高山植物のヨツバシオガ マという名前が生まれました。四葉は、茎の節目ごとに、葉を四方に伸ばす(輪生)姿 から。

 ヨツバシオガマは、花が、鳥の頭部の形をしているのが、特徴です。
 この花弁の形は「二唇形」。上唇には、鳥のような頭部とクチバシがあります。
 下唇は、上唇を支える下顎のように、広がっています。



 



 



 



 

 ヨツバシオガマのなかで、クチバシの部分が1センチ内外もあって特に長い特徴を示 すものは、クチバシシオガマと呼ばれます。
 クチバシシオガマは、鳥の頭型の花の、頭にあたる部分やクチバシが、色が濃いのも特徴 です。

 


花を終えた下の段には、実が作られ始めています 

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ヨツバシオガマの名前の由来について

 さて2009年秋、「シオガマ」の名前の由来について、宮城県塩釜市の方から、次 の要旨のメールをいただきました。
1)『浜で美しい』塩竈は塩作りの竃ではなく地名の塩竈を意味しているのではないか。
2)宮城県にある『塩竈』はいにしえの都人の憧れの地。その寂しい浜(千賀の浦)の 風景を詠んだ和歌が数多くあり歌枕の地としても著名。源氏のモデルとも言われている 源融が京都六条院の邸宅に塩竈の景を移しており、能楽の『融』にも描かれいる。
3)また天然記念物の八重桜『塩竈桜』は文字通り『葉まで美しい』。
 そこで、私は次の返信を送りました。

「 Aさんへ
 美しいとたとえられる塩竈が、塩釜の浜のことだったということ、お伝えいただいて ありがとうございます。
 それならば、塩釜の浜は、松島とも一体ですから、美しさをたとえられても当然と思 います。
 私のネット図鑑も、このいきさつを加えて、いまできる範囲で訂正しておくことにい たします。  図鑑や、ネット上の解説は、肝心なところが取り違えになっていることになりますね。
 私は福島市で生まれ、育ったので、塩釜市は魚市場をふくめて、行ったことがありま す。石巻や金華山も、家族で小さな旅をしたことがありました。バスで半島の先端近く の町まで走ったこともありました。
   シオガマギクが命名されたころの時代は、相当古いと思います。その古い時代の、半 島の内海と入り江の様子などは、関東でも、都でも、一度見たいと思わせるものだった のでしょうね。
 『奥の細道』では、芭蕉は塩釜に宿をとり、松島へ船で渡っているようです。シオガ マギクの名前の由来には、昔の人びとが、松島と塩釜をどうとらえていたのかという事 も、解き明かす糸口としてあるように思います。
 メールをいただいて、とても感謝しております。ありがとうございました。」

 このご教示をいただいて、率直に言って、ヨツバシオガマ、シオガマギクの名前の由 来にかかわって、これまでひかかっていた胸の中のもやもやが晴れてきたような気がし ています。

 さて、この件で、地名の塩釜の浜とすれば、「シオガマ」の名前の由来は理が通るよ うに思います。しかし、もう一点、ひっかかりがあるのは、「葉まで美しい」を「浜で 美しい」にかけたという説明です。
 登山記録データベース「ヤマレコ」で話題にしたところ、このポイントに疑問を提起 してこられた方がいました。
 私は、次のように考えています。
 まず、シオガマギクの仲間は秋に紅葉します。それから、伸びだした若い葉も、柔ら かそうで、美しいというよりも、愛らしい。
 「美しい」というのはとりあえず外して、「葉まで」面白みがある、目が行ってしま う、興味を惹かれる、ぐらいに考えると、語源としてないことはないと思います。
 つまり「葉まで美しい」はちょっと出来すぎですが、「葉まで面白みがある、興味を 惹かれる」というぐらいに考えれば、語源の問題として、より自然ではないかと思いま す。
 私は、塩釜桜を見ていないのですが、もし桜からとったとすると、
 命名のいわれの時期と、この桜の木と、年代的に符合するか、どうか、
が一つのポイントになると思います。
 いずれにしても、製塩用の塩釜=美しい、という説は、私は弱いと思います。その舞 台の海浜や働く人びとの姿は、美しさを感じさせるものがあったかも知れません。

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