花梨(かりん)のジャム作り

2004年11月


 私の家では、季節の果物でジャムを大量につくり、すごいペースで食べて しまいます。
 5月は、いちごジャム。
 6月は、梅ジャムと、桑の実ジャム。
 10月は、紅玉りんごのジャム。
 そして11月は、花梨ジャム。


この大きさ、色、香り。まさに一級品が15個
下に敷いた新聞紙は、画面横方向が縦の長さ、花梨5個でその長さが埋まっています。


1、材料の入手
 まず、材料の花梨の入手が、特別です。
 私の街では、11月半ばに恒例の「農産物品評会」があります。品評会に は、30種類くらいの野菜、果物、加工品が出品され、初日にそれぞれの種 類について、知事賞、金賞、銀賞、入選などの賞が贈られます。そして、賞 を得た「作品」と、選外にはもれたものの、その年、その農家にとって一番、出 来映えが良かった「作品」が、2日目の午後、見物客にいっせいに販売されま す。それぞれの農家が何百、何千という生産物のなかから選びぬいた「この1 箱」「この1品」が出品され、それが受賞作品もろとも販売されるのですか ら、当日はすごい人だかり、行列になります。これほどの一級品、特級品が集 まるのに、値段が市価の半額以下で即売されるのも、人気を高めています。

 今年は、人がまたさらにすごかった。長雨で葉もの野菜の生育が悪く、 キャベツが1個800円もする秋だったからです。野菜ねらいの人がどっと 押し寄せました。

 出品されたものはみな特大かつ鮮度がすばらしく、美しい。しかも由緒正 しい地野菜です。それが、キャベツ3個800円、白菜3個600円、小松 菜1箱(10束)500円など、いまの市価の3分の1ほどで、大型テント 内にずらりと並んでいます。

 でも、私たちが目指したものは、花梨でした。
 花梨も天候不順のためか、今年の出品は3箱(×5個ずつ)だけ。一 番いい賞が銀賞。例年より実が一回り小さく、選外にもれるようないびつな ものも出展されています。けれど、香りはすばらしく、1箱400円から 500円の安さ。
 並んだ順にテント内で一人3品ずつ購入できます。

 自分たちの順番まで花梨が残っていてくれるか、心配でした。
 けれど、予想通り、みんなの人気は、キャベツ、ブロッコリ、ネギ、キュウ リ、白菜、大蕪などの野菜と、超大玉の梨やトマトに集まりました。
 買えたのです。3箱の花梨が。
 ついでに、並んでいるうちにカミさんがお友達になった女性とも手分けし て、キャベツ、ブロッコリ、カリフラワー、ナス、長ネギも購入。それぞれ を分け合って持ち帰りました。
 帰り道の車内は、熟した花梨の実の、甘酸っぱい匂いで、満たされまし た。

 計15個の花梨を並べて、まず撮影。
 さっそく、よく熟した8個を使って、花梨ジャム作りにかかりました。

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その2 煮込む
 果実酒には、よく使われる花梨ですが、生で食べることはできません。
 皮がとても固く、皮をむいても、実がまた固くて、がりがり、ぼそぼそし ます。そして、ものすごく渋いからです。

 でも、いったん実を加熱して、シロップ漬けにしたり、独特の手順でジャム に仕上げるとと、香りと酸味が独特の、個性が強い味になります。

 まず、固い実を、リンゴを割るときのように2つに切り割り、さらに6等 分になるまで割ります。ナイフで切り割るのは力がいります。
 ついで、皮をむきます。これも、固くて、手間がかかります。
 さらに、リンゴのときのように、真ん中の芯の部分を種ごと、えぐりとり ます。
 このとき、皮と芯(種)の部分は、すべてとりおきします。ジャムに仕立 てるときに、この部分が大事な役目をします。

