雪の原で野鳥を網で獲ったころ

2001・1・14

 先週は東京にも雪が降って、秋留台などは16センチほど積もり ました。畑も一面、雪景色に。
 こんな様子を見ていて、思い出したことがあります。郷里の福島 市で小学生のころにやった、「鳥捕り」のことです。
 福島の盆地は、雪はそう多くはないところですが、それでも月に 2、3度は積雪を見ます。田んぼもリンゴ畑も、白い雪でおおわれ ます。稲の落ち穂や、落下したリンゴ、そして地面をほじくってわ ずかな虫などを餌にしている鳥たちにとっては、それらが雪におお われてしまう冬は、きびしいものです。

 その、一面の雪の原の景色のなかに、一ヵ所だけ下草が目立つよ うに雪をどけ、赤い色がひきたつおいしそうなリンゴを5、6個も おいておいたら、どうなるでしょう。30分とたたぬうちに、いろ いろな鳥たちが舞い降りてきて、騒々しく鳴きながら、リンゴに嘴 をたてて、争って実を食べ始めます。
 でも、よく見ると、その「餌場」からは、雪をかけて偽装した、 1本のロープが、30メートルも先のリンゴの木陰にまで伸びてい ます。
 「そろそろ、いいな」「うん」。
 私と友達とは、目でうなずきあい、ロープを一気に引っ張りま す。雪面からロープが中空にはね上がり、ロープに引かれて支柱が 立ち上がり、バタッと手前に倒れます。支柱は、これも雪で偽装し て伏せておいた網と一体で動くため、リンゴに群がっていた鳥たち は、上からバサッと網をかけられてしまいます。
 「それっ!」と網に向かって駆けだして行く私たちの目には、飛 び立とうとしてもがき、網を必死で持ち上げる鳥たちの姿が、しっ かりとらえられています。
 網の大きさは、幅1メートル、長さ3メートルくらいで、大きく はありません。支柱は、その網の両端に取り付けられています。
 網は地面にぴったり伏せて広げてあり、支柱がロープで引かれる と、支柱とともに立ち上がって、バタンとリンゴの側に倒れかかる 仕組みです。
 捕れるのは、ムクドリ、スズメが多く、オナガなどもかかりまし た。2、3回も網を倒せば、相当な数の小鳥が捕れました。友達の 家の、当時30歳くらいのおじさんがわれわれの先生で、網の設置 法やロープを引くタイミングと速さ、どんな鳥を捕まえるかなど を、実地で教えてもらったことを覚えています。

 1965、6年ごろの、福島の農村の状況ですから、今の自然環 境、鳥たちが置かれた状況、道徳観念などからみれば、問題に思え るかもしれません。でも、あのころの子どもたちは、そうやって 捕った小鳥を農家に持ち帰って、おやつやおかずにして、食べてし まったのです。

 いまちょっと「鳥獣保護(・狩猟)法」を見てみたら、野鳥はほ んらい、捕獲することじたいが禁止となっていて、例外として、 1)免許を受けた人が定められた方法で、指定された種類の動物を 狩猟することと、2)有害鳥獣として都道府県知事が特に許可した 場合の駆除とが、認められているようです。実態は、まだまだ狩猟 への規制がゆるいとの指摘も出ています。それに、山で猪狩りなど に出会うのは、逃げる猪も、追う銃も、登山者には怖いことです (去年2月、本社ヶ丸での体験を報告しました)。
 とはいえ、この法律によれば、野鳥の場合も、スズメ、ムクドリ など20種類余りが「狩猟鳥」に指定されていて、免許と知事発行 の狩猟者の登録証をもって、猟場と、1日あるいは1シーズンあた りの捕獲数なども規制を受けながら、猟をするしくみになっていま す。指定された猟の方法には、私たちが子どものころに体験した 「無双網」や、近所の農家の人たちが趣味をかねて使用していた 「空気銃」なども含まれていました。
 オナガは、狩猟鳥には指定されていないのです。それから、私が いま、畑で蕎麦やキャベツの食害にあっているキジは、狩猟鳥では あっても県ごとに捕獲禁止区域や期間を定める鳥に指定されていま す。
 こういう法律・制度で野鳥の狩猟を認めていることについて、近 年では批判の声がひろがっているのが現状です。また、スズメを初 め、農家から害鳥と見られてきた野鳥たちも、実際には大量の害虫 を駆除する貴重な役目をになっていることも、調べられてきまし た。
 いまの時代、自然のなかで生きている野鳥を捕獲し、食べるよう なことは、もう昔話のこととすべきですね。キジ、猪などは飼育も ずいぶんひろまっています。

 私は、魚も虫もさんざんとり、蛙をいじめ、そして小鳥さえ食べ て、育ってきたのです。身近な動物たちには、ここでは言えないよ うな、罪なこともしてきました。それも、楽しかったといってはい けないですが、その瞬間は、胸がドキドキする刺激的なひとときで した。
 ふりかえれば、いろいろ、罪な事を重ねてきたものです。いま は、いまの状況に見合った形で、子どもが生き物と接するようにし ていかなければいけないと感じています。
 同じくリンゴを使うにしても、無双網でなくて、双眼鏡で、野鳥 とふれあうのもいいですね。




野菜づくり 表紙へ     TOPへ

    山の便り、大地の恵み (野原森夫)  
http://homepage2.nifty.com/kinokoyama/