 皮をきれいにとった実を、マナイタの上で、厚さ1・5〜2ミリ前後に薄 切りの小間切れにします。大きさはまちまちでもかまいません。



細切れにした、花梨の実

 そして、刻んだ実のうち全体の半分くらいを、フードプロセッサーでまだ 小さな切り身が少し残っているくらいに、細かく砕きます。

 いよいよ加熱。
 最初に、皮と芯(種)の部分を、全体がひたひたになるより多目の水で、煮 ます。煮立ってから10分ほど、煮込み続けます。

皮と種をゆでます

 皮と芯、種のまわりから、花梨の濃いエキスが溶け出して、不思議なこと に鍋の中がとろとろに、とろみが出ます。


皮と種、芯の部分。水を加えて煮込み、とろとろ液を
取り出したあと、よりわけて捨てます。


 ジャムに使うのは、この溶液の部分。まずザルで皮と芯、種を除き、次い でふきんで溶液を濾して、透明な「花梨とろとろエキス」を鍋に移します。こ の時点で、花梨の匂いはますます家の中に充満していき、悪い風邪のもと は、戸外へ退散していきます。


これが、皮と種を煮てとりだした「とろとろ液」

 グラニュー糖を、調理前の実の重量の半分弱、この「花梨とろとろエキス」鍋 に加え、溶けきったところで、刻んだ花梨の実、細かく砕いた花梨の実を、 どっと鍋に入れます。

 少し煮込むとあらら、不思議。リンゴの実のように白っぽかった花梨の実 が、少しずつきれいな橙色に染まりだしていきます。それに、とろみが、ます ます強くなっていきます。弱火で、ずっとかきまぜ続けないと、底がすぐこげ てしまう。

花梨の実を、とろとろ液にいれて、煮込む

 それにしても、あまり煮詰めないのに、鍋の中が、実の成分だけでどんど ん、とろみが強くなりジャムに変わっていくのは不思議です。こういう果物 はめずらしい。色も、生の花梨の色からは想像ができない様子に変化してい きます。

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 その3 出来上がり。瓶詰め
 煮詰めるのは、ほどほどにしています。とろみは、自然に出てきます。
 花梨の実の重さの半分量のグラニュー糖を加えた以外、ほかの材料はまった く入れませんでした。ジャムの色が、少しずつきれいな橙色に変わっていきま す。これまでの、毎年の花梨のジャムづくりの体験では、加えるグラニュー糖 の分量を多めにすると、橙色は強くなる感じがします。普通の上白糖は花梨に 使ったことがありませんが、上白糖や三温糖の方がより強い色合いを帯びるの ではないかと思います。

 少し小皿にあけて、味見。
 花梨のいい香り、強い酸味が鮮烈。これが、花梨ジャムの特徴です。砂糖が 多すぎると、この持ち味が弱くなります。
 わずかに渋みが残る場合がありますが、ごくわずかならこれも花梨の持ち味。気 になる場合も、瓶詰めにして寝かせているうちに、いつも知らぬ間にまろやかに 変わっています。

 1回目の花梨8個と、残った2回目のジャムづくりの花梨7個とで、大小21 本の瓶にジャムがいっぱいになりました。



 長期保存のための消毒です。
 大鍋を2つ用意し、ジャムの瓶を並べました。瓶が口近くまでひたるくらい ぬるま湯を入れ、フタをして、30分煮沸しました。瓶を取り出し、熱でゆる んだフタを熱いうちにきつく締めてできあがり。これを2回、繰り返して、20 本の花梨ジャムの瓶詰めが仕上がりました。
 フタは温度が下がるといっそうきつく締まり、フタの中央部が内側にわずかに へこみます。

 美しく染まった花梨ジャムが入った瓶。ずらりと並べると壮観です。
 並べて置いて毎日眺めているうちに、ジャムの橙色がまた少し、濃くなってい きます。この色の変化を見るのも、うれしい。この色と香り、酸味が利いた味 が、野原家の秋の味覚の楽しみの一つです。
 花梨ジャムはクッキーといっしょにコーヒーのお菓子にしたり、ヨーグルトに かけて朝食につかったり。ジャムを水、少しのラム酒で倍量に溶いて、ゼラチン で固め、砂糖をからげると、花梨ゼリーのお菓子にもなります。

 やっとすべての花梨をジャムにし終えたあと、生協からふたまわりは小さい 花梨が5個、新たに届きました。今年は、不作で私の地元の収穫祭に花梨が出 ないことを心配し、カミさんがもう一口、保険をかけて注文していたものでし た。ほんとは、花梨は熟して香りがのったところで収穫し、つやつやの新鮮な うちに、収穫後なるべく早く使ってしまうのが、香りを保つにはいいのです。し ばらくは手がつけられないので、実を眺めて暮らすことにします。




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